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【ドラゴン・ドージョー・リライズ:奮闘編】♯2

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「ミート・モチをひとつ」「ハイ、ドーゾ……おや?」

 屋台のおやじはハンチング帽を被った男の面影を目ざとく思い出した。

「アンタ、ええと、誰だっけ……ドラゴン・ドージョーの!」

「ああ」フジキドは破顔した。「よく覚えているな」

「こちとら屋台のプロフェッショナルだからね! アンタたちの訓練風景は見ものだったしね!」

 おやじは笑った。フジキドは面映ゆそうにした。彼は広場を見渡した。

「ここで行われていた、ドラゴン・ドージョーのトレーニングは?」

「ああ、そうか」おやじは合点がいった。「あんた、旅であちこち行っていたんだっけねえ。色々あったよ。ドラゴン・ドージョーは今は分館をこさえてね。うまく行ってるみたいだねえ」

「分館。そうか。確かフルーツ店の……」

「ああ、"美しいフルーツ" ね。でも、それは前の話だよ! ちょうど……」

 タララダッタダー! 広場にジングル音が鳴り、中央の拡声器柱に増設された液晶UNIXパネルに広告映像が映し出された。

「お昼のシズカガオカ・ニュース。天気は晴れでしょう! 射手座のあなたは凄くいい感じです!」

 パステルカラーのミンチョ文字が踊り、快活なマイコ音声が告げる。次にカメラ映像が映し出したのは、タタミ敷きの広間でカラテを繰り返すニュービー・ニンジャ達の動画だった。黒を基調に金色の刺繍を施し、目を引くデザインの装束だ。

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

「これは。……タイセン=サンか」

 フジキドは呟いた。映像の中で、後進を指導していると思しき姿。間違いなくタイセンである。成る程、よくやっている……しかしフジキドはなにか引っかかった。タイセンの表情にどこか、曇りのようなものがあった。

「今週は当番組のスポンサーをしているドラゴン・ドージョーの皆さんへの取材模様を重点的にお伝えしていきますよ!」

 レポーターがカメラの前に現れ、飛び跳ねた。

「スゴイヤッター! それでは見てみましょう! どうですか、はじける若さと汗です! カラテが伝わってきますね……アッ、ちょうどこちらに、カッコイイな若者が! お名前はー?」

「ド……ドーモ。タイセン・シトシです」

「タイセン=サン! ドーモ! NSTVシズカガオカ通信局、レポーターのケオリ・タママです! スゴイですねー!」

「ああ、ええと……日々鍛錬というか……」

「レッツ・ドラゴン! 日々の健康維持! 古今東西、運気上昇にもドラゴンのモチーフは使われているんでしたっけ?」

「そ、そうだと思います」

「皆さん、そうなんだそうです!」ケオリが画面に向かって驚いて見せた。「レッツ・運気! 健康増進に、カラテがもたらす効果は凄いんですって! それを踏まえて、今回、ドラゴン・ドージョーでは、IRC通信を利用したデジタル・インストラクションが始まったそうです。ネオサイタマに居る貴方でも、初歩のカラテ・エクササイズを行う事が可能になりますよ! レッツ・ドラゴン!」

「ネットワーク通信カラテ……?」フジキドは訝しんだ。「そのような事が可能なのか?」

「画面でカタを見ながら練習するんだろうなあ」おやじが推測した。「まあ、身体を動かす役には立つんじゃないですか。日々の健康がドラゴン・ドージョーなんでしょう?」

「健康……いや……可能なのかというのは、そういう意味で言ったのではなく……」フジキドは説明しようとして我に返った。「今のドージョー分館はどこに?」

「ああ。メインストリートの……あっちにまっすぐ行けば辿り着きますよ」

「この店のモチはうまい。また来ます」

 フジキドは会話を切り上げ、足早にドージョー分館に向かった。

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