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S3第8話【カレイドスコープ・オブ・ケオス】分割版 #2

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「ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」タキは頭を抱え、ついにニンジャリアリティショックに堕ちた。消火作業ゆえ失禁する事はなかったが、嘔吐した。「ゴボボーッ!」ワアンワアンワアン……奇妙なサイレンが鳴り響く中、空にはカモメ群体じみてカイトのニンジャが舞っている。叫び。爆発。

 暗黒メガコーポ勢力が過密に入り乱れるネオサイタマの制空権は複雑で、ジェット戦闘機は運用されない。かわりにヘリやVTOL、鬼瓦ツェッペリンが邪悪な侵略者に空中戦をしかける。KABOOM! DOOM! 爆発、そして「グワーッ!」機銃やミサイルを受けて墜落してゆくカイトニンジャ。しかし……!

「惰弱!」龍の背にまたがりし暴君が断じ、ヤリを投擲!「エイッ!」KRA-TOOOOM! KA-BOOOOM! ヤリがツェッペリンを貫通、その後ろのVTOLをも貫いて爆発せしめると、龍は首を巡らせ、黒紫の炎を吐きかける!「シャギャーッ!」KBAM! KBAM! KBAM! 追尾ミサイルもろとも爆発する鬼瓦ツェッペリン!

「惰弱! 惰弱也! 我がカラテの意味する事を知れ! 即ち……」DOOOM! オムラの超弩級鬼瓦ツェッペリン「モータージンベエ」の顎が開き、空対空ミサイルが射出された。オオカゲは突進をかける!「ハンニャアアア!」「イヤーッ!」タイクーンは交差させた二刀流を開き、ダブル・イアイドする!

 KA-BOOOOOOOM! 飛翔したタイクーンの背後で巨影は真っ二つに切り裂かれ、爆発炎上しながら地上ビルに衝突したのだ! ナムアミダブツ!「……即ち、ネザーにて鍛え上げし我が無双の筋肉以て、惰弱な鋼はトーフに同じ也! 愚かな文明人よ。我に無駄に楯突いて、いたずらに征服資源を損わしむべからず!」

「もう……もうダメだ……おしまいだ……!」タキは啜り泣いた。「天上天下!」タイクーンの大音声が空を震わせた。そして……悪逆ニンジャキングは……あっさりとその身を翻し、飛び去ったのである。それはネオサイタマより少し以前に、ニューヨークの市民が体験した絶望と同様の光景であった。


◆◆◆


 3日経った。

 ドンピコ、ピコポピピココピコ、「5万円~、タノシイ会話楽しませてくれるなら」軽薄な電子音ビートに乗る退廃的な歌詞。オイランドロイド・アイドルグループ「NNK-128」の楽曲が流れるピザタキ地上階で、タキはカウンターに足を乗せ、冷めたコーヒーを啜っていた。「出ねえぞ。オレは。外には」

 冷凍ピザや真空パック・スシなどの食料は十分ある。シャッターも締め切ってあるし、汚い店構えだから、収奪を受ける可能性は……多分、低い。悩みのタネは、隠し通路扉の奥、地下施設のUNIXデッキがボヤで全滅したせいで、軽いインターネットしかできない事だ。

「アーア、アイツらどうしてっかな」タキはあくびをした。「気楽なもんだよな。オレはこんなヤバい状況なのに」侵略開始の瞬間のあの大規模磁気嵐は去ったが、以後、海外へのインターネットが全く繋がらない状況だ。「今夜サッキョーライン降りたらー、あなた特別な存在よー」NNKの歌が癒やしだ。

 コーヒーを飲む。冷めて、まずい。あの恐るべき瞬間……タイクーンが宣戦布告した時の記憶をぼんやりと手繰る。相当危険な作戦行動中のマスラダとの通信を試みていたその瞬間、強烈な磁気嵐に襲われた。ファイアウォールが煙を噴いて……焦げ付くにおいが、姉の事を思い起こさせ……意識が飛んだのだ。

 ノイズ奔流に沈むカナダドメインからの強制切断。まったく神がかった危機判断と切断処理だった。テンサイ・ハッカーの面目躍如……そう言いたいところだが、あのときタキは誰かにKICKされた……ように思えた。女性の影のようなものと、01の残像。覚えている。ニューロンがヒリヒリする。

「デジタルオーディンの遣わしたデジワルキューレ……電子精霊……金髪……よし」タキはマグカップを横にのけ、レジスター用の簡易UNIXでポルノサイトを見ようとした。「マシンパワーが不足しています」のつれない表示。「クソッタレだぜ」彼はもう一度欠伸をし、店のTVをつけた。

 シャワワーン、ドンツクブーン。ジングルが流れ、「NSTVダイミョニュース」のロゴが回転しながら画面を横切ると、サイバーサングラスをかけたオイランキャスターが頭を下げた。「オハヨ。ダイミョニュースの時間ドスエ。今日も皆さん、頑張りましょう」「オハヨ」タキはTVに返事した。

