【ビースト・オブ・マッポーカリプス後編】#9
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セトは残像を伴うチョップを構え、なお警戒した。サツバツナイトは確かに気絶している。だがドラゴン・ニンジャクラン自家薬籠中のチャドー呼吸を継続している以上、侮りはすまい。ニンジャの極限戦闘において、シニフリ・ジツの類いが勝負を覆した記録は枚挙のいとまがない。
ボ。ボッ。ボボッ。空気を食う残像音を放つチョップを微かに動かす。「スウーッ。ハアーッ……!」俯いたジュー・ジツ姿勢のサツバツナイトが、ぴくりと動いた。セトは目を見開いた。反射だ。空気の震えにサツバツナイトの肉体が反射したに過ぎない。だが、死後硬直ですらニンジャは敵を殺すものだ。
強い恨みと共に処刑されたニンジャが、首を刎ねられながら、刑吏をサバ折りで殺した事件。神前一騎打ちに破れたスモトリニンジャがモルグから起き上がり、勝利の宴の最中であった仇を尋ね、殺したのち、うつ伏せに倒れ心停止した事件。即ち、爆発四散の瞬間まで油断は禁物。これをカイシャクという。
『01001……』『01001……001』際限なくホロ映像が立ち上がっては、不明瞭なノイズを投げかける。それら全て、セトがリソースを傾けて対処すべき問題だ。急がねばならない。しかし眼前のサツバツナイトは有象無象のニンジャではない。拳を交えればわかる事だ。ガーディアン全てを打ち破ってきた男が……いまだ立っているのだ!
眼前、サツバツナイトの滴る血が床に落ちた。血は足の間で橙色の火を発した。セトはこれを重く見た。これはリアルニンジャ「ダイ・ニンジャ」としての、神話的な力の片鱗だ。疑心暗鬼を裏付ける、嫌な兆しだ。セトはチョップを引き戻し、より攻守に長ける心臓摘出の突きに構えを変えた。
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