S3第7話【ナラク・ウィズイン】#7(分割版)
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◇関連エピソード:「ギア・ウィッチクラフト」
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「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーはアイサツを返した。ザンマを見据えると、周囲の景色は薄く陽炎じみて歪む。ザンマが放つ壮絶な凄味が、環境へ振り向ける意識を奪うのだ。「……おれは貴様を知らないぞ」ニンジャスレイヤーは答えた。「ザンマは知る」ザンマは念を押した。
キリング・オーラが放射され、ニンジャスレイヤーを圧す。これまでネザーキョウで対峙してきたニンジャたちとは別格の存在だ。そして何らかの理由で確定的な殺意をニンジャスレイヤーに直接さだめている。だが彼も引き下がるわけにはゆかぬ。この者の後ろに、己に属する力……ナラクの力がある!
「イヤーッ!」ザンマ・ニンジャは背中の刃を抜き、振り下ろした。ニンジャスレイヤーは真っ二つの危険を伴う斬撃を回避し、接近しようとした。「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは吹き飛んでいた。ヌウウウウ……。ザンマ・ニンジャは左手のポン・パンチを引いて、ニンジャスレイヤーを見た。
「……!」ニンジャスレイヤーは後ろに受け身を取り、カラテを構え直した。ザンマはカラテ漲る左拳を痙攣させた。「ザンマのカラテはオニ狩りのカラテ……」KRAASH! KRAASH! 右手のツルギを足元に叩きつけ、叫ぶ。「そしてザンマブリンガーはザンマをもたらすツルギ也! ザンマを知れ! 我、ザンマ!」
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケン投擲! だが!「イヤーッ!」ザンマ・ニンジャはザンマブリンガーをいきなりニンジャスレイヤーに投げつけたのだ! スリケンを破砕し、高速回転しながら迫る大剣!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは咄嗟にブリッジから倒れ込み回避! 胸が裂ける!
「アバーッ!?」後方、崖を上ってきたネザーキョウのニンジャが胴体を刃に貫かれて血を吐いた!「イヤーッ!」ザンマ・ニンジャは地を蹴り、ニンジャスレイヤーに襲いかかる!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはブレイクダンスめいたウインドミル蹴りで襲撃に対す!「イヤーッ!」ザンマは跳ねる!
「イヤーッ!」「ヌウーッ!」KRAASH! ニンジャスレイヤーは脇腹に蹴りを受け、横に転がった。かろうじて防御が間に合ったが……重い!「イヤーッ!」「アバババーッ!」ニンジャの上半身を裂き開き、自剣を再び掴み取ったザンマは、振り向きながら二度刃を振り下ろした!「イヤーッ! イヤーッ!」
ニンジャスレイヤーは一撃をバックステップで躱した。その頭上へ二撃目が襲い来た。「イヤーッ!」足元にカゼが吹き、彼のステップを助けた。ニンジャスレイヤーの眼前1インチの空気を真っ二つに断ち、ザンマブリンガーが大地を割った。「……」ザンマはコルヴェットを見た。「オニにマの助けあり」
「貴様の相手はおれだ!」ニンジャスレイヤーが叫んだ。ザンマ・ニンジャはコルヴェットに向き直り、頭上でザンマブリンガーを振り回した。「否、これもまた一興也」コルヴェットはカゼの短距離移動を試みる! ザンマが斬る!「イヤーッ!」「グワーッ!」
血が跳ね、風に紛れ、コルヴェットの姿が消えた。フックロープがザンマ・ニンジャの腕に絡みついていた。「……!」ニンジャスレイヤーは目を見開いた。その目から血が流れ出す。背中の筋肉が縄めいて浮き上がる。ザンマは腕を引いた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは堪える!
ニンジャスレイヤーの足元の地面が轍めいて抉れ、ニンジャスレイヤーは引きずられ始める。「……!」ニンジャスレイヤーはなお力を込める。黒炎が己の身体を駆け巡るさまをイメージしようとする。「オオオオ」黒炎溜まりが沸き立った。……力が応えたように思った。「イヤーッ!」抗う!
「然り、オニはザンマに応える」ザンマはロープの絡んだ手に力を込めた。「ことごとくザンマに応えよ」「ヌウウウ……ヌウウウーッ……!」ニンジャスレイヤーは再び引きずられ始める! その横に風が吹き、コルヴェットが倒れ込む!「ゴボッ! ゴボーッ!」傷を押さえ、のたうち回る!
「ニンジャスレイヤー=サン! 黒炎は……貴公に属する力……力を以て……」「イヤーッ!」ザンマ・ニンジャが綱引きに勝った! 空中を引き寄せられるニンジャスレイヤー!「イヤーッ!」コルヴェットは手をかざし、カゼで後押しした。ニンジャスレイヤーはザンマの目測よりも速く間合いを詰めた!
