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【カレイドスコープ・オブ・ケオス】#9

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「イヤーッ!」チェックメイトはアルカディアが立っていた高い監視台へ回転ジャンプし、激しく手を動かした。「イヤーッ!」すると、見よ! サイロ状吹き抜けとなっているこの巨大大広間に格子状の光の線が引かれたではないか!「デアエ!」門から殺到するゲニントルーパー達はポーン駒の如し!

「縦横、展開せよ! 挟み込め! ニンジャスレイヤーといえど所詮この状況下ではネズミ袋のありさま。リディーマー=サンの大いなるカラテの露払いせよ!」「デアエーッ!」鬨の声をあげ、白いゲニン達が展開! ヤジリ陣形でアナイアレイターに襲いかかる!「デアエーッ!」「イイイイヤアアーッ!」

「「アババーッ!?」」ストライク! ヤジリ陣形のゲニンはまとめて首を刎ねられた! 茨状のスリケンが集積した歪なダイシュリケンが投じられたのだ!「イヤーッ!」アナイアレイターはスリケンに力を注ぎ、爆散させる! 飛び散る鉄条網! だが!「万事想定内! 一手二手センテ!」チェックメイトは平然!

 何人かの更なるゲニンを巻き込み、鏖殺鉄条網が展開しようとしたその時だ! 吹き抜けの高所、飛び込み台めいて張り出した床を覚えておいでだろうか、そこへ進み出たのは赤装束のヒケシ達だ! それも複数!「「「イヤーッ!」」」ジツを込める!「イヤーッ!」チェックメイトがこめかみに手を当てる!

「ヌウウッ!?」アナイアレイターは訝しみとともによろめいた。広がりかけた鉄線群が力を失い、そのまま床に散らばったのである。「チェックメイト!」チェックメイトは叫んだ。「これがヒケシの力だ。愚か者め! そしてリディーマー=サン! 邪魔者はお任せ下さい!」「デカシタ!」

 リディーマーがハンマーパンチを振り下ろす!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは横に転がって躱す! そこへ襲い来る丸太めいたケリ・キック!「イヤーッ!」KRAAAASH! 凄まじい巨体が生み出す有無を言わさぬカラテ! ニンジャスレイヤーはガード姿勢で弾き飛ばされる!

 BLAMN! アズールがチェックメイトを撃った。しかしチェックメイトはブリッジ姿勢で回避し、彼女をめがけチューニンとゲニンのフォーメーションを差し向けたのである!「バカめが。そこは第二陣が効いておるわ!」「デアエ!」「デアエーッ!」透明の獣がアズールを守る!防戦一方は危険だ!

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」飛び石めいてゲニンの頭にカラテを食らわせながら、ニンジャスレイヤーは再びリディーマーに向かっていった。「「イヤーッ!」」拳と拳が衝突する!「ヌウーッ!」後退するリディーマー! チューブ供給されるエネルギー!

「チイッ……」ニンジャスレイヤーはカラテを滾らせ、高速化したニューロンで状況をうかがう。廃棄物めいて積み上げられたUNIXの山は足場であり、障害物でもあった。その狭間狭間でコトブキやアナイアレイターが敵の攻撃をしのいでいる。頭の中に急にかかったザラザラした靄が不快だった。

 アナイアレイターの様子もおかしい。鉄線を操るジツが使えていないようだ。この靄のせいだろう。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを投げた。狙ったのはリディーマーに繋がるチューブだ。スリケンは狙い過たず突き刺さり、輝く気体が漏れた。しかしリディーマーは嗤った。

「無駄だ! 確かにチューブは我が生命線よ……だがその程度でフーリンカザンできると考えるなど浅はか。供給が絶えようと、長時間の生命維持は可能。貴様らを皆殺しにしたのち再接続すれば事足りる! 片腹痛し! イヤーッ!」KRAAASH! UNIXデッキが投げつけられる! それを躱した先に強烈なビッグカカト落としが襲いかかる! ニンジャスレイヤーはクロス腕でガード!

「ヌウウウーッ!」ニンジャスレイヤーは凄まじい圧力に押さえつけられ、足元のUNIXジャンクに沈み込む。リディーマーは力を込めた。「惰弱! 惰弱也!」(((マスラダ! 此奴はビッグニンジャ・クランのニンジャであるが、コシャクにもオヒガンのオファリングで増強されておる))) ナラクの声が湧いた。

 (((如何にしてか、此奴はオヒガンに果てた者どもの嘆きを盗んで力に替えておるのだ。一筋縄ではゆかんぞ。それにつけても情けなきはオヌシのカラテよ。ギンカクから離れれば途端にこの有様。儂に身体をよこすがよい! 塔まるごと焼き尽くし全て滅ぼす!)))(黙れ、ナラク!)縄めいた筋肉を盛り上がらせ、踏みつけを押し戻しにかかる!

