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S3第9話【タイラント・オブ・マッポーカリプス:前編】分割版 #8

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 クセツというニンジャは、ネザーキョウのセンシ達の頂点に立つアケチ・シテンノの一人であって、その真の名を、ランマル・ニンジャといった。

 戦国時代において、ランマル・ニンジャ、すなわち森蘭丸は、戦国武将である織田信長に心酔した小姓であり、油断ならぬ斥候でもあった。驚くべきことに、その涼やかな美少年は実際、リアルニンジャとしての強大な力を秘めてもいたのである。

 織田信長が決戦兵器・安土城を起動させた際、蘭丸は黒衣の美少年によって構成された部隊を率い、琵琶湖湖畔に生い茂る葦の狭間で待機していた。無敵の破壊巨人たる安土城とは別角度よりキョート城を攻め上げ、拠点を築き、撹乱分子として街に散って、征服を完遂する役目である。

 しかし、その命令がくだされる事は永遠になかった。主君織田信長は逆臣明智光秀と共に本能寺から消え去った。そして……人知れず、ネザーの地にて爆発四散を遂げたのだ。かねてより織田と深く契る関係にあった蘭丸は、現世にいながら本能的に主君の滅びを感じ取り、狂おしいほどのセプク衝動に襲われた。

 だが蘭丸は死を選ばなかった。本能寺の焼け跡を慟哭と共に探し回った彼は、ネザーの痕跡を確信し、そこで為された事の一端を知った。彼は禁断のジツの数々の封印を解き、以て、ネザーの探索に赴いた。二度とは現世に戻れぬであろう旅へ。不倶戴天の裏切者、明智光秀をその手で殺すために。

 広大無辺なるネザーの地で、蘭丸は明智光秀の足跡を追った。オニやヘグイや磁気嵐に襲われ、何度と無く滅びと消失の危機に晒されながら、彼は生にしがみついた。過酷な環境下、カトン・ジツは禍々しきネザーカトンに染め上げられ、邪悪の大気に備えたボロボロの包帯も手放せぬものとなっていった。

 永遠の責め苦の如き旅の果て、ランマル・ニンジャはついに憎きタイクーンを発見する。四本腕の異形へ変わり果ててはいたものの、ニンジャアトモスフィアは誤魔化せぬ。明智光秀に相違無し。ついに復讐の時来たれり。蘭丸は一団の前に立ちはだかり、自らの正体を明かして一騎打ちを挑む筈であった。

「父上! あれを! お気をつけなされませ!」何たる事か。よりにもよって、黒い溶岩石の斜面を駆け下るランマルをそのとき指差したのは、タイクーンの肩に抱かれし、幼きジョウゴ親王であったのだ。ランマルは駆け下りながらその尊顔を目の当たりにし、滑り果てながら跪き、そのままドゲザに至った。

 何故ならば、幼きジョウゴ親王の顔はまぎれもなく、織田信長の生き写し。即ちオダ・ニンジャの生まれ変わりとしか考えられぬ風貌であったのだ。伏せたランマルの両目には涙が溢れた。顔を上げるなり、彼が名乗った名は「クセツ」であった。タイクーンの家臣となるべく旅をしてきた。そう言った。

 そのときタイクーンがクセツの正体に気づいたか、否か。定かではない。もとより明智光秀と蘭丸には殆ど面識もなかった。だが、タイクーンはクセツの臣従をその場で認め、ネザー征服の旅路の道連れとした。

 旅の中、クセツはジョウゴの出自を解き明かそうと試みるも、タイクーンは当然の事、黙して語らず。そしてまた、仮にタイクーンがオダの最期について何かを語ったとて、クセツはそれを信じはしなかっただろう。オダが天下統一も果たせぬまま、満足して果てたなど。

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