【シルバー・シュライン・ライク・ア・バレット】
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【シルバー・シュライン・ライク・ア・バレット】

◇総合目次 ◇初めて購読した方へ

この小説はTwitter連載時のログをそのままアーカイブしたものであり、誤字脱字などの修正は基本的に行っていません。第2部のコミカライズが、現在チャンピオンRED誌上で行われています。



前編

 カタオキは……シルバーキーは目を開いた。コンクリート天井。身を起こした。首に包帯が巻かれている。痛みは無い。壁には「安らぎ」と書かれたショドーが掛かり、棚にはフクスケとコケシが置かれていた。「フクスケ……やれやれ」バシダのクリニック。処置が済んだと考えていいのだろうか。

 彼はキョート共和国から遠く離れたこのネオサイタマまで強行軍の旅をし、脊髄にインプラントされた非道な位置情報発信装置の切除手術を受け……「いや、実際はそう簡単じゃない」「え?」シルバーキーは声の方向を見た。逆モヒカンの男が座っていた。「あンたはデッドムーン=サンだっけ」

「その通り」「ここは手術室だぜ。なんで、運び屋のあンたがここにいる?」シルバーキーは指さした。指さしてから、なぜ自分はこの男の事を知っているのか、訝しんだ。「確かあンたとは……ええと」「つい何時間前かにアイサツしたばかりさ。現実でな」

「現実?って事は、ここは……」シルバーキーは徐々に思い出し始めた。デッドムーンは眉一つ動かさず答えた。「そう。ここは夢だ。俺も、お前のイメージ」「ああ……そういう事」シルバーキーは頭を掻いた。「つまり、この手術室ってのも……」「イメージ」

 デッドムーンは肩をすくめた。「発信装置を取り出し、破壊するまで、お前さんの位置情報はザイバツに送信され続けてる。こんな部屋に留まって手術ができるとお考えかね。それこそ、甘いね……その間ギルドの連中のひっきりなしの歓迎を受け続けるか?」

「そう……だよな」シルバーキーはデッドムーンの肩越し、個室出入り口の「新撰組」とミンチョ体で書かれたノレンを見た。ノレンの向こうは闇だ。いや、ネオサイタマの夜景である。高速で流れてゆくネオン看板の光。風を切って走る!「オイまさか」

「思い出して来たか?」とデッドムーン。「そのまさかだろ」ゴウ!シルバーキーはスピードの中に放りだされた。


「ニンジャスレイヤー」第二部「キョート殺伐都市」より

【シルバー・シュライン・ライク・ア・バレット】


 彼は離人症めいて己の肉体を見下ろした。彼の身体は今、瓦屋根シュラインを戴くクロームシルバーの車の中にある。武装霊柩車の中に。「霊柩車!死んだか!幽体離脱現象か!」シルバーキーは思わず狼狽えたが、すぐに己の状況をあらためて思い出した。

 シルバーキーの隣には、衛生マスクと手袋を装着した厳しい目つきの女性が座っている。彼女の名はバシダ。闇医者だ。彼女の手元には手術道具。然り……インプラント切除手術は今まさに始められようとしている。ハイウェイを走る武装霊柩車の車内において!

(正気か?アンタら)デッドムーンはニンジャスレイヤー達から依頼を持ちかけられた際、その計画について、一度だけ訊き返した。彼の問いに首を縦に振った者は誰もいなかったが、ともあれ彼は仕事を受けた。プロフェッショナルだからだ。

 シルバーキーのインプラントはいまだ位置情報を発信し続けている。ゆえに長時間の手術を行えば、集中的な攻撃をザイバツから受ける事となろう。そこで苦肉の策として選ばれたのが、ハイウェイを走り続ける武装霊柩車の車内だ。武装霊柩車の装甲は戦車のように強靭で、サスペンションは最高だ。

(ウーン、できなくはないよ)闇医者バシダは意外にもこの無謀な計画に乗った。(手術室にニンジャが雪崩れ込んでくるよりは、やり易い)殺人鬼ニンジャの狼藉に巻き込まれ、NRSを発症していた彼女であったが、正気に戻ってみれば、驚くほど自信に満ちた、一種独特の矜持を持ち合わせた女性だった。

 かくして今、武装霊柩車ネズミハヤイDⅢの運転席にはデッドムーン、車内霊安室にはシルバーキー。そしてただ一人で手術を決行する構えのバシダが居る。そして、「待てよ。待て待て」シルバーキーは思い出そうとした。「ニンジャスレイヤー=サンは……今どこにいやがるんだっけ……?」

