【バトルグラウンド・サツ・バツ】3
【バトルグラウンド・サツ・バツ】3
ぞっとするほど冷たいコンクリートの感触を全身で味わいながら、ソリティアは十数年前の「戦争」を思い出していた。
電子戦争。あの頃、夜空を見上げれば、ひっきりなしに流星が光の筋を描いていた。それは墜落する人工衛星たちの断末魔だった。光が墜ち、消えゆくさまは、世界の終わりのさまを彼女に強く印象づけた。
しかし結局、世界は終わらなかった。暗黒メガコーポが手を握り、戦争と磁気嵐が全てを歪め、奇妙な時代が訪れた。電子的・物理的に強制的に鎖国した日本で、湾岸警備隊は無用の長物となっていった。やがてあのハーヴェスターが牙を剥き、アガメムノンのアマクダリ・セクトが現れるまでは。
廃展望塔のコンクリートの上、ソリティアは横向きに寝転がった姿勢のまま、愛用の大弓を引く。スナイパーがうつ伏せでライフルを撃つように、彼女はこの奇妙な姿勢から、2キロ以上先の獲物を狙っているのだ。
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