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S4第6話【アシッド・シグナル・トランザクション】#8

ニンジャスレイヤー公式/ダイハードテイルズ

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 赤黒のオリガミを中心とした構図の力を受け、低層ビル群の緑が萎びゆく。その屋上を矢のような速度で駆けるのは、黒の装束に橙の炎を宿す恐るべきニンジャであった。

「サツバツナイト=サン」セトは呟いた。かざした手の先に、ささくれだったネオサイタマの幻視光景がある。「見せてもらおうか」

『グルグルグル……』セトが佇む超自然のコトダマ荒野に唸り声が轟き、リモート石碑のひとつにムカデめいた影が蠢いた。『セト=サン。こは、いかなる事。我が狩人に対し、何の真似だ?』「さて。何であろうな。シャン・ロア=サン」セトは超然と応じた。「カリュドーンの儀式に抵触する行いはしておらぬぞ」

『許さぬぞ……あれはワシの下僕だ……!』「儀式の遂行は!」セトは邪悪な目を光らせた。「ダークカラテエンパイアの総意であろう。執行官たるこの我が、必要と判断し、付近の狩人を一時的に召喚した次第である。異を唱えるのか? 始祖カツ・ワンソーに叛意ありと疑われるような真似はよしたがいい」

『ワシの呪いに相乗りするなどというシツレイ……覚えておけよ』「フン」『ともかく、我が狩人を使う目的を言え』「胡乱なニンジャが我らの儀式にノイズを生じている。キンカク・テンプルの光を遮り、力の淀みをもたらしている。排除せねばならぬ」『グルル……オヌシの手下は、よう働かなんだか』シャン・ロアは挑発的に、ムカデめいた顎をギチギチと鳴らした。

 セトは目を細めた。「そう考えれば、貴殿の屈辱も慰められような。我が力をもってすれば、貴殿の部下の管理権限を任意に移し変えるなど実際容易き事だと痛感できた事だろう。今後も忠誠を忘れぬようにな……」『GRRR!』石碑に亀裂が生じる!

『アーララ……』コトダマの荒野を見下ろし、オモイ・ニンジャは物憂く呆れてみせた。不明瞭なその姿は01ノイズに彩られている。『おかしな事をするのねェ……!』「……」セトは腕組みし、厳しい視線をオモイ・ニンジャに投げた。オモイ・ニンジャは凝視を逃れ、その存在をさらに朧に変えた。

 オモイ・ニンジャは沈黙が疑いを呼ばない程度の最小限の当たり障りのない発言を行い、セトの様子をうかがった。セトはやがてオモイ・ニンジャに向けた意識を、サツバツナイトに戻した。オモイ・ニンジャ10010オモイ・ニンジャに偽装したナンシーは010001ひとまず胸を撫で下ろした。薄氷の上を歩くようだ。

 ほんの数コンマ電子秒の自我接触だけで、セトがスーパー・ヤバイ的なハッカー存在である事を感じ取るには充分だった。太古のニンジャがインターネットのタツジンである……それは実際衝撃的であり、恐怖そのものといえた。しかし、尻込みして逃げる選択肢など、ありはしない。

 セトの神秘のコトダマ荒野への侵入は、サツバツナイトの潜入捜査と、ニンジャスレイヤー達の協力の助けを得て、ようやく成し遂げた成果だ。くだらないミスで台無しにするわけにはいかない。慎重の上にも、慎重に。ナンシーは自身の幻影の糸を僅かずつほつれさせ、写身の形成を開始する。

 01ノイズの砂塵吹きすさぶ荒野の地面に、半透明のナンシーの写身が、ゆっくりと織り上げられてゆく。ナンシーはこの大胆極まりない作戦の犠牲となったサツバツナイトの身を案じ、そしてニンジャスレイヤーが切り抜けねばならぬ困難な試練に思いを馳せた……。


◆◆◆


「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーとザナドゥはハイウェイの高架上に回転着地し、勢いを殺さず走り出した。「ヒキャク・パルクールの俺の全力についてこれるたァ、なかなかやるじゃねえか」ザナドゥが振り返った。ニンジャスレイヤーはザナドゥの肩越しに、目的地の巨大な影を見る。

 カスミガセキ・ジグラット。黒々としたその質量は、一日毎に破壊と再生を繰り返すネオサイタマにあって、不変であり続ける神秘的ピラミッドめいている。再利用も破壊もできぬまま、ただそこに存在し続けるテック遺跡……。

「イヤーッ!」ザナドゥが高く跳び、宙返りしながら空にペイントした。長い尾と鬣をなびかせる桃の龍が、ネオサイタマに生じつつある。ハイウェイを覆う地衣類が後退を始める。巨大な幻影の龍が目指す先は当然、目的地カスミガセキ・ジグラット。そしてそこに新たなオリガミを生み出せば……。

「……!」ニンジャスレイヤーは地面を焼きながら急停止し、後ろを見た。

「イヤーッ!」黒橙の炎の車輪が跳ね上がり、ニンジャスレイヤーの眼前、タタミ三枚の距離の地点に着地した。瞬時にニンジャスレイヤーのニンジャ第六感が激しい警鐘を鳴らし、ニンジャアドレナリンが血中を凄まじく駆け巡った。(((マスラダ! 此奴は……!))) ナラク・ニンジャが呻いた。

 心臓が強く打ち、音が遠くなった。極度にブーストされたニンジャスレイヤーのニューロンが、引き延ばされた時間の中、その者の全身の筋肉の躍動を網膜に焼き付けさせていた。(((此奴はサツバツナイト! 注意せよ! 妙な力だ……!))) 着地し、身を屈め、再び跳ぼうとするサツバツナイトと、目が合った。

 サツバツナイトの眉間には第三の目が輝いていた。ホログラムめいた、異様な光の刻印が、不気味に脈打っていた。(((ムカデ! そしてセト!)))ナラクが警告する。(((刻印を通じ、二重の干渉が為されておるぞ!)))「……」サツバツナイトの視線がずれた。ニンジャスレイヤーの先。ザナドゥに。

 こごっていた時間が再び流れ出した。サツバツナイトが地を蹴った……ザナドゥをめがけ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは瞬時に状況判断し、横に跳んだ! サツバツナイトに向かって!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの回し蹴りを、サツバツナイトは腕で防いだ! 衝撃波が足元をえぐる!

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの連続攻撃を、サツバツナイトはさらに防御した。「なんだ!?」ザナドゥは仰天して彼らを見た。ニンジャスレイヤーは振り返らず叫んだ。「後で落ち合う! 予定通りだ。行け!」サツバツナイトの腕を掴み、押し込む! ザナドゥは息を呑み、走り出す!

「「イヤーッ!」」KRAAASH! ニンジャスレイヤーとサツバツナイトのカラテが再び衝突した。ノックバックで互いにタタミ5枚距離を後ろに滑り、そして同時にアイサツする。「ドーモ。サツバツナイト=サン。ニンジャスレイヤーです」「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。サツバツナイトです」

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ダイハードテイルズはニンジャスレイヤーなどを連載するオンライン・パルプノベルマガジンでありクリエイターユニットです。