 映像記憶が捻じ曲がり、静止したハイウェイに赤黒のニンジャと強力なザイバツ・ニンジャのカラテが刻み込まれた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはハイペリオンの胸を蹴り、彼が発動させた恐るべきテイクザットユーフィーンド・ジツの広範囲衝撃波の範囲から武装霊柩車を逃した。

 武装霊柩車は彼らを尻目にロケット加速をかけた。「そうだ」シルバーキーは思い出す。最初に襲撃をかけて来たのは、このハイペリオンというザイバツ・ニンジャだ。広範囲に影響を及ぼす厄介な衝撃波を用いる敵をニンジャスレイヤーが引き受けている。だがもし更なるニンジャが襲ってきたら、誰が守る?

 懸念はそのままに、記憶が逆流し、現在の車内を見下ろす視点が戻って来た。麻酔を処置され意識を失った自分の身体を外から眺めるのは恐ろしいものだ。これもまた、ニンジャソウルが彼に与えたユメミル・ジツの一環であろう。やがてバシダが生命維持装置の接続を終え、医療メスを手に取った。

「ゾッとしねえ!」シルバーキーは己の肉体から目を背けた。執刀の瞬間を見たいとは思わなかったのだ。自分自身から注意をそらした事で、彼は、ハイウェイの遥か後方からザイバツ・シャドーギルドの尖兵が恐るべき速度で迫り来ている事を知った。

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」トラックからトラック、車両から車両を飛び渡るのは、残像を伴うダークブルー装束のニンジャ!その身にはザイバツ紋!「やっぱりだ……来ちまったぞ!別のザイバツ・ニンジャが!畜生、こっちにニンジャがもういねえぞ、戦える奴が!」


◆◆◆


 頻繁に車線変更を行って次々に車を抜かしていく走り屋のスポーツカーのルーフ上に彼は片膝着地し、遥か前方、目当ての電子信号発信源を視界内に捉えた。「……武装霊柩車」彼は低く呟いた。「どこへ向かう……」彼の名はストームライダー。ザイバツのネオサイタマ駐屯部隊、ワイルドハントの部下だ。

 キョートからニンジャスレイヤー達を追い来たレッドゴリラはネオカブキチョで返り討ちの憂き目に遭った。その敗北は、ワイルドハントらの存在を軽んじて連携を怠ったレッドゴリラ自身のインガオホーである。だがワイルドハントとしても、手をこまねいてギルドの敵を放置に任せるつもりはなかった。

 ギルドはシルバーキーの脊髄信号を追い、非合法の運び屋の根城、武装霊柩車ネズミハヤイのガレージに襲撃をかけた。ハイペリオンのテイクザットユーフィーンド・ジツによって早期に決着をつける腹積もりであったが、ニンジャスレイヤーは自ら盾となって攻撃を阻み、武装霊柩車をハイウェイに逃がした。

 ストームライダーは単独で武装霊柩車を追った。斥候能力に長ける彼は、潜伏する敵のニンジャソウル痕跡を辿って追い詰め、自らのカラテによって仕留める一流のハンターであった。「成る程、単に逃げ続けるならばそれもよかろう。だが、ザイバツの指は長い……貴様らはどこへも辿り着くことはできん」


◆◆◆


「ヤバイんじゃねえか。ヤバイ!」シルバーキーの自我はネズミハヤイのやや斜め後方の上空からこの様子を見下ろし、歯噛みした。「もう来るぞあの野郎……どうすりゃいい。考えろ。考えろよ」彼の思考はグルグルと加速した。

「こうなりゃ俺自身がカラテであの野郎と……俺だってニンジャだ。あのハイペリオンが無理でも、こいつ相手なら……アイエエエ!?」シルバーキーは自分の身体をふと一瞥し、後悔の悲鳴を上げた。既に彼の首の後ろの皮膚が切り開かれ、バシダはシルバーキーの肉に注意深く医療メスを潜り込ませている!

