MINI INDEX【ガイオン・エクリプス】ニンジャ名鑑&インデックス
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予告編
2037年に起こった事件の詳細を。共和国軍の一部門が封印したデータの秘匿場所を。それが彼女の要求だった。「待ってくれ……私は退役したんだ。頼む、静かに余生を……」ヤマシダは、ケジメ痕が残る両手を顔の前で振り、懇願めいて言った。その時だ。襲撃者たちが外から銃弾を打ち込んできたのは。
「アブナイ!」「アイエエエ!」彼女は咄嗟にヤマシダを押し倒した。銃弾が強化ショウジを破り、破壊された片目ダルマ陶器の破片が彼女のコートに降り注いだ。彼女は小柄な体に不似合いな大口径拳銃をぎこちなく抜き、トリガーを引いて闇に応戦した。BLAMBLAM!怪物じみた49口径を、片手で。
マホガニーと鋼鉄の祭具は、投光器めいたマズルフラッシュを放つ。凄まじいリコイル反動を受けても、彼女の腕は微動だにしない。人間業ではない。重サイバネか。ニンジャか。ウキヨか。恐怖に震えながら、ヤマシダは血走った目でそれを見た。彼女の肘が展開し、リコイル制御用の圧縮空気を吐いていた。
……「アー、せめて、コケシ=サンの居所を…」「アイ、エエエエエエ……」額の上を銃弾がかすめたためか、ヤマシダは既に失神していた。「ああもう」彼女はコートのポケットに手を伸ばし、マグナム弾をリロードしながら言った。そして頭を掻きむしった。シリコンで覆われた指先に、不慣れな髪の感触。
「所長、このクッソ大変な時に、どこ行っちゃんったんスか……!」彼女はモザイク状の記憶の中で、必死に答えを求めた。再定義を免れ生き残った数々のオーバーテックと、危険に満ちた可能性。ケオスとともに溢れ出したアブナイの数々。両者の間で翻弄されながら探索を進める、ニューロンチップ再生者!
……かつてガイオンに私立探偵がいた。ニンジャを軍事利用せんという計画を阻止すべく、彼は自ら犠牲となって黒い渦に飛びこみ、人知れずガイオンを破滅から守り抜いた。『……彼は未だ生きている』そのメッセージは誰の手で送られたのか。そして誰が彼女を蘇らせ1挺だけの49マグナムを遺したのか。
二者は同一人物なのか、或いは。……推理を続けながらアンダーガイオンの潜伏場所へと逃げ込んだ彼女は、スシを補給しながら、UNIX山の陰にある薄汚れた姿見鏡を覗きこんだ。明滅するタングステン灯。異常なほど緻密に再現された、かつての己の姿。
シキベ・タカコは、傾いた黒いセルフレーム・メガネを直し、49マグナムを構えた。(……アー、でも、もうちょい背が高くても良かったと思うんスけどね)
【ガイオン・エクリプス】 探偵は蘇る
探偵は蘇る
舞台は2047年前後のキョート共和国。ガンドー探偵事務所の元助手であったシキベ・タカコは、最新型のオイランドロイドボディにバイオニューロンチップを埋め込まれた状態で、突如この時代に生き返った。だがそこにタカギ・ガンドーの姿はない。果たして誰が彼女を蘇らせたのか? タカギ・ガンドーはどこへ消えたのか? 「ガイオン・エクリプス」と呼ばれる皆既日蝕イベントが一週間後に迫り、ストリートが海外観光客でごった返す中、キョート共和国の暗がりで何らかの陰謀が進行中であることに気づくシキベ。彼女はガイオン最後の私立探偵としての役目を果たすため、ただ一人行動を起こすのであった……。
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登場人物紹介