「35%」の数字が虹色に輝いた。「本日のタイクーン襲撃確率は35%ドスエ。4都市における出現アルゴリズムを各社が解析しており、信頼のおける予測です。外出する際はむしろネザーキョウの『ゲニントルーパー』との遭遇に注意しましょう。実際、様々な被害報告が寄せられているドスエ」

「35ッて、一番ハッキリしねえよ。クソ」タキはぼやいた。ニュースは被害報告の映像を流し始めた。白装束のゲニン達がジープに乗って街を走り回り、ぞろぞろと降りて市民を追い回し、あるいは機材ショップのガラスを割って、ターンテーブルやラジカセを収奪する。彼らの目は異常発光している。 

「囲んでボーで叩かれたんだ。生きているのが奇跡だよ」インタビューを受けるサラリマン市民。モヒカンの市民がそれを押しのけ、キツネ・サインする。「ここだけの話、俺はドサクサで、いけすかねえ勤務先に押し入ってよォ、ボーナスゲットしてやったぜ。コーポ・オフ!」ナムサン。

「このように混乱が各地で広がっており、シェリフやメガコーポは自衛の構えを強めております」淡々としたアナウンス。オイランキャスターが咳払いした。「エー……ここから先の映像は、非常にショッキングである為に、持病のある方、ショック映像に弱い方は一端見るのを控え、チャンネルはそのまま」

 ザリザリ……ノイズ混じりのハンディカム映像に切り替わる。「ザリザリ……非常に危険な地域に来ております……ご……御存知の通り……成層圏から落下した質量兵器ですが……ネオサイタマにおいてはカスミガセキ・ジグラット残骸に落ちたわけです。今、私はその目と鼻の先まで来ております」

 ザリザリザリ……「ジグラットに矢が落ち、その周辺にゲニントルーパーや……皆さん既に目撃されたでしょうか……謎めいた有角人間たち……あるいは不条理生命体が出現……非常に危険な中で……私は今、命がけで……ご、ごらんください! ジグラットです!」リポーターの指が映った。「……エッ!?」

「「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」」禍々しいカラテシャウトが聞こえた。リポーターはジグラット残骸を見つめ、思わず息を飲んだ。『明智光秀』『ネザー』『征服する』等の旗。ガレキまみれとなった階段状の斜面には、それぞれがミニゴルフコース程もある無数のトレーニング場が築かれていた! 

「「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」」おお、何たる冒涜的光景か! 太鼓の音に合わせ、数十……いや、数百人規模の白装束ニンジャ達が、一斉にトレーニングを行っていたのである!「「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」」それはセイケン・ツキと呼ばれる情け容赦ない殺人カラテのムーブメント!

 響き渡る無数の掛け声のユニゾンと同期するかのように、ジグラット残骸の左右に建てられた五重塔からは激しいパイロ火柱が吹き上がっていた!「アイエエエ!」追随クルーが失禁した。カメラマンの手が痙攣した。「……この世の……終わりだ……」レポーターは涙を流し、呟いた。

「オイ待て!」「ヤバい!」「そっちだ!」激しくブレるカメラが右にパンした。「サフォサフォス」のたうつ触手が、「サフォスソサフォサフォス」ザリザリザリザリザリ。画面が切り替わり、真顔のオイランキャスターが映し出された。「これはCGではありません。彼らに追加報告を要請しており……」

「どうなっちまった……?」タキは呻いた。キャスターの横の解説委員がメガネを手で直した。「エー、カスミガセキ・ジグラット廃墟は撤去に甚大な費用がかかるのでどのメガコーポも手を着けておらず……実際、遺棄設備を巡る争いも常態化しておりましたからね……彼らの手ですぐに要塞化されてしまいましたね」

 彼らの後ろのサブ画面には、ビジネスビルの壁をロープ無しで競うようにクライミングするゲニン達と、それを見て操縦者がNRSを起こしてヘリが墜落する痛ましい映像が流れた。「この通りです。市街各地は非常に危険なエマージェント状態です」「そしてなにより、タイクーンですね」「その通りです」

 サブ画面には航空戦力を易易と破壊する帝王の映像が映し出される。「ウカツに手出しすれば神出鬼没のタイクーンの反撃を招き甚大な被害を受ける……メガコーポ各社はその事態を恐れています」「どうすれば」「社を越えた協力と対処がASAPで必要です。あるいは和平工作……水面下で進んでいるやも」

「非常に大変ですね。タキ=サン」キャスターがカメラ目線になり、タキに話しかけた。タキは瞬きした。「ン?」「頼れる人が今、貴方しかいないのよ」「その通り」解説委員がカメラ目線で頷いた。背後のサブモニタに「その通りです」とミンチョ文字が流れた。タキは納得した。オレは発狂したんだな。

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