新春特別企画【ゴールデン・ライト、ゴールデン・ウィル】
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このエピソードは2021年新春特別企画として、性別逆転バースを舞台にしたエピソードです。性別逆転バースに関しては、過去に「ラスト・ボーイ・スタンディング」が掲載されました。
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これまでのあらすじ:
大学生のマスラダ・サキは、フジキド・ユミの探偵事務所でアルバイトする弁護士志望の青春真っ盛り。しかし夜よ聞くがいい。彼女の正体は、育ての親であるタキおばさん一家を殺めた邪悪なニンジャを探し求める復讐の戦士……「ニンジャスレイヤー」なのだ!
新年カウントダウン・イベントを前に賑わうネオサイタマ。マルノウチ・スゴイタカイビルに、2021個の協賛企業を象徴する「2021」のネオン数字が輝き、めでたい金色のスモークが噴き出して雲となる……奥ゆかしく、なおかつ希望に溢れたイベントだ。しかしその裏で恐るべき陰謀が進行していた。
年末のネオサイタマを震え上がらせる代議士連続殺人事件を調査していたマスラダ・サキは、遂にその犯人がソウカイ・シンジケートのニンジャ「フロストバイト」である事を突き止めた。犯行現場に残された豚足のDNAを鑑定した結果、それがソウカイ・シンジケート経営の豚足工場のものと判明したのだ。
そして年の瀬。マルノウチ・スゴイタカイビルを取り囲んで組み上げられたイベント設営用の鉄骨上に、フロストバイトを追い詰めたマスラダであったが……。
◆◆◆
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの投げたスリケンをフロストバイトのスリケンが迎え撃った。フロストバイトのスリケンは丸鋸めいて刃が多く、しかも永久凍土じみた硬度の氷で造られている。彼女のスリケンはニンジャスレイヤーのスリケンを容易く破砕し、そのままニンジャスレイヤーの心臓に至る!
「グワーッ!」鉄骨上で仰け反るニンジャスレイヤーに、フロストバイトが勝ち誇った。「ニンジャスレイヤー=サン! データ通りだね。お前は射撃戦に弱い! アタシのコリ・スリケンはお前のヌルいスリケンに完全優位。しかもこの鉄骨上じゃ、近接攻撃も無理というワケ! 逝ッちまいなァー!」
「く……」踏み留まろうとする彼女をスリケンが襲う!「イヤーッ!」「グワーッ!」鉄骨から足を滑らせ、掴み、ぶら下がる。フロストバイトは目を細めた。「アタシが情けなく逃走したとタカをくくったか? この場所は完全なるフーリンカザン……お前は誘い込まれたのさ」さらなるコリ・スリケン生成!
「死にな。ラオモト=サンはお前を許しはしない……イヤーッ!」スリケンがニンジャスレイヤーの手の甲を掠めた。ニンジャスレイヤーは……落下した。下へ。下へ。
フロストバイトは遥か下のストリートへ落下してゆくニンジャスレイヤーを見下ろし、親指で首をかき切る仕草をした。「大人しくしていれば新年まで生き延びられただろうにね。いや……そうでもないか? ここからは "祭り" さ。のぼせあがった市民連中が何人生き残れるか、楽しみだ」
……ニンジャスレイヤーは、落ちる、落ちる、落ちる……。
「……!……!」彼女のニューロンにやがて邪悪な赤黒の存在が起き上がり、全身の血が激しく駆け巡った。(((マスラダ! バカ! なんたるブザマか。わらわに身体を渡せば、あやつ如きサンシタはただ一度の切り結びで縊り殺してやったわ)))
「うるさい……ナラク……!」咄嗟の仰け反りで心臓は逸らしていた。だがスゴイタカイビルは実際高い。その位置エネルギーを受ければ、ニンジャといえども……!「クソッ! 奴らの陰謀を掴んだのに!」彼女の胸を満たしたのは恐怖ではなく、悔しさだった。「あたしのカラテが情けないせいで……!」
(((グググ……わかっておるではないか。ゆえに、わらわが))) 「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは空中で身体を捻じり、キリモミ回転させた。受け身だ。どんな高さから落下しようと、タイミングよく回転着地すればダメージはゼロ……!(((言うは易く行うは難しじゃ。まったく仕方のない小娘よの)))
「グウッ!」コリ・スリケンの裂傷と凍傷が彼女の意識を遠のかせる。(((ほれ見たことか。よいぞ……))) ナラクが耳まで裂けるような笑顔を浮かべるビジョンがニューロンに閃いた。ナラクはマスラダを後ろから抱きとめ……意識をジャックした。「イヤーッ!」
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