【ステップス・オン・ザ・グリッチ】#4
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「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。パイドパイパーです」パイドパイパーは困惑をカラテと邪悪な殺意で塗り潰し、アイサツに応じた。アイサツは神聖不可侵のイクサの礼儀であり、オジギ最中の相手に攻撃をくわえる事は厳かに禁じられている。古事記にも書かれている掟であった。
ゆえに彼らは名乗りあい、互いの名をニューロンに刻んだ。殺すべき相手として。そしてオジギ姿勢から同時に頭をあげ、カラテを構えたとき、首なし死体の転がるネオサイタマの雑居ビルの谷間の路地裏は、無慈悲なる殺戮の舞台と化したのである!「イヤーッ!」「イヤーッ!」二者は同時に動いた!
パイドパイパーの得物は妖しき笛そのものであった。鋼よりも硬くしなやかなバイオバンブーを加工した笛は、ニンジャの手に携えられれば、汚職治安警察の警棒の千倍恐ろしく致命的な武器となる。さらに、生じるリーチ差は絶望的ですらあった!「グワーッ!」苦痛の呻きが壁面に反響した!
「ア、ア、アイエエエ」無力な傍観者たるイサムラは、逃走する気力もなく、失禁をこらえながら、この切り結びを視界に焼き付けた。ナムサン。互いに交差し、振り返る。パイドパイパーは胸元を押さえていた。血しぶきが噴き出し、アスファルトへ伝う!「バカナ……!」
ニンジャスレイヤーは指先を鈎めいて曲げ、凄まじい力を込めている。恐るべき速度で振りぬかれた素手の一撃が、パイドパイパーの笛の打撃の速度を上回り、かいくぐり、装束ごと胸をえぐったのである。だが、それでも致命傷ではなかった。パイドパイパーの油断ならぬカラテゆえにだ。
「なかなかできるか……!」パイドパイパーは胸筋に力を込め、筋繊維を引き締めて瞬間的に止血した。「貴様……ニンジャスレイヤーとやら……その名は幾度か耳にした事がある。ネオサイタマの始末屋と……!」その目が爛々と輝いた。「なぜ俺の前に現れた!」「……貴様が、理由を知ろうとしないからだ」
ニンジャスレイヤーのジゴクめいた眼光は、パイドパイパーの凝視を真っ向から迎え撃った。「おれを呼んだのは、貴様がこれまで弄び、壊してきた連中だ」「愚かな! 取るに足らぬ弱者には何をしてもよいのだ! お節介な憐憫が理由か? そんなものは……」「だから、おれが貴様を殺す」
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