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S3第9話【タイラント・オブ・マッポーカリプス:前編】分割版 #9

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「ハンニャアアアアア!」オオカゲは鎌首を巡らせ、天守閣を睨んだ。観衆たちも怪訝そうにした。銅鑼は彼らの認識にない音だった。タイクーンすらも、その音をコンマ数秒訝しんだ。ゆえにニンジャスレイヤーが先手を取って仕掛ける事となった。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは赤黒の風となった!

 前傾姿勢で飛び出したニンジャスレイヤーに、タイクーンはヤリ・オブ・ウォーロードを繰り出した。信じ難いリーチで伸び来たるヤリは、手の中でヤリの柄を滑らせ、さらなる長さを稼ぐワザによる!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはかろうじて回転跳躍回避! そしてヌンチャクを打つ!

 燃える軌道を描いたヌンチャクはヤリの柄に衝突! その反動で高く跳び上がるニンジャスレイヤー! しかし! タイクーンの上腕が両手で大上段に構えるヘシキリブレードが、過たず繰り出されたのだ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーのニューロンが急加速し、瞬間的に流れる主観時間が鈍化!

 マップタツ! ……否! ヘシキリブレードが断ち切ったのは、マフラーめいて燃える布であった。ひとたびニンジャスレイヤー自身に見紛うような人型をとった黒炎は爆ぜて落ち、ニンジャスレイヤーはさらに高い位置で身体を捻っていた。「……イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは高速回転! そして落下!

 回転の中から新たなマフラー布が燃えながら生み出される! ニンジャスレイヤーは落ちながら凄まじいヌンチャクの連打で襲いかかった!「イイイイヤアアーッ!」タイクーンの目が光る!「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」無数のヌンチャク打を、タイクーンは狙い済ませたヘシキリブレード斬撃で返す!

「イイイヤアアーッ!」ニンジャスレイヤーは空中で打ち続ける! そして……回転踵落としがタイクーンの延髄に振り下ろされた!「イヤーッ!」KRAAASH! ……ナムサン! 踵落としは延髄を僅かに逸れ、胴鎧で守られた箇所で止まった。一瞬後、「エイッ!」キアイがニンジャスレイヤーを吹き飛ばした!

 受け身をとって回転着地したニンジャスレイヤーに休む間与えず、タイクーンはヤリをしごいて追撃にかかる!「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」長リーチ武器が容赦なくニンジャスレイヤーを襲い、退路を塞ぐ。ニンジャスレイヤーは円を描くように側転を繰り返し、必死にこれを躱す!

「イヤーッ!」何度目の刺突であったろうか? ニンジャスレイヤーはついに半身逸しでヤリを回避した。体が残っている。ニンジャスレイヤーの目が燃え、後ろ手に振り回されるヌンチャクは火炎車めいて炎を強めた。(((ヌウッ! これは!))) ナラクが呻き、ニューロンが燃えた。タイクーンの上腕に、殺気!

 ナムサン……下腕にてヤリ攻撃を嵐のように繰り出す一方、上腕においては大掛かりなワザが準備されていた。タイクーンは上腕右手、片手でヘシキリブレードを掲げていた。そして上腕左手で刀身に触れていた。左手を刃に添わせて動かすと……不穏なヘシキリブレードの刀身に、黒紫色のネザーのカラテがエンハンスされた。

「ヒサツ・ワザ!」タイクーンが叫んだ。「キキョウ・サンダンウチ!」ニンジャスレイヤーにナラクが呼応し、体内の黒炎が右腕に流れ込んだ。「イヤーッ!」限界を超えた速度で、ヌンチャクを繰り出した。……「グワーッ!」ニンジャスレイヤーの右の鎖骨を、ヘシキリブレードが貫通していた。

「ニンジャスレイヤー=サン!」コトブキが悲鳴をあげた。ニンジャスレイヤーは……ナ、ナムサン……! 串刺し状態で持ち上げられ、もがいている! 一瞬のうちに何が起こったのか? 読者の皆さんに平安時代のリアルニンジャに匹敵するカラテの持ち主がおられれば、その全てを解説していただきたい。

「なんてこッた」フィルギアはサングラスを外し、目を擦った。彼のニンジャ動体視力が捉えたのは、まずは神速の突き。ニンジャスレイヤーはヌンチャクで弾き逸らす事に成功した。だが次の瞬間、刀身がネザーの邪気を放出。爆発の反動でヌンチャクは弾かれ、刃は引き戻され、そして、本命の突き!