シキベ・タカコ:最新鋭のオイランドロイド・ボディで蘇った、元ガンドー探偵事務所の女助手。その外見年齢は22歳前後。幼い頃にアンダーガイオンで誘拐され、タカギ・ガンドーとその師クルゼ・ケンの探偵コンビに助け出された経緯を持つ。二人をモデルとした探偵小説のための取材を行うべく、動機を隠してガンドー探偵事務所で働いていたが、琵琶湖の豪華クルーズ船上にて怪盗スズキ・キヨシを追い詰める中で死亡。死後に出版デビューを果たした小説家としての側面も持つ。
タカギ・ガンドー:ガンドー探偵事務所の所長。ニンジャソウル憑依者であり、かつてニンジャスレイヤーとともにザイバツ・シャドーギルドを滅ぼした。その後もガイオンで私立探偵を営み続けた。共和国軍の急進派がアキラノ・ハンカバを用いて推し進める危険なニンジャ兵器化プロジェクト「マジックモンキー計画」を止めるため、アズールとともにヴァレイ・オブ・センジンへ赴き、デスドレインとの戦闘中に姿を消した。
コケシ・サイコウ:コケシ社の会長であり、キョート元老院とのコネすらも有する老人。かつて彼の息子のコケシ・ソイチは怪盗スズキ・キヨシとして世を騒がせ、その後もニンジャソウル憑依者となってタカギ・ガンドーやコケシ・サイコウの命を狙った。ガンドーとコケシ・サイコウはザイバツ・シャドーギルドによって人生を翻弄された者同士であり、その後も長きにわたって共闘を続けた。
アキラノ・ハンカバ:ハンカバ流カブキの後継者にして人間国宝。ニンジャ封じの技に精通しており、現在はガイオン全域にジツ封じの結界を張り巡らせる。この結界の力により、キョート元老院は悪意を持つニンジャの侵入や攻撃を防ぎ、国家としての独立を保っている。半ば強制的であったとはいえ「マジックモンキー計画」の件では自責の念を抱いており、自らの技でキョートに今度こそ秩序と安寧をもたらそうとしている。
アンバサダー:キョート共和国アッパーガイオンで古美術店を営む双子のニンジャ。兄のディプロマットとともに次元転送ジツ「ポータル・ジツ」を行使する。ポータル・ジツは例外的にジツ封じのポートを解放されているが、それでも起動時にエメツ火打石を必要とする。
ディプロマット:アッパーガイオンで古美術店を営む双子のニンジャ。弟であるアンバサダーとともに「ポータル・ジツ」を行使。単独でポータルを発生させた場合は、敵の体の一部(または全て)を出口の無い空間へ放り込み01消滅させる、恐るべき攻性ポータルとなる。かつては弟とともにザイバツ・シャドーギルド所属のニンジャであり、ほとんど隷属状態であったためニヒルで嫌世的な性格であったが、タカギ・ガンドーの説得によって反逆を決意した。このことからもガンドーに対して恩義を感じている。
コヨミ・ウサギ:六本腕のオイランドロイドボディを持つ謎の女魔術師。極めて性的かつ頽廃的。ブラックドッグやハルピュイアなど、ニンジャを多数魅了し使役している。10年前にガイオンで起こった「ブラック・ハイク・マーダー事件」の主犯格であり、再びガイオン・エクリプスの影で暗躍する。
時系列や用語の整理
2020年代中頃:オイランドロイド・アイドルデュオ「ネコネコカワイイ」の誕生。ガンドー探偵事務所の助手、シキベ・タカコが、琵琶湖の豪華客船上で撃たれ死亡。シキベ・タカコの肉体は死んだが、コケシ・サイコウの支払った多額の依頼報酬により、その脳はバイオニューロンチップ化された。
「人体からの高密度バイオニューロンチップへの記憶コピーは、最先端技術です」医療主任は言った「そこからの復元技術は、未だ実用化されていません」「オイオイ、つまり、どういうことだ?」「……遠い昔、富豪たちが死体を冷凍保存して将来の復活に備えました。それに近いものということです」
バイオニューロンチップは1個の生体脳から1個しか作成できず、複製は不可能である。またその保存については、高価なバイオ脳漿を用いて定期的にメンテナンスするか、第三者のサイバネ頭蓋内に埋め込んでそのオーガニック脳漿を利用しなければならない。私立探偵としてしばしば事務所すらも危険にさらされるガンドーは、もっとも安全な保管場所として、自らの強化頭蓋内を選んでいた。
