ハイヌーン・ニンジャ・ノーマッド(中編)
【前編】
トゥームストーンは黒い刀を大上段に構え、畳四枚の距離でニンジャスレイヤーを威圧した。ニンジャスレイヤーは臆することなく切り掛かった。ニンジャの速度で。そして弾き返された。鋭い金属音が大通りに鳴り響いた。
二度、三度、四度。やはりニンジャスレイヤーは弾き返され、逆に蹴りを防御の上から受けて転がり、二連続バック転を決めて斬撃をかわした。
踏み込めぬ。一見隙だらけのように見えて、攻め入る隙がない。然り。これは墓石の構えと呼ばれる、堅牢なる古イアイドーの業前であった。太陽を背負うトゥームストーンの体は、さながら無敵の黒い塔のように聳え立って見えた。トゥームストーンの発光する白い瞳が、落武者キルジマ・タカユキを睨め下ろす。
「どうした、ニンジャスレイヤー=サン! 掛かってくるがよい!」
ニンジャスレイヤーは体勢を整え直し、敵を睨んだ。相手はおそらく齢二百を超えるリアルニンジャ。積み重ねたカラテと剣の業前は歴然である。そして、それだけではない。敵の黒い刀はおかしなまでの質量を帯びていた。その側面にはびっしりと呪術的な片仮名が刻まれ、不吉な黒曜石のオブツダンを思わせる威容であった。
あれは何だ。
ひと瞬きする間だけ、キルジマの両目が赤く発光した。一瞬、敵の黒剣から立ち上る墨色の煙を察知する。常人の目には見えぬニンジャ気配を。
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