ペイルホース・サーガ第1話【ペイルホース死す!】

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ノート

【ペイルホース死す!】#1

1:侵犯者は五人

曇天の下、地平めがけ幾重にも折り重なる丘の表面を絨毯のように覆う黒い麦の穂は、この穀物プランテーション惑星の主要な輸出物であり、双子王の富の源である。では、まっすぐに伸びる舗装道路の脇に等間隔で突き立てられている棒状の物は? 柱? 道路灯? アンテナであろうか? 否。

近く寄って見れば、それがなにか、すぐにわかろう。樹木を削って作られた長い杭……串……礫……のようなものだ。天

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【ペイルホース死す!】#2

【承前】

1:夢と諍い

丘陵地帯には既に夜が訪れ、キャプテン・デスとその一行は、穀倉地帯を離れた針葉樹林の付近に寝床を拵えた。キャプテン・デスのテントは闇に溶ける。収納時は握り拳よりも小さいが、ひらけば十二分に快適なテントになる。テントの頂点部にはしもべの甲虫がとまり、寝ずの歩哨となる。他の者は外だ。

テントの中で、少年、即ちキャプテン・デスは、味気ないが栄養バランスの取れた糧食を苦心して食

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【ペイルホース死す!】#3

【承前】

1:腕輪

最初に彼女が認識したのは、頭上すぐのところにある天井の光だった。不思議な色彩の照明だが、あまり長く見ていると、おかしくなりそうだった。それから壁がわかった。彼女がいる場所はそう広くない。彼女は壁に触れた。壁の向こうで何かが動いている。人だ。この壁は磨ガラスのようなものだ。

磨ガラスの外で、ぼやけた人影同士が、なにか言葉をかわしていた。おそらく彼女に関することだ。次に彼女が

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【ペイルホース死す!】#4

【承前】

1:陶器と肉

「なんと精強な我が軍……」〈東の白夜〉は感激に震えた。「貴様にも見えておろう。見えぬフリをしていようとも」彼はホットライン接続された通話機に向かって勝ち誇った。相手は無論〈西の夕闇〉である。「夜な夜な胡乱な偽科学にうつつを抜かすうらなりの錬金術かぶれには到底編成しえぬ戦力だ!」

勇ましき彼の天蓋には無数の武器が飾られ、気まぐれに刺し殺された護衛は、大理石の柱に槍ごと磔

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【ペイルホース死す!】#5

【承前】

1:鳥人ミリリイオーキ

鳥人ミリリイオーキは宇宙のエテルを捉えて羽ばたく。彼のその巨大な翼が、〈鳥人〉なる異名の由来だ。乗り来た舟が徐々に遠ざかり、逆光のシルエットと化す。大気圏上で自らの位置を細かく調整しながら、遥か下で戦闘する者達の座標を修正し続ける。そして次の雷撃を発するまでに要する時間を読む。

「やるなあ。避けるか、ふつう? 自信失くすよ」ミリリイオーキは蝸牛じみて異様な

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【ペイルホース死す!】#6

【承前】

1:昇降機

その名に違わず、〈火の諍い女〉の髪は燃えるように赤い。その双眸は対照的に深く青く、そして冷たく、キャプテン・デスを見た。美しかった。だが少年は死を思った。そののち、吹き飛ばされた。何かが真横から飛来し、脇腹にぶつかったのだ。磨かれた壁に背中から衝突し、少年は咳込んだ。

一瞬遅れて、キャプテン・デスは事態を呑み込んだ。脇腹にぶつかったのは逆向きに飛んできた槍の柄だ。投げ

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【ペイルホース死す!】#7(第1話完結)

【承前】

1:弟の名

「GRRRR!」人の兵がなだれ込んできた。キャプテン・デスは振り向きざまに最初の一人を斬り殺し、次の一人を蹴って三人目とともに壁に押し付け、二挺拳銃で撃ち殺した。「ぼくは姉さんを助けるためにここまで来た」キャプテン・デスはイルダを見た。彼女の手を取り、立たせた。「……どうしたの」

「わからないの」イルダは言った。「だって10年ぶりなのよ。私には弟がいた。たった一人の肉親

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