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パルプ小説の書き方(実践編7):「悪役を作れ」(逆噴射聡一郎)

承前


よく来たな。おれは逆噴射聡一郎だ。おれは毎日ものすごい量のテキストを書いているが、だれにも読ませるつもりはない。だがおれは今回、窓から差しこむ熱いMEXICOの夕陽を浴び、CORONAビールを飲みながら、「今後の小説講座で取り上げてほしい内容」リストをながめていたところ・・・・「悪役をどうやって作ればいいのか?」という質問が多いことに気づいた。

逆噴射聡一郎先生プロフィール:社会派コラムニスト。昔からダイハードテイルズ・マガジンに時々寄稿してくださいます。当マガジン上にて「パルプ小説の書き方講座」を連載していただいています。

悪役はストーリーを構築する上でとても大事であり、おまえが小説を面白く書けていないとしたら、その原因の9割近くは「悪役に魅力がない」とゆう可能性がある。「魅力的な悪役の作り方」は、ある意味で主人公以上にデカく重要なテーマであり、全100回くらいの連載講座になる可能性があるが、ひとまず今のおまえに必要な最低限のツールを用意した。


悪役とは何か?

そもそも悪役とは何か・・・? それはヴィラン・・・アンタゴニスト・・・・ヒール・・・・要するに主人公の前に立ちはだかり、邪魔をしたり、主人公の理屈にいちゃもんつけくる奴だ。パルプにはこいつらの存在が絶対に必要だ。

おまえは「ヒーマン」を知っているか? それはシュワルツェネッガーのように筋肉モリモリのマッチョマンのアクションフィギュアで、マスターズ・オブ・ユニバースの主人公だ。こいつは見るからに真の男なので一斉を風靡してアニメとかゲームとか失敗した実写映画にもなり、当時のキッズの心に深く刻み込まれた名作中の名作だ。ヒーマンには「スケルター」という完璧な敵がいたからこそ、マスターズ・オブ・ユニバースは大ヒットした。

スケルターは邪悪なフードにドクロの顔・・・・屈強な青い体とデカイ杖・・・・・いっぱつでその悪さと強さとアティチュードが記憶に残る。魅力的な悪役の好例だ。スケルターがいなければどうなっていたことか? おまえがたとえ真の男のアクションフィギュアを右手で持ったとしても、真の男がふるう剣をぶつける相手を左手で持たなければ、そいつは真の男を証明できない。おれは今そういう話をしている。同様に、コナンにはタルサドゥームという強敵がいた。バンデラスの前にはダニートレホが立ちふさがった。そしてルークスカイウォーカーの前にはダースベイダーだ。


悪役はなぜ必要なのか?

こうした悪役は、何のために必要なのか? 話をアクションさせ、コンフリクトさせるためだ。おまえはすでに、密室でイルカについて考えるだけの独白小説では銃をぶっ放せず、自分の頭を吹っ飛ばすしかなくなりEND OF MEXICOしてしまうとゆう事を、おれの過去のやつを読んで何度となく学んでいるはずだ。登場人物Aが登場人物Bと接触し、意見の衝突やコンフリクトが起こらなければ、そこに物語は生まれない。そのコンフリクト・・・・・激しい感情の動き・・・その一番極端なケースが、敵との戦いだ。主張のぶつけ合いや命のやり取りだ。それは銃弾の打ち合いであり、殴り合いでもある。ガンダムでは殴ったり撃ち合ったりしながら叫んでいる。

「おまえら落ち着いて話し合えよ」と思う奴は真のコンフリクトをまだ知らない。そんな解決は嘘っぱちだ。主人公と悪役が落ち着いてカフェテリアでバターコーヒーを飲みながら話し合って問題が解決したら、シュールすぎて全然血肉がエキサイトしない。これでは物語のダイナミズム・・・・振れ幅が小さくなるだけだ。ダースベイダーがいなければルークのフォースは持ち腐れだ。もし帝国軍やダースベイダーやデス・スターがなければ、ルークがマスターヨーダーの横で座禅して「宇宙とは・・・イルカとは・・・先生わかりました。完」とかいってるだけのニューエイジファンタジーになってしまい完全にダメだということが完璧に証明されている。

そもそも、おまえは現実にそんな平和で退屈な時代を生きていない。家から一歩出ればそこは完全なMEXICOであり、全てのサボテンの影にはダニートレホがひそんでいる。家から出なくてもTwitterとかが完全にMEXICOで終わっている。だれもが生きるのに必死で、傷つき、苦しんで七転八倒している。ならば、その現実の事実から目をそらさず、苦闘を作品に込めろ。それがフィクションの力になる。現実世界には理不尽もたくさんある。だから、会話が成り立たない悪役もいる。ダニートレホは何をした? 突然出てきてナイフを投げた。要はそうゆうことだ。

静かな私小説とかで明確な敵を出してぶちのめすのはなかなか難しいが、パルプならやれる。そもそも読者はそうゆうのを最初から期待しているのだから、ジャンルとして強いアドバンテージがある。だからやらない手はない。おまえはハイハイしているガキの頃からアンパンマンがバイキンマンの非人道行為を拳の暴力でブチのめす話を見てスカッとし、脳に凄いアドレナリンがキマってきた。この種の快楽に生まれながらにアディクトしている事は確実だから、こんな説明をぐだぐだ並べずとも、その訴えかけるパワーは本能でわかるはずだ。これは完全に悪役との戦いが重要だという事を証明している。

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