シャード・オブ・マッポーカリプス(28):ネオサイタマのアクション映画とVHSテープ
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キュイイイイイイイイイイ!
「ア、ア……」甲高い電動ドライバーの音が、タキを二日酔いの眠りから叩き起こした。毛布を被った覚えは無いが、目の前のカウンターには薄汚いノート型UNIXと、さらに薄汚い灰皿と、空のビール瓶と、黒い粉の入ったジップロックと、溶けた氷水の溜まったグラスが置かれている。徐々に記憶が戻ってきた。間違いなく昨夜、徹夜のハッキング・ビジネスをした跡だ。そのまま疲れて寝てしまったのだ。
オレはこのところ相当働いている。ワーカホリックかもしれない。タキはうめき、覚束ない視界のまま目の前のUNIXキーを叩き、画面をスリープ状態から復帰させる。
まず画面に映ったのは、セクシーな水着パンツ姿の黒髪ベイブがイルカ型の浮き輪と絡み合い、豊満な胸を丸出しにしている猥褻画像だった。清楚で高貴な出自で知られる大物映画女優、クミコ・サカイ。当然ながら、その違法なコラージュ画像である。
キュイイイイイ! キュイ! キュイイイイイイイイ!
「おい、何してんだ」タキは画面に見入ったまま、後方から聞こえてくる電動ドライバーの音に対して呼びかけた。
「台を作っています」積み重ねた椅子の上で作業に没頭したまま、コトブキが返した。
「台?」タキは振り返るのも億劫そうに言った。
「テレビ台です」キュイイイイ! キュイイイイイイイイイ!「ビデオテープ再生機能付きのテレビを、バイト代で買ったんですよ! VHSのアクション映画ビデオも何本かついてきました!」
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