「見なきゃよかった」シルバーキーは目を逸らした。「こりゃダメだ……そもそもこんな中、霊柩車が攻撃を受けたら、俺、絶対ヤバいぞ」「イヤーッ!」ナムサン!まさにその瞬間、後続車両からストームライダーが跳躍し、ネズミハヤイの瓦屋根に飛び移ったのである!「アーッ!ヤメローッ!」

「イヤーッ!」KRAAASH!「イヤーッ!」KRAAASH!ストームライダーは瓦屋根シュラインにカワラ割りパンチを連続で打ち下ろす。武装霊柩車はジグザグに蛇行運転を始めた。「ヤメロー!ヤメロー!」シルバーキーは叫んだ。「ヤメ……いや……俺か!俺がやるんだ」

 シルバーキーは恐慌一歩手前で踏みとどまり、精神のスイッチを切り替えた。彼はストームライダーのニューロンに意識を向け、焦点をしぼる……「やれるか?ニンジャのニューロン……イヤーッ!」

 ……ドクン!「グワーッ!?」ストームライダーは脳が真っ白に閃光爆発するかのような感覚に襲われ、大きくバランスを崩した。ドクン!再びニューロンが爆発!だがストームライダーはニンジャ集中力で克服!「味な真似を。これが奴のジツか」

 ギャギャギャギャギャギャ!武装霊柩車が攻撃的にドリフトをかける。「チィーッ!」ストームライダーは体勢を立て直し、並走するオープンカーの助手席に飛び移った。「アイエエエ!?」運転者が突然のニンジャの闖入に白目を剥き、悲鳴を上げる。「アイエエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!」

「イヤーッ!」「アバーッ!」ストームライダーはオープンカー運転者の首を刎ね、死体を路上へ蹴り落とすと、ハンドルを奪取。ネズミハヤイに食らいついた。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ストームライダーは右手でハンドルを操作しながら左手で真横のネズミハヤイにスリケンを連続投擲!

 バチチチチ!クロームシルバーの車体に火花が散る。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」バチチチチ!「よしてくれ、レディが悲しむぜ」デッドムーンは呟き、「撃」のボタンを押した。シュイイイ……ホイールからマシンガンが展開!BRRRRRTTTTTTTT!

 BRRRRRRTTTTTTTTTT!「グワーッ!」オープンカーが蜂の巣になり、燃料タンクに引火、爆発炎上した。「イヤーッ!」ストームライダーは脱出し、並走しているワゴン車のルーフに飛び移った。飛び石めいて、先の車、先の車へ、残像を伴ってわたってゆく。

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ストームライダーはネズミハヤイにスリケンを連続投擲!バチチチチ!クロームシルバーの車体に火花が散る。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」バチチチチ!「攻撃を激しく受けています。重点アラートな」ネズミハヤイ音声が警告した。

 デッドムーンはかすかに眉根を寄せる。「さて。どうしたものかな……」カンオケ・ルームのバシダに呼びかける。「オペの首尾はどうだね。なかなかタイトな状況になってきてるんだが」「そんなに短い時間で済むなら、私は今頃億万長者よ!」バシダは執刀を続けながら叫び返した。

「そりゃそうだ」デッドムーンは呟いた。ギャギャギャギャギャ!斜め前方の車両のタイヤが破裂し、スピンを始めた。ニンジャがスリケンを投げたのだ。グリップを失った車両がネズミハヤイに迫る。避けきれない! KRAAAAASH!


後編

「チィーッ!」デッドムーンが表情を動かした。今の揺れは大きい!「衝撃吸収機構にダメージ」ネズミハヤイのダッシュボードUNIXが再び警告音声を発した。「俺もレディも頑張るが、車内がだんだん快適じゃなくなってくると思うんで、よろしくな」「最低だわね!」

 ……「あの野郎!こっちに直接やりあえる奴がいないからって、ふざけるなよ!」シルバーキーは唸った。彼はストームライダーに何度もニューロン・アタックをかけていた。そのたび敵の動きは確かに鈍るが、なにしろ熟練のニンジャ戦士。全身全霊をかけて、そのうえで効くかどうかも定かではない。

「ジリー・プアーだ。どうすりゃいい」いまだ付近にニンジャスレイヤーの気配はない。ハイペリオンはストームライダーよりもさらに強力なニンジャだった。ジツの発動によって半径十数メートルの空間が破砕し、クレーターが生じた。離脱するネズミハヤイ車内から恐怖と共に振り返った記憶……!