 突き、突きを引き戻しさらに相手を爆殺する邪気放出、そしてその爆発の反動をすら凌駕する最後の突き……以て三連の攻撃が一瞬にして為されたのである!「アッパレ!」タイクーンは凄まじい笑みを浮かべ、刃に突き刺さったニンジャスレイヤーを睨んだ。「我がヒサツ・ワザにて死なぬとは!」

 観衆がどよめいた。「タイクーン!」「偉大なるタイクーン!」「アニキ……アニキ、アニキーッ!」ザックが叫んだ。「アニキは、アニキ負けねえんだよォーッ!」「薄汚いコワッパ! 首を洗っておれ」観衆の近衛ニンジャの一人がザックを指差し、嘲笑った。「此奴が死ねば貴様らは打首ゴクモン也!」

「畜生ーッ!」ザックは飛び出そうとした。それをフィルギアが掴み、押し留めた。「ダメだ。死ぬぜ。それに、決闘を侮辱するンじゃない」「……!」ザックは涙を飲んで従った。フィルギアはアナイアレイターを見た。アナイアレイターは金色の目の輝きを深め、カラテを練り上げ続けていた。

 決して口数の少なくないアナイアレイターが終始無言。身にまとう襤褸はざわめき、その巨体は静かに震動している。最悪の事態を迎える時、ヤバレカバレの攻撃に出る為であり……もう一つ。彼の鋭敏なニンジャ第六感は別の可能性にも備えていた。コトブキも同様であった。奇妙な周波数が聞こえるのだ。

 西の空の花火めいた光。鳴らされた銅鑼。まるで凶兆めいていた。その詳細は二人にもわからなかった。だが、何かが起ころうとしていた……。「エイッ!」「アバーッ!?」タイクーンはいきなり観衆にヤリを繰り出し、侮辱近衛ゲニンの顔面を貫いてテウチにすると、そのままヤリを振って死体を払った。

 だが状況は何の改善もしない。ヘシキリブレードでニンジャスレイヤーの身体を持ち上げたまま、タイクーンはヤリを構え直した。その穂先が向かうのは、無論ニンジャスレイヤー。このままカイシャクである。「アニキ……アニキ」ザックが嗚咽する。ニンジャスレイヤーはその手でカタナを掴んでいる。

 タイクーンはしかし、すぐにはヤリを繰り出さなかった。いたぶっているのではない。極度集中し、狙いを絞っているのだ。なぜならニンジャスレイヤーはまだ生きており、意識もある。無駄にもがかぬ状態は、かえって警戒を要する。「スウーッ……フウーッ」息吹。ニンジャスレイヤーの目が明滅する。

 ニンジャスレイヤーは呼吸を深める。それは内なるナラクと己との繋がりを深め、カラテの超自然循環を加速させる呼吸である。黒炎が身体を、筋肉を、ニューロンをめぐり、目が赤黒の火を吹き、流れる血は燃え上がり、装束に呑み込まれてゆく。手が触れた箇所のカタナが熱で真っ赤に染まる。

 刀身を伝わる震動を通して、タイクーンはニンジャスレイヤーの鼓動を、そして呼吸を感じている。チャドー呼吸、否、異質な何かだ。高まるカラテを感じる。「刃、溶かそうてか」タイクーンは低く呟く。ヘシキリブレードは幾度もネザーで鍛え直されたカタナである。しかし……油断はならぬ。

「スウーッ……フウーッ……!」ニンジャスレイヤーは呼吸を深める。タイクーンは機を見定める……焦るべからず……だが待ち続けるもならぬ……今だ! タイクーンの下右腕に縄めいた筋肉が盛り上がった!「イヤーッ!」カイシャクのヤリが繰り出された!

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