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【ヨロシサン・エクスプレス】#4

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『お客様トラブルが発生したため、当ヨロシンカンセンはウォータートン・レイク付近で予定外の停車を行います。問題は一切ありません。音楽や食事等ご自由にお楽しみください。オタノシミドスエ!』美しいメロディとマイコ音声がスピーカーから流れ、ヨロシンカンセンは徐々に速度を落としていった。

 S食堂車に隣接するSS客室車両では、ヨロシサン車掌たちとの事項確認を済ませたサガサマとコトブキが入室し、今まさに検証に入ろうとしていた。「皆さん、ウカツにモノに触れないようにお願いします」コトブキは車掌に言い、虫眼鏡を手にして、用心深く床のカーペットを確かめ始めた。

「……虫眼鏡?」サガサマが見咎めた。「いいえ」コトブキは虫眼鏡を懐にしまい、オイランドロイドの瞳孔を駆動させて、微細な確認を始めた。サガサマは咳払いした。「あらためていきましょう。いやはや……」「大丈夫なんだろうね」車掌は念を押した。「我々は責任は取れませんからね? いいね?」

「弊社チカハ社はサイバネティクスのリーディングカンパニーですが……」サガサマは革手袋を装着しながら答える。「同時に、内偵調査ですとか、労働争議解決の為の実力行使ですとか、そういった問題解決のサービスも提供しております。社の創業時はそちらがメインでして……現在も、脈々と」

「なんですって?」「そして私はニンジャですから。ははは……お任せを」会話を打ち切るように、サガサマは床の死体に屈み込んだ。キュイイイ。彼の目の奥からも、コトブキのそれに似た微細駆動音が聴こえた。車掌は気づかなかったが、コトブキは、やはり、という顔をした。感じていたのだ。

「亡くなっているのは非ニンジャの方ですね。惨たらしいものだ……」サガサマは心を痛める。死体の頭は花瓶めいて砕け、床に血と脳漿の染みができている。彼は革手袋で死体の上着に触れていき、やがて金属製の社員バッヂを見つけ出した。「ジム・テイラー=サン。正規ヨロシ社員……」

 尋ねるように車掌を振り返った。車掌は首を振った。「し、知りませんよ。私はね、本当に、責任を持って安全に乗客を目的地までお連れする……車掌ですよ! ヨロシサンはメガコーポなんだ。社員一人ひとりのプロフィールなんてわかりませんよ、彼らの任務まで知るものですか」「ニンジャの方は……コトブキ=サン? どうですか?」「はい」

 少し離れた地点の爆発四散痕にしゃがみ込んでいたコトブキが、金属片を差し出した。「さすがです」サガサマは受け取る。やはり社員プレート。スリケンマーク付き。ニンジャ社員用である。「ケリグマケラ=サン……失礼ながら弊社のニンジャ・データベースで検索をば……」こめかみを押さえる。

(どうですか?)コトブキが車掌を見ながらサガサマに囁いた。サガサマは弱々しく笑った。(この調子で、少し時間を稼ぎましょう……)(でも、サガサマ=サンは慣れているように見えます。このまま解決しちゃっても、いいんですよ)(買いかぶらないように。私はスター社員ではない。しがないです)

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