 カラテの切り結び一度二度でハイペリオンは倒せまい。「他に助けが……誰かいればよ……」思いつく助けなど、キョート在住でしかもニンジャ戦闘経験すら浅いシルバーキーには、そういない。挙げられるのは誰だ?ほんの数日前にネオカブキチョで共闘したネザークイーンとヤモト・コキ……。「決めた」

 彼は祈るように意識を拡大した。「頼む。居てくれ」周囲の人間のニューロンを辿り、ニンジャソウル存在を辿る。「……あれか?あれだッ!」もはや待ったなしだ。自我が瞬時にネズミハヤイを離れて飛翔。桜色の、どこか不吉な光を目指す。ハイウェイにほど近い「重力米田ビル」屋上に佇む少女が見えた。


◆◆◆


(聴こえるか)不意に頭の中に反響した声に物思いを破られて、ヤモトはその場で身構えた。「誰だ!」(俺だ。シルバーキーだ)「エッ、誰?……シルバーキー=サン?」ヤモトは周囲を見渡す。(いや、ここにはいねえ。正確には……もうすぐ目の前のハイウェイを通るクルマの中なんだ。武装霊柩車の)

 ヤモトは現状を把握しようと努力した。(昨日の今日でこんな風にぶしつけでよ、本当に悪いんだが)心底すまなそうな声がニューロンに響いた。(だけど、ほかに今、助けを乞える相手がいねェ……)「どうしたの」ヤモトはビルからハイウェイをじっと見下ろした。

 この夜、彼女は説明のつかぬ胸騒ぎをおぼえ、絵馴染(えなじ)のベッドを抜け出し、何をするでもなく、ビルからビルへと飛び移り、風の中にマフラーめいたニンジャソウルの布をはためかせていた。そこへシルバーキーの呼ぶ声が聴こえたのだ。何かの虫の知らせであったろうか?

(要は、ザイバツのニンジャから攻撃を受けている)シルバーキーは説明した。(ニンジャスレイヤー=サンが応戦しているが、このままじゃ、遅かれ早かれ多勢に無勢になる。俺はといえば、武装霊柩車の車内で今、手術の真っ最中……とにかく時間がねえ。一刻を争うんだ、勝手な話ですまねえ)

「待って。手術?車内って?」(例のインプラント切除手術さ。それを結局クルマの中でやるッて事になって……まあそりゃいいんだが、ザイバツの奴らがひっきりなしに襲って来やがるもんだから)「クルマの中でできるの?聞いた事ないよ!」ヤモトは呻いた。(ちなみに、俺も未体験だ)とシルバーキー。

(後で何でも礼をさせてくれ。その……できる範囲でだが……それも、たいして縁の無い、ほとんど他人なんだが)「わかった」ヤモトは答えた。先日のイクサの件もある。更には、もっと昔……ネオサイタマが炎上したあの日、ヤモトはニンジャスレイヤーと武装霊柩車とに、助けられたのだ。「助ける」

(マジか)「どうすればいい」(霊柩車だ。近いぞ……そろそろ見える筈だ)「わかった」ヤモトは頷いた。そして跳んだ!「イヤーッ!」彼女は頭を下に、垂直に落下する。真下にはハイウェイ!ナムサン!彼女は空中でクルクルと回転し、見事、走り来たクルマの一台のルーフパネル上に着地したのである!

 ヤモトは立ち上がり、後続車両を見やった。すぐに彼女は武装霊柩車を発見した。近い。(そうだ、見えたか。あそこに俺もいるンだ)シルバーキーの声が補足した。ヤモトはそれから、ウキヨエ・トレーラーの上にポジショニングする紺色のニンジャ存在に気づいた。「あれだ!」ヤモトは思わず叫んだ。


◆◆◆


 ストームライダーはウキヨエ・トレーラーの上からネズミハヤイを狙い、執拗にスリケン投擲を繰り返す。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」バチチチチ!クロームシルバーの車体に火花が散る。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」バチチチチ!「しぶといクルマだ。さすが武装霊柩車といったところか」

 武装霊柩車はヤクザ・オヤブンの死体を敵対ヤクザクランの強奪から守る為に立ち回る特殊車両であり、それゆえ驚くほどの頑強さと、乗り手を守るしなやかさ、迎撃機構を持ち合わせている。車体は勿論、タイヤすらも特殊なパーツの一つであり、パンクの類いとも無縁だ。

 だが、ニンジャ相手ではどうか?「クルマのもう一台二台でもぶつけてくれよう」ストームライダーは冷徹に思考し、前方を走る哀れな一般車両に狙いを定めた……そして眉根を寄せた。ルーフ上に人影。ニンジャスレイヤーか?違う。若い女だ。首元には桜色に光る超自然の布。すぐにニンジャだとわかった。

