【タイラント・オブ・マッポーカリプス:後編】分割版 #7
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DOOOOM! 轟音が空を駆け抜けた。DOOOM! DOOOOM! 轟音は波紋を伴った。空に走る巨大な光の帯が像を乱す。「ハンニャアアアアア! ハンニャアアアアア!」オオカゲが吼えた。異常を警告するように。ニンジャスレイヤーとタイクーンはその叫びを号砲めいて、同時に龍の背の鱗を蹴った!「「イヤーッ!」」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは黒炎帯びしヌンチャクで、タイクーンの激しいカタナの打ち込みを弾き返す!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ヌンチャクの鎖を絡めて斬撃を封じ、懐へ飛び込み、短打を見舞う!「ヌウッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
よろめくタイクーンに、ニンジャスレイヤーは更なる立て続け連打を見舞う。タイクーンは左下腕を失い、今や三本。バランスを崩し、ヤリ・オブ・ウォーロードとヘシキリブレードを失っている。ニンジャスレイヤーも深手を負っているが、この機を逃してはならない。これほどの圧を持つニンジャ。すぐに適応してくる筈。
「イヤーッ!」「イヤーッ!」タイクーンは右下腕でニンジャスレイヤーの左拳を掴み、上腕両手を高く掲げた。ニンジャスレイヤーは目を見開く。タイクーンはカタナを手離していた。掲げた両手に紫のカラテが集まる。キキョウの力!「イヤーッ!」「グワーッ!」両肩にチョップ!
ニンジャスレイヤーは膝をつき、タイクーンの巨体を見上げた。「オオカゲの背にて、得物などもはや不要!」タイクーンが唸る。ニンジャスレイヤーはカタナをヌンチャクから振り払い、咄嗟の防御姿勢をとった。そこにタイクーンの前蹴りが襲いかかった!「イヤーッ!」「グワーッ!」
(((マスラダ! 奴のジツだ!))) ナラクが警告する。タイクーンは右下腕を前に突き出した。そこに新たなキキョウの力が集まり……「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーのニューロンが極度の激痛で真っ白に燃えた。ニンジャスレイヤーの両肩、そして鎖骨の傷穴が紫に光った。
さらに!「エイッ!」「グワーッ!?」タイクーンの両上腕が合掌すると、苦しみながら後退したニンジャスレイヤーの足元がやはり紫に光った! 既にニンジャスレイヤーの足元、オオカゲの背に、ジツの種をマキビシめいて仕込んでいたのだ! 策士!
「ワシが腕一本ごときの手傷で怯むとでも思うたか? 笑止!」タイクーンは右下腕を眼前に持ち上げ、人差し指と中指を眉間に揃えて立てて、ジツの仕上げを行った。「ヌウウウーン!」(((マスラダ! このキキョウ・ジツは……!))) ナラクの叫びがニューロンに反響し、焼けつく血が激流となって流れる。
「邪鬼ニンジャスレイヤーよ! 平城京を襲いし魔が、我が世にて大英雄ザンマを降し、我が元に至るは実際運命也。貴様を狩り、こののちの我が輝かしき大イクサ、天下布武達成の祈願としてくれよう! イヤーッ!」ナムサン! 五つの光がニンジャスレイヤーの身体の上で線を結ぶ! 裏キキョウ・ジツ!
(((マ……スラ……))) ナラクの声が遠ざかった。「グワアアーッ!」ニンジャスレイヤーは内側から引き裂かれ、螺旋状に拗じられるような感覚に襲われる! ナムサン! 見よ! タイクーン右下腕のジツ・サインめがけ、ニンジャスレイヤーの身体の魔法陣から析出したカラテ粒子が吸い込まれてゆく!
「ハン、ニャアアアア!」オオカゲが吼えた。ナムサン! キキョウ・ジツは力の流れを支配し、己のカラテを他者へ授与し、さらにはネザーを現世へ召喚するジツ。これを裏返せば、すなわち他者のカラテを簒奪するジツともなる!「グワアアアアーッ!」「ヌウウウウウウーン……!」
ザリザリザリ……ナラクの不明瞭な叫びがノイズと化した。もはや言葉はない。なぜならそのとき、ナラクは黒炎と化して、ニンジャスレイヤーの血中を駆け巡っていたからだ。タイクーンが訝しんだ。その瞬間!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの身体の魔法陣が黒変! 火を噴いた!
「「グワーッ!」」両者ともが苦痛の叫びを上げていた! ニンジャスレイヤーのメンポがメキメキと音を立て、牙めいて裂けていた。血とともに炎が噴き、身体を、装束を焼きながら、再び繋ぎ始めた。「コワッパ!」ニンジャスレイヤーがぎょろりと目を剥き、アケチを睨んだ。「煩わせてくれたのう!」
ビキビキと音が鳴り、合掌する上腕に亀裂が生じ、血が噴き出した。タイクーンは抗い、キキョウ・ジツにさらに力を注いだ。ニンジャスレイヤーは内なる力の爆発に震えた。そして言った。「わかるぞ!」「!」タイクーンのニンジャ第六感が危機を察知! ジツを解く! だが!「イヤーッ!」「グワーッ!」
ナラクと溶け合うマスラダの意識に、シトカの戦闘記憶がフラッシュバックする。「姑息な真似を。よかろう、欲しいならば、わけてやる! 遠慮をするでない! イヤーッ!」「グワーッ!」黒く燃える火の粉が、ニンジャスレイヤーの傷口からタイクーンに吸い込まれてゆく!「たんと喰らえい!」「グワーッ!」
力を断ち切ろうとするタイクーン! 黒炎の逆流を無慈悲に強めるニンジャスレイヤー! やがてタイクーンと繋がる火の粉は質量を為し、荒縄となって、フックロープの鈎をタイクーンの下右腕に喰らいつかせていた!「グ……」「イイイイイヤアアーッ!」「グワーッ!」サツバツ! 下右腕を、引きちぎった!
「グワアアアーッ!」「アアアアア……アアアアアア!」ニンジャスレイヤーはタイクーンを前に上体を仰け反らせ、狂い吼え、フックロープを振り回した。腕が飛んでいった。「グハハハハハ……アケチ・ニンジャ! つまらぬセンゴク者めが。未練たらたらに現世へ帰還し、成すは事欠いて箱庭遊びてか!」
前傾姿勢を取るニンジャスレイヤーの全身から血が滴り、オオカゲの鱗を焼く。傷口もやはり燃えていた。背中が黒く燃え、焦げた煙が空を流れた。「月はわかれ、オヒガンには言葉が溢れ、ウカツな者共が右往左往しおるわ。その中にあって世を恐れ、停滞にて全土を謀るとは笑止! 笑止の極み!」
「惰弱文明に一利なし!」タイクーンが叫び返した。「カラテこそ全て。我が力がこの惰弱な世界の全てを正してくれるわ!」「世界は、さにあらず」ニンジャスレイヤーが低く言った。「そしてオヌシは所詮、儂が殺す思い上がった旧きニンジャの一匹よ。……ニンジャ、殺すべし」
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