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」アナイアレイターは近接カラテを強いられる。彼の身体はジツの作用がとりわけ強く、それを乱されているのはうまくなかった。しかもゲニン達の目は光り、精強なのだ。一方コトブキは身を隠しながら、電子的に援護できぬか試行錯誤していた。

「このネットワークには出口がありませんが、でも……回線自体は繋がっている……そう思えるんです!」コトブキはLAN直結状態でウンウンと唸っていた。「バカな。イントラネットなんだ。俺達に逃げ場はない……ジゴクなんだ」頭を抱えるジョージに、ザックが憤慨する。「オイ! なんか知んねえけど、キアイ入れろよ!」

「無理だ、俺は弱い市民なんだ……どうしてこんなジゴクに」「デアエ!」ゲニンが向かってくる! ザックはパチンコを懐から出し、ゲニンに打ち込んだ。ゲニンは首を傾けるだけで躱し、殺しにくる!「畜生!」「GRRRR!」「アバーッ!」横から透明の獣が飛び込み、ゲニンを食い殺した!

「ア、アイエエエ」ジョージは震えた。「ち……ちっとも怖くなんかねえぞ!」ザックは叫んだ。「だいたいアンタLAN直結できるんだろ! 俺だって姉ちゃんを手伝いてえのに!」手近のデッキにすがりつき、ザックはタイピングを試みる。「畜生! 俺だってネットサーフィンくらいは……」ジョージの手が伸び、LAN直結した。

「こんなの無駄なんだぞ」ジョージは震え声で言った。「だが、現実の絶望に直面するよりは、LAN直結のほうがまだマシだ……」0010101……ジョージはコトブキと隣り合ってUNIXアクセスを開始する。アズールが走ってきて、ザックを守る。襲い来る更なるゲニン!「兄貴……!」ザックは歯噛みした!


◆◆◆


 ドオン……ドオン……ドオン……ドオン……再び戦場に鳴り響くイクサ太鼓が、グラニテを緊張させた。「エッ? またネザーキョウが来るのかな?」「然り、攻撃合図じゃの」モモジ・ニンジャはグラニテを岩陰に促した。「面倒ゆえ、はよう隠れい」「わ、わかった。大変だ……!」「子鹿めいて軟弱よの」

「軟弱なのは認めるけど、オジサンも大概人間離れしたニンジャだよ」グラニテは偵察兵を惨殺したモモジのジツを思い出し、畏れた。「オジサン? ワシは星霜を経て修行し人を超えた。グラニテ=サン、オヌシごとき雑魚でも夢と希望をもって日々修行すれば、いずれ……クンクン?」鼻をひくつかせる!

「どうしたの? 例のヒャッポ見つかった?」「その名を出すでない!」モモジは胸を押さえた。「奴の芳香とネザーのニオイを一緒くたにするでない。不快だぞ。見よ……ネザーキョウの砂塵を……!」「ええ?」グラニテはスコープゴーグルを装着し、荒野を見通した。「……なに、あれ……!」

 KRAASH……KRAASH……! 先陣をゆくのはやはりチャリオットを牽いたニンジャ。だが、その率いる軍の様相が異なっていた。角を生やし、焼けたヤリを掲げたオニ達。そして鎖で引かれてくるのは、大地を割り、土を刳りながらのたうつ触手の塊であった。異常な色彩の空に、その冒涜的軍勢は酷く似合っていた。

 DOOOOM……KA-DOOOOM……焼けたヤリが次々に放物線を描いて投じられ、応戦する近代兵器に突き刺さった。「オオオオオオン……」くぐもった雄叫びとともに、地面が隆起した。象めいた長い鼻を振り上げ、数十メートルの歪んだ巨体が身をもたげた。それもひとつではない。ふたつ。みっつ。

「嘘……」グラニテはぽとりとゴーグルを落とした。モモジは手をひさしにして顔をしかめた。「オニのみならず、ディダラまで出おったか。もはやここはネザーじゃな。早々に立ち去らねばならんが……それはならん! おのれヒャッポ!」DOOOM! 巨獣のひとつが頭を爆散させ、倒れ込む!「オオオオン……」

「ほう。南軍にジツ使いがおるか」「あれはレールガンが当たったんだよ」グラニテが指摘した。「でも、あ、ああ……」KRAAASH……DOOOOM……長い鼻が岩を投げ返し、次々に戦車が破砕する。オニ達がなだれ込む。そしてチャリオットを引く将軍ニンジャの立ち姿は悲壮ですらあった。

「これって……この世の終わり……」「ある意味では、そうじゃのう」モモジは認めた。「アケチはネザーをこの世に引きずり込んだ。なんとまあ大それた真似を。この空の有り様を見てわからぬか?」「UCAが負けちゃったら、どうなるの。私は?」「領域外へ逃れるか? ワシはこの世に再臨して日が浅いゆえ、他のニンジャの支配地の委細は知らぬがの。ま、逃げられんのなら、ネザーの空気が吸えるよう修行せい」 


◆◆◆


(……博士!博士……)トム・ダイスの声が遥か下を遠ざかっていった。「ハハァー!」サクタは緑格子の海を滑るように飛びながら、笑い声をあげた。01ノイズのパーティクルが雲めいて広がり、太陽のかわりに黄金の立方体が冷たい輝きで世界を照らしていた。サクタは集中した。地平の果てに、光。

 トムはサクタの傍らで、事のなりゆきを案じている。彼にはわかりようがないのだ。サクタは微笑し、オリガミを投げてやった。「あとは僕が頑張るので、邪魔が入らないよう見張っててくださいね」……サクタはT-1回線が描き出すコトダマ空間の美しいありさまに感動した。「普通じゃない。ブッ飛びだ」

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