「イヤーッ!」ストームライダーはスリケンを投擲!「イヤーッ!」女の手が閃き、刃がスリケンを切り払う!そして跳躍!「イヤーッ!」ひととびにストームライダーのウキヨエ・トレーラーに飛び移ると、女のニンジャはすぐさまアイサツを繰り出した。「ドーモ。はじめまして。ヤモト・コキです」

「ドーモ。ヤモト・コキ=サン。ストームライダーです」ストームライダーはオジギを返し、カラテを構え直した。「ギルドに仇なすニンジャが次から次へと。どこの者だ。アマクダリ・セクトか?」「攻撃をやめるんだ!」「モンドムヨー!イヤーッ!」ストームライダーは得物の鎖つきブレードを抜き放つ!

「イヤーッ!」ヤモトは自剣ウバステで応戦。たちまち激しい斬り合いが始まった!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ゴウランガ!電子ネオン流れる夜のハイウェイに、センコ花火の爆発めいた斬撃光!居合わせたドライバー達は謎の超常現象めいて脅威と共に見守った事だろう!

「イヤーッ!」狙いすましたストームライダーの一撃がヤモトの肩口を切り裂く!ヤモトは蹴りで反撃!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ストームライダーは素早いブリッジでこれを回避!そのときヤモトは懐から紙片を宙にばらまく。それらは桜色の光を帯び、ひとりでにオリガミ・ツルの形をとる!

「いけッ!」ヤモトがストームライダーを指さすと、それらはミサイルめいて飛翔した!「イヤーッ!」ストームライダーはバック転で飛び離れながら、鎖ブレードを周囲に旋回させた。ZANKZANKZANK!ミサイルが切り裂かれ、桜色の爆発が夜に散る。「見かけによらず油断ならぬ相手と見た」

 だがストームライダーの言葉も己が上手であるがゆえか。ヤモトは間髪入れず踏み込むが、刃と刃の応酬の果て、「もらった!」ストームライダーが鎖ブレードをウバステの切っ先に巻きつけ逸らす!致命攻撃機会!狙うは首筋!「イヤーッ!」ナムアミダブツ!だが、その時だ!(イヤーッ!)

「グワーッ!?」ストームライダーはよろめき、殺害機会を逃す!そのインターラプト攻撃は不可視だった。(俺だぜ!)幽体シルバーキーが叫んだ。狙いすましたニューロン・アタックだ!「イヤーッ!」ヤモトは足払いをかける!「グワーッ!」転倒するストームライダーに横なぎの斬撃!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」だがナムサン!ストームライダーは空中でウバステを鎖に絡め取ると、ヤモトに投げ返した!一瞬の致命的カラテムーブだ!「ンアーッ!?」ヤモトはトレーラー上を転がり、バウンドして、ハイウェイに転がり落ちる。ナムアミダブツ!(ヤモト=サン!)シルバーキーは虚しく叫ぶばかり!

 ヤモトの身体がハイウェイのアスファルトに叩きつけられる……と見たその瞬間!ハイウェイ後方からトップスピードで矢のように走り来た黒鋼のモーターサイクルの乗り手が見事に受け止めたのである!(ニンジャスレイヤー=サン!)

 ニンジャスレイヤーのバイク、アイアンオトメは、自立走行すら可能なインテリジェント・モーターサイクルだ。彼はヤモトを乗せ換えると、自らは高く跳躍。「イヤーッ!」ウキヨエ・トレーラーの上に飛び移った。そしてアイサツした!「ドーモ。ストームライダー=サン。ニンジャスレイヤーです」

「ドーモ。ストームライダーです。ではハイペリオン=サンは敗れたか」「然り。今からオヌシを手にかける。当然、逃がす気はない……ニンジャ、殺すべし!」「フン……奴のテイクザットユーフィーンド・ジツは恐るべき広範囲殺傷能力。だが立ち合いのカラテならばこの俺が二枚三枚は上手よ」

 彼は傷だらけのニンジャスレイヤーを見て目を細めた。「奴に苦戦する者が俺に勝てる筈も無し!死ね!イヤーッ!」「イヤーッ!」カラテ応酬開始!赤黒のニンジャと紺のニンジャが激しく打ち合う!ヤモトは暴れ馬めいて自律走行するアイアンオトメにしがみつきながら、そのさまを見守った。

「アタイはまだまだだ……」(そんな事はねえよ)彼女のニューロンにシルバーキーの声が響いた。(あンたが来なけりゃ、武装霊柩車はあのまま仕留められていたかもしれねえ。そうなりゃ俺ら全員の敗北だったんだ。勝手な頼みを聞いてくれて、みんなが感謝するさ)「シルバーキー=サン……」その時!

