ハロウィン課題〆切探偵ザザ
ザザとは! ダイヤモンドの義眼を持つ超常探偵である! 彼は様々な期日を察知して現れ、人類に害をなす超次元存在を退治するのだ。放て! 義眼光線!
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「ハッピーハロウィン!」「ハッピー! ハッピー!」「ハッピーハロウインダヨ!」通りの喧騒がここまで届いてくる。ハロウインナイトは何日か前に終わったが、俺の街ではまだまだ続いている。そして俺の苦闘もまだまだ続いている。〆切はブッちぎっちまってるってのに。
「ハロー! カラルド!」ゲーミング・チャットにホットな美女のアイコンがPOPした。「元気してますか? ところで原稿の進みはどうですか」俺がPCの電源を切る滑らかかつ素早い動作ときたら、おそらく音速レベルだった事だろう。この編集野郎は小賢しくHOT美女アイコンで原稿を催促しやがる。「畜生。俺だって頑張りたいんだよ」俺は缶ビールを缶のまま飲んだ。
アルコールが少し回り、俺は陽気になって来た。「ハッピー、ハッピー、ハッピーハロウインと来たぜ。えへへ」PCの電源も落としてしまったから、もう原稿できない。再起動とかに時間がかかるからテンションが続かないんだ。そういうものだろ? 俺は気分を変えるためにコートを着て街に出た。
だいたい、ゲーミング・チャットという手口が卑怯だ。仕事相手を一度でもゲームに誘うと、こうなる。あそこで催促してくることがなければ、俺はたぶんあの2分後ぐらいに仕事にいよいよ取り掛かることになっていたわけだ。それを……恐怖からPCを落としてしまったわけだから、俺は一種の正当防衛的だ。そういう考えを振り払う。光と音が出迎えた。
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