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【灰都ロヅメイグの夜】 ハルコ=プギジュの鯨 (前編)


【灰都ロヅメイグの夜】は、魔法殺しの隻腕剣士「グリンザール」を主人公とする、ダーク・ゴシック・ヒロイック・ファンタジー連作短編集です。荒野に聳える多層都市「ロヅメイグ」を舞台に、数々の血腥い冒険が繰り広げられます。クラシックスとは設定がいくらか異なっていますが、灰色の都では些細なことです。


“多層の蜘蛛巣の如く張り巡らされた、幾千もの街路橋。スタウトを呷り、亡霊じみた雑踏に紛れ、気紛れに天を仰げば、暗黒星瞬く空の下、灰都ロヅメイグの夜に、無数のカンテラが天界の灯火の如く揺れる。

 天突く尖塔の数々を仰ぎ見よ! 街路橋から身を乗り出し、眼下に揺れる幻夢郷の輝きを見よ! そして霧が、それら全てを覆い隠す様を見よ!

 ここは灰都ロヅメイグ。

 およそあらゆるものが、灰都六十八階層のいずこかに存在する。そしておよそあらゆるものが、等しい銀貨と引き替えに手に入る。”



⌘登場人物紹介⌘

グリンザール:隻腕の偉丈夫。剣士。長い黒髪に、死びとの如き灰の肌。復讐を秘めたる瞳は蒼。無慈悲なるラーグニタッド刀の使い手。人外のものどもは彼を「スペルズベイン」と呼び、忌み嫌う。魔法を憎悪する。

ゼウド・シェルキロス・アンバーダイン:隻眼の美丈夫。薄汚れた没落貴族の吟遊詩人。不規則に編み束ねた灰色髪に無精髭。濁りなき赤の瞳。二挺のゼイローム式連装石弓を操る。魔法を信じない。

エニアリス・リヰゼルフォウ:灰都ロヅメイグの第七図書館長。長命で知られるガーナールサ人の気難しく聡明な女。しばしば書物閲覧権や銀貨などを代価に使い、隻腕剣士と隻眼詩人に奇怪な探索仕事を依頼する。




【ハルコ=プギジュの鯨】



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 ラ、ラ。ラ。遥か遠けきヴォダクの奈落へと。みなぞこのハルコ=プギジュへと。捧げられたるは女の死と忘却。ともに儀式刀でひとつきに。ラ、ラ。ラ。躯の腰の回りには、ばらばらの人の腕八つ。革紐で腰に縫い付けて、たっとき聖数十となす。死と忘却はひとつに非ず。その腹には死せるみつきの赤子。もろともに儀式刀でひとつきに。奪い流されたのは血と涙。黒いなめ石の溝すべり。ヴォダクの奈落へ流れてった。


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「あれを見ろ、ゼウドよ。ついに灰都の滅ぶ日が来たか」

 宵闇石の手摺から身を乗り出した隻腕剣士グリンザールは、眼下の暗闇を覗き込むと、燃えるような敵意の眼差しとともに云った。彼のラーグニタッド刀の切先がさし示すのは、六六七番下水分岐口……かつては〈鷲の骨の外套のエイルドン伯の〉凱旋門とも呼ばれていた荘厳なアーチ天井の横穴……と、それをコルク栓の如くすっぽりと塞いだ巨大な肉塊、あるいは砕けた骨と肉と臓物の集合体であった。

 発狂した哀れな配管技師の言葉を信ずるならば、ロヅメイグ地下下水道に突如現れ、六六七番下水路を完璧なる機能不全に至らしめたこの正体不明の肉塊は、この門の先の下水回廊を最低でも二百フィート以上に渡って塞いでいるのみならず、時折痙攣するように脈打ち、ぶるぶると震え、また時には信じがたい膨張力を以ってアーチ型天井や壁や床にひびを入れ、ロヅメイグの大下水路そのものを粉々に破壊せんとしているのだという。

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