「イヤーッ!」「グワーッ!」ストームライダーの強烈なカウンター攻撃がニンジャスレイヤーを捉えた!ヤモトは息を呑んだ。「イヤーッ!」彼女は傷ついた身体を押して、彼女はアイアンオトメのシートの上に直立した。

「ハアーッ……終わりだ。ニンジャスレイヤー=サン」ストームライダーはカラテを構え直し、ニンジャスレイヤーに鎖ブレードの狙いを定める。「ヌウーッ……」(畜生!なんて奴だ)シルバーキーは焦った。彼はヤモトを見やった。桜色に光るオリガミ・ミサイルが彼女の周囲に展開する。瞳に桜色の炎。

(い……行けるのか?)シルバーキーは呻いた。敵は相当の手練れ。このままではおそらくオリガミ・ミサイルもブレードによって弾き返されてしまう。あれを苦し紛れの一撃で終わらせない為に、彼ができる事は……まさにその時!武装霊柩車内でバシダが切除手術を終え、首筋の縫合を完了させた!

(覚めろ覚めろ覚めろ!)シルバーキーの幽体は己の身体に入り込んだ。己を強いてニューロンを駆動し、ニンジャアドレナリンを強引に引き出す。激烈な痛みが流れ込む!彼は手術の麻酔を強引に、あまりに強引に打ち消した。そして跳ね起きた!「イヤーッ!」「アイエエエエ!?」悲鳴を上げるバシダ!

「やるしかねェ!」流血のシルバーキー!ネズミハヤイ後部ハッチが展開!ストームライダーが鎖ブレードを頭上で振り回す!「死ね!ニンジャスレイヤー=サン!死ね!」「イヤーッ!」シルバーキーはネズミハヤイのハッチから全力跳躍!ストームライダーの意識外から攻撃をかけた!「イイイヤアーッ!」

「何……」ストームライダーの集中が乱れた。彼は僅かコンマ数秒、攻撃対象の選択に時間を取られた。そこへオリガミ・ミサイルが飛来した。「グワーッ!」桜色の爆発!「イヤーッ!」シルバーキーが蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」ストームライダーの後ろ蹴りがシルバーキーを弾き返す!「グワーッ!」

 そこへニンジャスレイヤー!電撃的速度でストームライダーのもとへ到達!踏み込む!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ストームライダーはカラテ迎撃!だがニンジャスレイヤーが一瞬速い!疾走速度を乗せて肩から背中にかけて叩きつける暗黒カラテ奥義、ボディチェック!「グワーッ!」

 ストームライダーはまともに打撃を受け、身体をくの字に曲げて吹き飛んだ。獲物に喰らいつくハゲタカの群れめいて、そこへ桜色のオリガミ・ミサイルが襲い掛かった!KBAM!KBAM!KBAM!KBAM!「や……やったか?」シルバーキーは流れ去る桜色の粉塵を睨み、がっくりと膝をついた。首の後ろの縫合痕から血が噴き出す!「グワーッ……!」

「無茶を!」ニンジャスレイヤーが駆け寄り、転げ落ちかかるシルバーキーを支えた。ハイウェイ後方、焼け焦げたストームライダーの身体がアスファルトに跳ね、爆発四散した。「サヨナラ!」

「イ……インプラント切除は終わった」シルバーキーはかすれ声で言った。ニンジャスレイヤーのIRC通信機からデッドムーンの声がした。『俺から見ても相当無茶だったぜ。言われた通りにはしたがな』ニンジャスレイヤーは後方、アイアンオトメを振り返る。ヤモトが無言でアイサツした。

 ニンジャスレイヤーは奥ゆかしくオジギし、協力に感謝した。『あのねえ、私が縫い直すんだからね!』デッドムーンにかわってバシダの怒声が聞こえた。シルバーキーは弱々しく笑う。 「もう追手は来ねえんだろ……ゆっくりやってくれ。麻酔は……いらねえや、こりゃ」そして気を失った。

【シルバー・シュライン・ライク・ア・バレット】終


N-FILES(設定資料、原作者コメンタリー)

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