【ヴェルヴェット・ソニック】#9
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「ふうん。シルバーキーね」サロウは髪をいじった。彼は全周囲にニンジャ第六感の触手を伸ばし、感覚を掴もうとした。頭上の黄金立方体には奇妙な傘がかかっているように感じられる。風と海のにおい、肌に触れる砂の感触から、彼はこの世界の定義を察した。ここはコトダマ空間でも物理世界でもない。
「ここはあンたの庭で……だけど、あンただけの庭じゃない。フフッ」サロウは警戒して数歩下がり、片膝をついて、足元の砂を掬った。微かな01ノイズがこぼれた。「妙だぜ、妙だ。ここは半分、物理の土地と重なってやがるよな。おかしな事してるんだな。変な感じだ」
「ああ。妙な事してる自覚はある」シルバーキーは頷いた。そして促した。「もう少し教えてやってもいいが、まずはアイサツを返したらどうだ。サロウ=サン」「その通り。名前が見えてるなら、省略したってイイじゃないか」「……」「しょうがねえ。俺は、サロウだ」サロウは笑い、アイサツを返した。「ここ、地球のどこだよ?」「アラスカだ。軸足はな」
「ネオサイタマでもないワケね。便利なのか何なのか……いや……」サロウは目を細めてシルバーキーを見定めた。「……あンた、事情があるンだな。成る程、お誂え向きかもしれない。今の俺みたいに、物理肉体がどうにかなっちまって……フフフ……急拵えした……」「察しがいいな。そんな所だ」
「ウケる。これも巡り合わせッてやつかな」サロウはシルバーキーを指差した。「あンた、俺と同じタイプだ。ニューロン全て、細胞全てが今、ビンビンに感じてるぜ。ユメミル・ジツ使いだよな。だろ」「ああ、そうだ」「最ッ高だな! あンたを喰らっちまえば、肉体無しでうまくやる方法も学べるッて事だろ?」
シルバーキーは銀のローブを翻し、両手をひろげて言った。「……じゃあ、どうする?」「こう、だよ!」サロウは叫んだ。色彩の渦が生じ、シルバーキーを内側から破裂させた。飛び散りながら、シルバーキーだった姿は微笑を残し、銀の砂に、そして輝く煙に、01のノイズに変わって、消えた。それが宣戦布告の合図だった!
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