2035年頃:ニンジャ化したコケシ・ソイチ(ガンスリンガー)とタカギ・ガンドーが戦い、ガンドーは琵琶湖に沈められるも、カラス・ニンジャのソウルが憑依してディテクティヴとして復活。この時点より、ローカルコトダマ空間内でしばしばシキベ・タカコとの意思疎通が可能となっている(シキベは大半眠っている)。これはバイオニューロンチップの本来の動作ではなく、ディテクティヴのニンジャ性によって引き起こされたものであると考えられる。ソイチは実の父コケシ・サイコウをも殺そうとしたが、ディテクティヴの手で止められ、爆発四散を遂げている。
2036-2037年頃:スズキ・マトリックス理論の発表と流布。ブラック・ハイク・マーダー事件の発生。
2037年:キョート共和国と日本が開戦。タカギ・ガンドーがヴァレイ・オブ・センジンで姿を消す。ガンドーはアズールとともにセンジンに赴く直前、自らの強化頭蓋内に保管していたシキベのバイオニューロンチップを摘出し、コケシ・サイコウに託した。
2038年:月破砕、ニンジャスレイヤー第3部の終わり。
2046-47年頃:ガイオン・エクリプス事件の発生。
2048年頃:第4部エイジ・オブ・マッポーカリプス本編。
関連するエピソードやシャード
【ガイオン・エクリプス】はガンドー探偵事務所系エピソードの2部〜3部時系列の集大成的エピソードであり、様々な過去エピソードと繋がっています。ここではその一部を紹介しておきます。もちろん【ガイオン〜】自体は独立したエピソードで、エピソード内でもキャラクターの関係などは十分説明されているため、ここで紹介するエピソードを全て事前に読む必要はありませんが、遡って読んだりすると色々と楽しめる部分も多いでしょう。
第2部エピソード【リブート、レイヴン】:タカギ・ガンドーの生い立ちとザイバツとの隠された因縁、そしてディテクティヴとしての復活が描かれたオリジン・エピソード。この中でタカギ・ガンドーとシキベ・タカコの出会いや、彼女との死別が描かれている。コケシ・サイコウもここで初登場。
第3部エピソード【レプリカ・ミッシング・リンク】:科学者の父を持つユンコ・スズキは、ある日突然、バイオニューロンチップ再生者として目覚めた。自分はロボットではなく、生きた人間であると考える彼女は、。直接的にはガンドーやシキベの件は言及されないが、スズキマトリックス理論を用いた復活と、オイランドロイドボディの利点と不自由さなどを知ることができる。またこのエピソードにおけるニンジャスレイヤーとユンコの行動により、スズキ・マトリックス理論はアマクダリによる独占を免れ、オープンソース論文として解放されて10年後のシキベ復活に繋がっている。
第3部エピソード【ザ・ブラック・ハイク・マーダー】:ガイオンで猟奇的な暗黒ハイク連続殺人事件が発生。タカギ・ガンドーが捜査を開始する。強化頭蓋内にシキベチップを移植していた時代のディテクティヴが主役であり、コトダマ空間内においてはシキベとの意思疎通が確認できる。コヨミ・ウサギとエグザルテッドがこの事件の黒幕であった。間一髪、ガンドーは惨劇を食い止めることに成功するが、コヨミの犯行の動機などは明かされぬままであり、不穏な幕引きとなっている。(物理書籍限定エピソードとして第3部書籍「キリング・フィールド・サップーケイ」に収録)
ディスカバリー・オブ・ミスティック・ニンジャ・アーツ(4):ジツ、カラテ、およびモータルの関連性について:【ガイオン・エクリプス】には、モータルでありながらジツを使うキャラクターが複数登場する。「ジツとは何なのか? ニンジャにしか使えないものではないのか?」などの疑問は、このシャードを読むと解決するだろう。