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シャード・オブ・マッポーカリプス(11):Wi-Fi象

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……ここは街の中でも高台だ。崖の手摺越しに、ランタンの映る水路や美しくライトアップされた建物群、石の塔、屋台のテント、広場を歩くWi-Fi象などを眺め渡す事ができた。料亭の門の脇にはカロウシタイが三名、銃剣を構えて並んでいる。濁った目をロングゲイトに向け、あいまいにオジギをする。

- 「ヨグヤカルタ・ナイトレイド」より


ブンズーブンズーブンズズブンズー。ブンズーブンズーブンズズブンズー。

タイヤキを食べながら、彼女は奇妙なリズムに引き寄せられた。不思議なテクノ民族音楽を伴って街を練り歩くそれは、動くUNIX砦のようにも見えた。周囲には大勢の人々が歩き、型落ちの怪しげな端末でIRCに興じていた。その大半は子供だった。

彼女が近づくと、それは巨大な生き物であることが解った。巨大な無線LAN装置を背負い、サイバーサングラスをかけた、美しいターコイズ色のバイオ象であった。額と鼻には、神々を意味するエンシェント・カンジのネオン・タトゥーが刻まれ、リズムに合わせて流麗にかつ楽しげに、マンデルブロの踊りを踊っていた。クリーム色を基調とした、使い古された絨毯のような織物を纏い、その上から旧世紀のテック遺産と思われる基板やカセットテープやスピーカーなどの神聖物が、鈴や民族楽器や原始的なデジ・シーケンサーなどと一緒に、まるで鎧と祭壇が合一したかのような華やかさで、かつ無造作に、赤やエメラルド色の紐で結ばれ吊るされているのだった。子供たちはしばしば、リズムに乗せてそれらの楽器を鳴らしていた。

「パヨーン」Wi-Fi象が鳴いた。全身がビリビリと震え、彼女は驚いてその場に立ち尽くした。Wi-Fi象は市場のテントの中に鼻を伸ばし、バイオリンゴを掴んで口元に運んだ。店主は当然、カネなど要求しなかった。「お嬢さん、乗ってみませんか? Wi-Fi象に」御者の少年が、観光客と思しき彼女に声をかけた。少年は型落ちの、不恰好に大きなサイバーサングラスをかけ、サイバー・シーシャを吹かしていた。Wi-Fi象の体側面には、壊れた木製のブランコやラバー製の籠のようなものが四つ並んでおり、老人がそこに座り、Wi-Fi象の背負う大型UNIXとLAN直結し、浅く心地よさげにトリップしていた。淡いオレンジ髪の娘は、少し戸惑ってから、Wi-Fi象に乗ってみることにした。



Wi-Fi象の成り立ち

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