S4第4話【ヴェルヴェット・ソニック】#3
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S4第4話【ヴェルヴェット・ソニック】#3

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 超自然の鐘の音がニンジャスレイヤーの脳裏に響き、耳鳴りに変わる。頭上に黄金の立方体が垣間見えた。ニンジャスレイヤーは頭を押さえ、驚愕と共に呻いた。マークスリーと戦闘を開始してからきっかり24時間。カリュドーンの開始以降、ウシミツアワーには夜毎、常に備えて来たが、昨日の今日とは。

 ニンジャスレイヤーは空を睨んだ。邪悪なるリアルニンジャたちの蜃気楼めいた像が見えた。感じる。狩りのたび、よりはっきりと輪郭を捉える事ができるようになってきている。

 ……見ていろ。じきだ。ニンジャスレイヤーは心の中で呟いた。風が吹き抜け、砕けた月が再び空にぼんやりと輝いていた。

 この日、ウシミツアワーを迎えるにあたり、ニンジャスレイヤーは谷間めいたビル街の狭間の公園に陣取っていた。攻防が組み立てやすく、奇襲を仕掛けられても仕切り直しがし易い。網膜に焼き付く輝きの方位を振り向く。カリュドーンの儀式が始まれば、狩人と獣は互いの三次元的座標を知覚するのだ。

 彼はその場で数度跳ね、あらためて肉体をキャリブレートした。癪にさわるが、シナリィの強制的なもてなしは、結果的に助けになった。スシを摂って肉体は元気づいた。身体はよく動く。ニューロンも冴えている。戦闘開始だ。

「戦闘開始だ、ニンジャスレイヤー=サン」公園の電灯スピーカーが発声した。

「イヤーッ!」反射的にニンジャスレイヤーはスリケンを投げ、スピーカーを破壊した。「なんて反社会的な獣なんだ! スピーカーは社会の備品だぞ。許せないな」別の電灯スピーカーから笑い声が聞こえた。「道徳的に許せないやつには、狩人が制裁してやらないとな。俺の名はサロウ……最強の狩人!」

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはそのスピーカーも破壊した。「やめろよ、そういうのは^o^」地面の液晶パネルに文字が光った。ニンジャスレイヤーは無雑作に踏んで破壊し、走り出した。ビルの壁面の液晶パネルにツーブロックヘアのアスキーアートが映った。「一直線に向かってくるんだな?」

「タキ」走りながら、ニンジャスレイヤーはニューロンに呼びかけた。『モシモシ、アタシ、タキ。今、取り込み中なの……アハァ、アハァ、アハァ! タキだってさ! その名前!』邪悪な声が答えた。ニンジャスレイヤーは凄まじい頭痛に足をもつれさせ、ガードレールを蹴って転倒を逃れた。アブナイ!

『タァキィ……タキタキタキタキ! ……なんだか嫌な名前ェ!』ニューロンに浮かび上がった奇妙な図像が狂い乱れた。『アタシの人格が、なんか覚えてるンだなァ、その名前ェ……ムカついてきちゃった……マジでカチコロさないとなァ……! アハハハハァ!』ニンジャスレイヤーは首を振り、走る! 

『やめてよ! 振り落とされちゃう』ニューロンにへばりつく意識は、しつこかった。「サロウ」の自我ではない事はすぐにわかった。それを察したのか、意識は勝ち誇るように語った。『二人がかり、ズルイって? 人聞きの悪い事言わないでよねェ。バレやしないもの! アタシのチカラ、ナメないでね!』

 KRAAAASH! 道路を横切ったトレーラーの横腹に衝突し、ニンジャスレイヤーはアスファルトを転がった。「スッゾオラー!」トレーラー運転手が罵声を残して走り去った。「スウーッ……フウーッ!」ニンジャスレイヤーは呼吸を深めた。邪悪な意識が呻き声をあげ、笑いながらかき消える。『またねェ!』

「スウーッ……フウーッ……!」ニンジャスレイヤーはアスファルトに手をつき、身を起こした。「だ……ダイジョブですか?」恐る恐る、残業帰りのサラリマンが声をかけようとして、恐怖に凍りついた。「アイエッ!? ニンジャ、ナンデ!?」「おれに近づくな……!」

「アイエエエ!」サラリマンは失禁し、カバンを取り落した。慌ててそれを拾おうと俯き、痙攣し、顔を上げた時、その目はギュルギュルと回転し、口からは涎を垂らし、両手をかざしてニンジャスレイヤーに向かってきた!「アババババーッ!」本能的な危機を察知したニンジャスレイヤーは側転で回避、走り出す!

「アババーッ!」ニンジャスレイヤーの背後、サラリマンは頭から突っ伏して口や耳から血と脳漿を撒き散らした。ネオン看板に「惜しい」「やはり」「一筋縄ではいかない」「いい勘してる」と電子文字が点灯した。ニンジャスレイヤーは路地裏に走り込んだ。バチバチと配線が電光を散らす。

 ニンジャスレイヤーは後方を振り返った。「安い。安い。実際安い」広告音声が路地の壁に反響する。ニンジャスレイヤーは状況判断する。タキの支援は得られないと見てよい。通信を試み、阻害された。サロウはニューロン攻撃のニンジャで、どうやら別の相手が同時に罠を張っている。

 タキに対する通信の道の途中に立ちはだかった不気味な影には異様なアトモスフィアがあった。ニンジャスレイヤーは直感した。あれはサロウを飼っているリアルニンジャだ。強大な力だ。意識を外に開けば、侵食される。それがタキに累が及ぶきっかけとなる可能性も十分あった。試すリスクが高すぎる。

 何にせよ、敵の居場所は知れている。狩りのルールによって、網膜に方角が焼き付いているからだ。サラリマンを通した攻撃。あの七人の包囲戦の時、サロウはニンジャスレイヤーのニューロンを繰り返し攻撃してきた。通常のモータルのニューロンならばひとたまりもない。今回は市民を操り、中継して、狙ってきたのだ。

 遠隔攻撃。今は厄介な距離が開いている。そして敵も移動している。ニンジャスレイヤーが走れば、遠ざかる。付かず離れずか。サロウのジツには有効範囲の制限があると見えるが、ハッカーがやるように中継を繰り返すのだとすれば、単純に距離的な問題では済むまい。

 上に逃れるか? ニンジャスレイヤーは頭上を見た。障害物の無いビル屋上を飛び渡り、一気に近づくか。……否だ。彼のニンジャ第六感はその選択が極めて危険な行為だと伝えてくる。今、彼は無数の意識の星々の只中に身を置いている。開けた場所に唯一人ニューロンを晒せば、即座に致命の攻撃を食らう。

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