【アイアン・アトラス・プレジデント!】#5
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「なんかヨロシサン!」「ヨロシ・アトラスをよろしくお願いします」「我々の新しいCEOは完全にイノベーション!」「先代CEO失踪の悲劇を乗り越え、最大のリスペクトを捧げて、新しい風を吹き込む人事が行われます」「十人十色! 十人十色!」
けたたましいプロモーション音声と共に、表通りのビルに取り付けられた巨大なモニタパネルに、「ヨロシ・アトラス」のバストショットとヨロシサン・インターナショナルの企業ロゴが繰り返し映し出される。
心臓を貫くようなプロモーション音声を背中で浴びながら、ワカタケはネオン光の届かぬ裏ストリートに踏み入った。座り込んだ路上生活者が油断ならぬ目つきでワカタケを見上げた。ワカタケは舌打ちし、足を早めた。
「オニイサン、ここ、ジゴクの一丁目だよ。寄ってく?」
さらなるヨコチョへの入り口で、スカムなチアリーダー・コスチュームを着たバニーバンパイアオイランが秋波を送った。ワカタケは無視した。
(私は……一体どこで……どこで間違えた?)
ワカタケはケモ缶を踏みつけてバランスをくずし、壁を這う配管パイプに手をついた。熱い蒸気が噴出し、顔にかかった。
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