【アンリーシュ・ザ・グリムリーパー】#1
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【アンリーシュ・ザ・グリムリーパー】#1

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 ガレージの重いシャッターを押し上げ、フジキド・ケンジは薄明の荒野に進み出た。清冽な空気の中に立つと、吐く息は白い。

 大地は焦げた鉄の色をしている。

 濃い灰色の曇天の下、地平線に黒い凹凸をつくる影……モロクマ・シティ。あれがここから一番近い市街地だが、実際、随分と遠くに霞んで見える。

 そしてこのガレージの周囲には、他に、家らしい家はない。真鍮の風見鶏、電球の補修もされていない「即ストップ・イン」のネオン看板。鶏を平飼いしている鉄柵の囲い。モーター駆動式の井戸。そんなところだ。

 振り返ると、ガレージに差し込む光が、旧時代のスポーツカーの特徴的なシルエットを浮かび上がらせる。黒い鋭角的なボディと、ガルウイングのドア、睨みつけるような形状のヘッドランプ。「グリムリーパー」。いまだオーバーホール作業の途上。それは、このガレージの所有者……デヴィッド・ハンの生き甲斐であった。

「随分良くなった」

 そのデヴィッドがグリムリーパーの隣に立ち、嗄れた声を発した。まだ右脚を少し引きずっているが、補助杖なしでも歩く事ができていた。

「お前さんのおかげで、楽させてもらったぜ」

「もう少しリハビリが必要ではないか?」

 気遣うフジキドの視線に、デヴィッドは頷いてみせる。

「まあ平気よ」

 このガレージにフジキドが滞在を決めてから既に二週間が経つ。当初は行きずりの旅人に過ぎなかったフジキドだったが、右脚を負傷して独居に難儀するデヴィッドを見兼ねたものか、なにかと理由をつけて出発を遅らせていた。

 然り。もともとこの地に住んでいたのはデヴィッドただ一人だ。既に妻とは死別。息子はモロクマ・シティに憧れ、数年前に出て行ったきりである。その頃はまだ他にもぽつりぽつりと住人がいた。今となっては無惨なものだ。

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