S3第10話【タイラント・オブ・マッポーカリプス:後編】分割版 #5
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「何の真似だ!ティアマト=サン!」タイクーンが叫んだ。ティアマトは微笑み、タイクーンを一瞥してから、ゆっくりと身を逸らせた。ジョウゴはニンジャ第六感にて圧倒的危機の接近を察知し、瞬時に胸部装甲を閉じて身を守ると、巨大刀を力づくで振り上げた。『イヤーッ!』「キエーッ!」
ティアマトの恐るべき回転跳躍! そこへテンマが、『イヤーッ!』巨大刀を叩きつける!「笑止」ティアマトはしなやかに身を躍らせ、口元に手を添え、息を吹いた。「フッ」KA-BOOOM! 息に込められたカラテが分子を振動させ、爆発を引き起こす! ドラゴンブレス・イブキである!『ヌウーッ!』巨大刀を弾き返され、テンマは地響きを立てて後退した。
「ハンニャアアアアア!」オオカゲが狂い叫び、黒紫の炎を浴びせかける! ティアマトはせせら笑い、残像を生じるほどの連続回し蹴り……タツマキケンを無雑作に繰り出して、ネザーの炎を吹き払った。「アバーッ!」巻き添えを食って周囲のゲニンが焼け死ぬ!「龍とは我だ。身の程を知るべし、長虫」
「ヌウーッ!」タイクーンは炎の余波をガード姿勢で防ぎ、邪悪なるティアマトを睨んだ。ティアマトは大技を繰り出す新体操選手の助走めいて、テンマを目掛けて軽やかに走り出した。『おのれ……!』テンマの目が光った。再び巨大刀を振り上げる!だが、「キエーッ!」助走からのドラゴン・トビゲリ!
『グワーッ!』KRAAAASH! 胸部にトビゲリが突き刺さり、装甲に亀裂が生じて、強引に抉じ開けられる!「オゴーッ!」カゲムシャ損傷のフィードバックに苦しむジョウゴが再び露出すると、ティアマトは満足げに黒いマガタマを再び掲げ、ジョウゴを見た。「やはりだ。お前は面白い。魔物よ」
リイイン! リイイイン! リイイイイン! 黒い宝石は波紋が空気中に視認できるほどに強い音波を放射し、そのたび、荒野と黒いトリイの光景が現世に重なり合った。中庭の者は皆ひとしく強烈な頭の痛みを覚えた。特に、その中心地に近いタイクーンは物理的な衝突を受けたように地面を刳りながら、後退を強いられる!
「貴様……コシャクなジツを……! ヌウーッ!」タイクーンはカラテを漲らせ、マガタマの響きに抗おうとした。ティアマトは鼻を鳴らした。「私のほうが存在格が上だ。頭が高いぞアケチ・ニンジャ」DOOOM! 周波数がなお強まり、タイクーンの肩装甲を吹き飛ばし、彼をその場に釘付けにする!
そして強烈な影響を受けているのはジョウゴも同様だ! 関節部を放電させて強制再起動めいたテンマの胴体部、自由になろうともがく彼の眼前に、ティアマトは一飛びに着地した。「アケチ・ニンジャよ。約束通りオダのソウルをくれてやるには、サツガイが必要じゃ。わかるな」「……ヌウーッ……!」
「して、この息子、お前に聞き及びし通り、実際イビツな存在。オダの肉にネザーの大気、キキョウのジツか……堪らぬわ」ティアマトは恍惚として、マガタマに頬ずりし、舌を這わせる。「これならば容易くサツガイの肉となろう。アケチよ。そのうえで、オダのソウルは貴様のソウルに混ぜてやるゆえ……悦ぶべし」
「戯言を!」タイクーンが叫んだ。彼の足元には抵抗の亀裂が拡がった。「オダは我が宿敵! 滅ぼすのが宿願也……!」「その宿敵の腕を後生大事に抱えおる……お前の欲望を決めてやるのは私じゃ」「グ……ガ……!」ジョウゴが血泡を噴き、もがく。ティアマトはマガタマを差し入れる……!
「イヤーッ!」
張り裂けるようなカラテシャウトが、空気を埋め尽くす周波数を引き裂いた。ティアマトは意外そうに、手首に巻き付いた燃える縄を見た。それから、ピンと張った縄の先に居る者を。赤黒く燃えるニンジャが、マガタマの圧力を打ち破り、干渉してきた、そのさまを。「……何事?」ティアマトは訝しんだ。
ミシミシと鳴る音は、赤黒のニンジャの肉が、骨が、激しく軋む音だった。怒りと憎悪が鳴らす音だった。「サツガイと言ったな。貴様」「……ン……!」ティアマトは痛みに身を震わせ、濡れた唇を歪めた。赤黒のニンジャは……ニンジャスレイヤーは……燃える目を見開いて、言った。「貴様の狙いは、だいたいわかった」
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