「イヤーッ!」側宙蹴りをザンマの肩に叩きつける!「グワーッ!」ザンマは不意を打たれ、恐るべき蹴りを受けた。ニンジャスレイヤーはフックロープを素早くほどき、別の方向に飛ばす!「グワーッ!?」崖を上ってきたゲニンの首に鈎がかかった。ニンジャスレイヤーはそちらへ跳ね、反撃を躱した。
「イヤーッ!」「グワーッ!」トビゲリを受けたゲニンは崖を転がり落ちてゆく。振り向きながら裏拳を繰り出す! ザンマは瞬時に彼の背後に至っていた。「イヤーッ!」裏拳はザンマの手元を打ち、斬撃を逸らした。「イヤーッ!」腹に拳を繰り出す!「イヤーッ!」ザンマは拳を殴り返す! KRAASH!
拳が裂け、血が噴いた。ニンジャスレイヤーは更に殴った。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ザンマは刃を地面に突き刺し、刀身を盾として連続打撃を受けた。「……!」ニンジャスレイヤーはニンジャ第六感で危機を察知、高く跳躍! 直後!「イヤーッ!」ザンマは土を刳り、刃で足首を払った! アブナイ!
「来い……!」コルヴェットが手を掲げた。ニンジャスレイヤーはフックロープを投じ、コルヴェットの腕に巻きつけ、斜めに滑空した。「グ……!」ニンジャスレイヤーを受け止め、コルヴェットは苦痛に呻いた。「俺は平気だ、臆病ゆえ己の限度はしっかり見ておる。気にするな」「無理に喋るな……!」
ニンジャスレイヤーは振り返り、コルヴェットを後ろに、ザンマ・ニンジャに向き直った。「離れろ。奴はおれが殺る」「無論、そうしてもらわねば困るが、今は俺の助けが必須だ。あのザンマとやら、並のニンジャではない」コルヴェットは脇腹の傷を押さえ、囁いた。「黒炎に触れ、力を取り戻せ」
ニンジャスレイヤーは煮えたぎる黒炎を見る。あれに踏み込み、力を引きずり出す……「言うは易しだぞ」ザンマのカラテを、その間、いかに防ぐか? コルヴェットは乾いた笑いを笑った。「全くだ。だが、まずは貴公がそれを成し遂げねば、どうにも事態が切り拓けん。俺が援護するゆえ、なんとか頼む」
「胸踊るオニ退治のイクサじゃ」ザンマ・ニンジャはザンマブリンガーを水平に構え、じりじりと間合いを測る。ニンジャスレイヤーは前傾姿勢となった。「スウーッ……フウーッ……」彼は呼吸を深める。身体の芯に残るナラクの火に、空気を……この場に感じるギンカクの力を送り込もうとする。
「……!」ザンマ・ニンジャのこめかみがぴくりと動いた。彼は用心深く間合いを維持し、ニンジャスレイヤーの出方を待った。ニンジャスレイヤーの目の奥で、赤黒の光が明滅する。……その時、五重塔西塔が爆発し、炎を噴き上げた。KA-BOOOOOM……! コトブキだ。時間を要したか。だが今は……。
KA-BOOOOOM!その時、南塔がたてつづけに崩壊した。「南だと? 誰が……」コルヴェットが掠れ声で訝しむ。ハリマ離宮の全ての五重塔が倒壊したその時、上空の空に、奇妙な波が、たしかに走った。
◆◆◆
「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニーズヘグとヘラルドは瓦屋根に着地し、崩壊する五重塔の邪悪な光を背にした。空に奇妙な力の波が走った。心なしか、この地を包む重苦しさが緩和されたようだ。二者は走りながらアイコンタクトした。(見よ。明らかに何か起きた。これがイクサの勘じゃ)(……!)
「デアエ!」「デアエ!」パレスの屋根を駆けてくるアカゾナエのゲニン達を、ニーズヘグは呵々大笑し迎え撃つ!「イヤーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」ヘビ・ケンに翻弄されるゲニン達! 吹き飛ぶ手足! ヘラルドは見た。前方、局地的地殻変動によって乱れ果てた大庭に、エメツの疼きの源がある!
「感じる……!」「それはチョージョー。オヌシのイクサも、そこにあれかし!」彼らは屋根から屋根に飛び移った。ニーズヘグは瞬時に戦場のありさまを見て取った。崖下では混乱し右往左往するサンシタども。段上になった崖の上では相争う者らがある。同士討ちの最中か。
特に強い力を持った包帯姿のニンジャは宙に浮き、超自然のカトンを凄まじく投げつけ続けている。注意が要る。仕留めるか、避けるか。奇妙な事にそのカトンの勢いは弱まりつつある。ニーズヘグは塔破壊との因果関係を直感する。「イヤーッ!」「イヤーッ!」彼らは陣幕を飛び越し、グラウンドに至る!
崖の一番高い場所に、不穏な黒炎のわだかまりがあった。『01001……あれだ……ニーズヘグ=サン』ニーズヘグのニューロンに、不明瞭な声が走った。ゲニンを殺しながら、彼は眉根を寄せた。「ネクサスの? 通じるのか」『霧が晴れた』「ハハァ。成る程」ニーズヘグは納得した。「それはチョージョー」
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