S4第4話【ヴェルヴェット・ソニック】#2
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「いや、その……」タキが口ごもったので、ナンシーは少し察した。「成る程ね、いないわけか」「ああ、まあな。色々あンだよ、差し迫った事情がな。……奴は今、必要な時しか店には戻らねえ。敵にバレちまうから」「敵……」「だけど、日が落ちてからも連絡のひとつもよこさねえ。コトブキは探しに行ったぜ」
「困ったわね」ナンシーはタキが差し出したヤサシイ・ドリンクの栓を開けた。タキはファット・ジャックに怒鳴った。「おいクソ野郎! 閉店だ! そのピザは持って帰って食え」「ええ? おいしいのに」「客人が来たんだよ、客人が! カエレ!」「わかったよォ」ファット・ジャックは尻を掻きながら退店した。
ナンシー・リンは扉が閉まるのを確かめ、それからタキを見た。タキは少し挙動不審だった。「それで……アイツに何か用か。立て込んでて悪いンだが……」「そう。私の用事は、その "立て込んでる話" に関係があるの」そして懐からオリガミメールを取り出した。「ストラグル・オブ・カリュドーンの件」
「オイ待て。アンタ、なんでその話を……」「手伝ってやってくれッて、急に呼び出されたの」「誰に」タキは訝しんだ。ナンシーはオリガミを開いた。そこには爪サイズの音声デバイスが収まっていた。そしてオリガミには毛筆で送り主の名が書かれている。「サツバツナイト」と。タキはさらに訝しむ。
「サツバツ……ちょっと待て……あのアイツか?」「良かった。確かに面識はあるようね」「だけど、話が見えねえぞ。あのおっさんがカリュドーンの……それでナンシー=サンを……?」「時間はあまり残されていないみたい。単刀直入に行きましょう。狩りは、今夜」
「今夜? ああ、なんだ。ビビらすなよ」タキは青い顔で苦笑した。「勝負は昨晩ついたぜ。カタナ・オブ・リバプールの野郎と戦ってな。一日遅かったな、アンタ」「今、夜、よ」ナンシーは強調し、オリガミを畳み直し、胸元にしまった。「昨晩の狩りはニンジャスレイヤー=サンが勝った。次の狩りが、今夜」
「待ってくれ!」タキは身を乗り出した。「そんな無茶な話あるか。昨日の今日だと!?」「ええ、そのようね。儀式の仕組みは道すがら詰め込んで来たけど、要するに、獲物はあくまで獲物。ルールは狩人同士の為のもの。なにか神秘的な日付設定があるんでしょうけど……私達に似た力が介入したのかも」
「オレ達……」タキは指をホームポジションにした。「……ハッキングか」「さあね。確かめようがないけど。同業のニオイがするッて話よ」「あ、ああ、そうかもな。オレも感じるかも……」タキはしどろもどろになりながら、「だけど……儀式の件、詳しすぎねえか、アンタ。いや、オレは信じるけど」
「国際探偵の調査力、と言っておきましょうか」ナンシーはウインクした。「詳細をすぐに明かしてよいものかどうか、わからない。とにかく、彼からもたらされた情報によれば、狩りは今夜。狩人は『サロウ』……ニューロン攻撃のニンジャ。私とサツバツナイト=サンは、同じタイプの力をよく知ってる」
「同じタイプ。ニューロン攻撃」タキは繰り返した。「ニンジャスレイヤー=サンは、狩人連中に囲まれた時、頭をジツでいじられそうになったッて話はしてたよ。アイツの話は直感的なんだがよ……多分そいつだろう……」「そういうワケで、私はここに来た」ナンシーは髪をかきあげた。「差し迫ったニンジャスレイヤー=サンの危機に助太刀する」
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