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S4第5話【デストラクティヴ・コード】分割版 #9

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 アヴァリスの記憶がいつの時点からのものなのか。それは、彼が暮らしたスラムに終始満ちていた霧のようにおぼろだ。己が何なのか判然としないのは、彼にとって不愉快なことだった。とりわけ、わかるようでわからない……半端な実感がぶら下げられているような曖昧さが、常に彼を苛つかせていた。

 気づけば彼はそこに居たし、奇妙な力も、共にあった。空にはオクダスカヤのツェッペリンが浮かび、黒コートの者達がしばしば、有能そうな若者をさらいに来た。彼らはオクダスカヤのエージェントで、ニンジャだった。そいつらはむしろアヴァリスの獲物だった。アヴァリスはそいつらを贄に、己の力を学び、肉体の感覚をキャリブレートさせていった。

 オクダスカヤはザイバツ・シャドーギルドという集団と散発的な戦闘を繰り返していた。慌ただしく付近を行き来するニンジャ達は、己自身の力に馴染む機会をアヴァリスに与えてくれた。捕食の機会を。……ケチなスラムで社のニンジャが行方不明になれば、当然、騒ぎになる。より強いニンジャが調査に訪れ、より強いジツをくれた。

 そのエスカレーションは何処まで行ったか? 最後まで行った。つまり最後は、ヴァイン……オクダスカヤの頂点に立つ存在が、直々に現れたのだ。アヴァリスはヴァインの獣じみた香りに、それまでとは異質なアトモスフィアを感じ取った。暗がりに身を潜め、機をうかがう彼の目の前に、ヴァインは平然と進み来た。そして……ぬかづいたのである。

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