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S3第6話【エスケープ・フロム・ホンノウジ】分割版 #7

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「ハァ……クソッ」瞑想区を進みながら、アシュリーはカメラを構え、カラテの都に突如現れた静謐の地を収め始めた。「何やってる」ジェフが咎めた。アシュリーは睨み返す。「アルカナムの任務を完遂する」彼女は苦しげだった。サイバネティクスといえど無視できぬ傷だ。「博士はもういないんだから」

「無理すんな。首から下、全部機械じゃないんだろ」「黙ってろ。戦闘が始まったら撮影どころじゃなくなるんだ」「俺が替わるか? お前のほうが火力がある。……ですよね、隊長?」「磁気テープを私に預けろ」クレイグはアシュリーに命じた。アシュリーは食い下がった。「それは共同契約の範疇外だろう」

 アシュリーと故・ヒロ博士はアルカナム社の所属、クレイグ以下の他のメンバーは皆、ヌーテック社だ。ゆえに両者の間には緊張感の薄皮があった。UCAは一枚岩ではない。「死地だ。データをいかにして持ち帰るか。それが全てだ。企業間の諍いはナンセンスだと思わんのか」「この程度のダメージでアタシがくたばると思ってるのか?」アシュリーは睨んだ。「譲れないものはある!」

「こんなところでくだらねえ話を!」ジェフが憤慨した。「お前、足手まといに……」「よせ!」トムがジェフを制した。クレイグは判断した。「わかった。構わん。貴様が死んだとしても、俺ならば回収できる」「オーケイ」「どのみち、死なせはせん。これ以上は」クレイグは言った。「俺は貴様らを生かして帰す。今度こそ」

 カネト達は互いを見、そしてクレイグを見た。クレイグは頷き、会話を切り上げた。「……ボンズども。どこから湧いた」ジェフが舌打ちし、銃口を向けた。道の左右、墳墓めいた隆起の上にボンズ達が佇み、ファイアストーム隊をじっと目で追っている。無言のうちに。

「オイ! ジロジロ見るな。ブッ殺されたいか」「よすんだ。奴らは戦闘員ではない」トムがジェフの銃口を手で押さえ、下に降ろさせた。「ハンニャー……ハンニャー……」ボンズ達は口々にチャントを唱えていた。囁きが重なり、小波めいて瞑想区に響く。「ハンニャー……」ブレインが同調した。

 クレイグはカネトに尋ねた。「これは」「大丈夫だ。ただのシンピテキだ。ここは非戦地域だ。奴らはボンズだし……」カネトは呻いた。「い……いざとなったら……俺だって腹は決まってる。クセツにチクリに行くとか、そういうナメた真似をするなら……おかしな動きを見せたら、いつでもやってやる」

「平気ですよ」ブレインは静かに言った。一同は振り返った。彼は合掌し、静かな目で部隊を見返した。「僕はこちらがわに来たんだ。だから、わかりあえます。見えますよ。嗚呼……金の、四角い太陽です」「やめろ」ジェフはブレインを掴み、引っ張った。ブレインは唱えた。「ハンニャー、ハンニャー」

 ジェフは逆上した。「ブレイン=サン! よせ! ふざけるのも大概に……」「ハ……ハンニャアアア!」ブレインは不意に目を見開き、苦しみ始めた。まるで、ジゴクの甘露な毒の泉を、それと知らず半ばまで飲み干した旅人のようだった。「ハンニャアアア! ヤアアア! 嗚呼、ダメ! ダメだ!」「どうした!」

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