【レリックブレイカ:ハードタイム】中編
◇総合目次 ◇初めて購読した方へ
◇前編 ◇中編 ◇後編
前編 ←
「とりあえず、これ外すからな」ヤコは包帯を噛み、引き剥がした。「だいたい治ったみたいだし」
「……」
ルイナーはヤコのその様子を観察している。ヤコは居心地悪く思った。
「なんだよ」
「治りが早い」
「今の俺が相当凄いッてことだろ」
ヤコは壁の姿見に映る自分を確かめた。両腕には稲妻状の傷痕が残っていた。自分の身体を力が駆け抜け、開放した、あの瞬間に刻み込まれた痕跡だった。
「な? 全然平気。シューシュシュシュ……痛ッ……」
挑発的にシャドーボクシングを行い、痛みに顔を歪める。それを不敵な笑顔で繕った。
「ちょいまだ痛い、けど全然平気だし。じゃあな。世話になッ……」
今度は、腹が鳴った。ルイナーはしかめ面のまま、首を傾げてみせた。
◆◆◆
コ、ヒ、ミ、カリ、バ。コ、ヒ、ミ、カリバ。タカナ、ノ、キモチ。タカナ、ノ、キモチ。
「ジャパノコ」の新曲はここでもかかる。庭園ビルの地上階は雑多な店舗が入り込んでいる。それらの店の一角、「なうわなう」で、ルイナーとヤコはアルミのテーブルを挟み、ベトナム・ヌードルを啜り込んでいた。
ここから先は
8,877字
/
1画像
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?