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S3第6話【エスケープ・フロム・ホンノウジ】分割版 #8

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「サフォサフォス…」バシャバシャと運河の水面を撥ね、固形物ともゲルともつかぬ奇怪な塊が触手を震わせ、歌うような呻き声をあげる。「増えてきたな」トムが呟いた。彼は注意深く進行ルートを調節する。不用意に近づくべきではない。「どうも、こう……」カネトは気にかかっているようだった。「多い」

 ドヒュ、ドヒュドヒュ、対岸から射掛けられた矢が、モーターボートを危うくかすめた。弓矢を構えたゲニン達の姿が見える。BRATATA! アイサツのおかえしとばかり、ジェフが機銃を軽く撃ち返した。「当たりはしないが……」「グワーッ!」「……当たることもあるッてか。まあいい、ざまあみろ」

「ハッハア!」アシュリーはファックサインを対岸に向けた。トムはカネトの様子を気にした。恐怖を増している。「どうした」「ヘグイだ。やはりこう……」彼は耳に手を当てた。トムの耳にも微かに聞こえてきた。ピュイイイイ……ピイイ……ヒョロロ……和笛めいた響きだった。「なにかまずい……!」

「水門だ!」トムははっきりと進行方向に見た。城壁に穿たれた水門を通過すれば、ホンノウジとはオサラバだ。……城壁の上で、踊りながら笛を吹く影があった。音の主だ……「アブナイ!」カネトが操縦桿を横から掴み、思い切り右に方向転換させた。エンジンが悲鳴を上げ、ボートがドリフトを始めた!

「グワーッ!」「畜生!」ジェフとアシュリーがボートにしがみついた。「オイ! 何を……」トムがカネトを咎めようとした、その時だ!「ルルルルゥ……!」SPLAASH!水門付近の水面が爆発し、小雨を降らせた! そして紫黒色の厭わしい壁じみた姿が……常に流れ落ち、沸騰する塊が、身をもたげたのだ!

 ヘグイの母体? トムは深く考えるつもりはなかった。カネトもそうだった。「クソが! 右の水路に入れ! 水門から出るのはダメになった!」ボートが加速! 市街水路へ乗り込む!「ルルルルルウゥ……」KRAAAASH! 後方でひどい轟音、破砕音が聞こえた。アシュリーもジェフも、敢えて振り返りはしなかった。

 直角にコース変更し、市街に入り込んだボートは、やや速度を落として進行した。トムはかつて観光で訪れたヴェネツィアを連想した。赤いカサを立てた茶屋のベンチが水際に並び、建築物は手入れが行き届いている。「屈強区の奥まったエリア。ゲニン程度じゃ立ち入りが許されねえ」カネトが言った。

「このままどこに向かう」「戦利の殿堂区だ」と、カネト。「もとはエドモントンの飛行場だったッて話だ。ネザーキョウが鹵獲した戦利品の類いが飾られてる。兵器やら、武器やら、いろいろな。カラテとイクサのトロフィーなんだ」「成る程」ジェフが察した。「ヘリの類いがあるとでも?」「賭けだ」

「ハッハッハッハ」ジェフは乾いた笑いを笑った。カネトは大真面目だった。「質実剛健がネザーキョウの是だ。兵器の類いは、単なる使えねえ飾りにはなってねえ筈だ。そのまま使えるようになってる。来たるべき時にはそういう兵器も動員される筈なんだ!」「異論なし」トムは言った。「他に道はない」

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