【サイレント・ナイト・プロトコル】#5
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「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。はじめまして。プロフェッサー・オブ・ハンザイです」
サナジマの、否、プロフェッサー・オブ・ハンザイのコーデュロイのスーツは、マスラダの眼の前で、ぽろぽろと繊維を剥離させ、その内に秘められた紫のスーツをあらわにした。年齢の判然としない男だった。灰色の瞳には諧謔と哀れみと自嘲、そして共感性の完全欠落のニュアンスが輝いていた。
「ドーモ。プロフェッサー・オブ・ハンザイ=サン」マスラダはアイサツに応じた。「……ニンジャスレイヤーです」コトダマ領域に01ノイズがはらはらと降る。透けて見える外界でも、白く冷たい粒が暮色の空から降りてきている。プロフェッサーは言った。「雪だ。灰ではない……」
外の世界は緩慢だ。「仇」のサーチライトを照らすヘリのローターはゆっくりと回転し、ニンジャスレイヤーのスリケンを受けて頭部破砕したクローンヤクザは、いまだ後ろへ倒れ込む最中だ。「このテンポラリーVPNは静止の世界ではないが、圧縮された時間を過ごす事ができる」プロフェッサーは言った。
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