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S4第5話【ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン】#1

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「ドッソイ!」「ドッソイ!」「ドッソイ!」「ドッソイ!」リベットつきの革マワシを身に着けたスモトリが人力操作するエレベーターが、二人のニンジャを迎え入れ、チャリチャリと鎖の音を立てて上昇を始めた。「これはこれは何とまあ」不快なニヤニヤ笑いのニンジャは眼下の光景を見下ろし、驚嘆した。

 城塞都市カメヤマ。かつてレジャイナと呼ばれた地に築かれた、武の城。スモトリ達の手押し車を動力インフラとして、様々な歯車機構が絶えず駆動し、煙突からは黒煙が吐き出され続ける。歯車、ハンマーの鍛冶音に混じって、鞭打つ音や悲鳴も聞こえてくる。まこと武の城、カラテの城であった。

「なんと無駄……いやシツレイ……雄々しく畏怖すべき、筋肉の神殿とでもいうべき城塞であることか」そのニンジャ……クローザーは、まわりくどく煙に巻くような語調で、城下町の感想を述べた。同乗の者は、キモノの下の身体を包帯で覆ったニンジャである。彼の名はクセツ。アケチ・シテンノが一人。

 紫の火を燃やす彼の目が、クローザーのニヤニヤ笑いを、じっと見つめた。「その軽口を閉じておいたが身の為だ」「クキキ……勿論だ」クローザーはオジギした。「君は僕の最大の理解者! そんな君の不利益となる言動は、当然、親王様の御前においては厳かに慎むからして。今だけだよ、今だけ。ムフ!」

「ジョウゴ親王は地獄耳であらせられる」「オット! ならば気をつけた方が良いか。君と共にカマユデのスープになるのは御免被りたし。なに、たとえばあのティアマト=サンの魅惑的肢体とともに入浴するならばカマユデもやぶさかでないが……」ガゴーン。人力エレベーターが目的階に到達した。石と鉄の城の天守フロアに。ゆっくりと鋼鉄フスマが開く。

 廊下にはロイヤルガードが待機しており、厳かにオジギした。クローザーはクセツと一瞥をかわす。天守フロアに立ち込めている、皮膚を刺すような敵意。確かめるまでもなく、城主が放つニンジャアトモスフィアだ。(ここまで漂ってくるとは、たしかに中々)クローザーは目を細める。

 通路の壁には水晶ガラスの窓がある。クローザーはそこから城下、城壁外に配置された青銅の逆関節巨大甲冑を垣間見た。しなやかで、長い首を持ち、まるでツルのようでもある。(アレが、アレかね?)クローザーは歩きながらクセツに目で問うた。クセツは頷いた。

「オナーリー!」シャン、シャン、シャン……。飾りフスマが開かれ、二人の眼前に、タタミが敷き詰められた広大な広間が広がった。空を背に、ジョウゴ親王がアグラで座していた。彼の肘置きはウルシ塗りで、奇怪な棘で飾られ、黒から紫のグラデーションで絶えず色を移り変わらせている。

 ジョウゴ親王の傍らには美少年のコショウが緊張の面持ちで立ち、大ウチワで絶妙な風を送っていた。ジョウゴ親王はエボシの下、青ざめた痩せ顔を俯かせ、黒く長いあごひげを長い指でしごいていた。やがて吊り上がった目を上げ、その恐るべき三白眼で、クセツとクローザーを睨んだ。「来おったな」

 クセツはゆっくりと最オジギした。クローザーは彼らを見比べた後、そのオジギに続いた。「ヘヘェ……」「ワシがアケチ・ジョウゴ。偉大なるタイクーンの唯一の子じゃ」ジョウゴ親王はアイサツした。「ゴキゲンヨ。クセツです」「クローザーと申します。以後お見知りおきをば……」「汚らわしい」

「汚らわし、エッ? 何と?」クローザーはパチパチと瞬きした。ジョウゴ親王の手にはいつの間にか長弓が構えられていた。「汚らわしきは貴様のクネクネがましい陰謀のニオイじゃ」「そんな! さすがに酷い……」「ゆえに運を試してやる! エイッ!」ジョウゴ親王は矢をつがえ、ケイトーを射た!

 ハッシ! 放たれた矢はクローザーのこめかみの横にあった。……あった。然り。静止していた。クローザーはわずかに顔を左へ傾け、親指と人差指で、空中に静止した矢を支えていた。雑作もなく、受け止めたのである。何たるカラテか。クセツの燃える目が警戒の光を帯びた。

 クローザーは笑顔になった。「運はともかく、我がカラテのいくばくかの真摯は示せましたかな、親王殿下」矢に緋色の稲妻がパチパチと走った。クローザーはその場で正座し、膝の上に矢を置いた。「……フン」親王は鼻を鳴らし、大弓をコショウに投げつけた。オジギ継続のクセツに問う。「それで。献策とは何ぞ。申せ」

「……かの、オベリスクについてでございます」クセツは厳かに切り出した。「あれの話とは思うたわ」親王は顔をしかめた。クセツは続けた。「このクローザーと共に、ホンノウジにて文献を求め、一定の事実に至りましてございます。……あれはギンカク。間違いなし」「それだけか?」

 スウーッ……。クセツは息を深く吸い、座して、前に身を傾けた。「あれを直接調べる許可をいただきたいのです。さすれば、親王陛下に無限のカラテと栄光を、必ずや」「……クセツゥ……」親王の目がギラリと光った。その輝きには無数の感情が込められていた。敵意。猜疑心。残忍。そして、不満!


【ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン】


 サスカチュワン東南部、エステバンには現在、タイクーンによって「ヤガミ」の名が与えられている。その先にはサンドストーン丘陵と呼ばれる奇岩地帯が広がる。岩山から抉られ、天から投げつけられたような巨石が、丘のあちこちに突き刺さり、荘厳な景観を作り出しているのだ。そして見よ。その丘の一つ。岩陰に不気味な馬が二頭、横並びに、じっと静止していた。

 大きく、黒く、鬣は炎めいて定かならぬ輪郭、じつに奇妙な馬であった。実際それは尋常の馬ではなく、黒帯を締めた単なるカラテ馬でもない。ネザーメアと呼ばれる超自然の馬であった。馬の傍らには「明智」の旗が突き立てられており、二人のニンジャが焚火を囲んでいた。

 彼らが食する火炙りの串刺しのダンゴは、内なる残虐性を暗示しているように思えた。「おい」一人がダンゴの咀嚼を終え、切り出した。「感じるぞ」「……そうか」もう一人が立ち上がり、焚火を蹴り散らした。旗に手をかける。竿に吊るされた恐るべき青銅のウインドチャイムを凝視する。

 ……リーン……リーン。彼らが耳傾けるうちに、ウインドチャイムの響きが徐々に大きくなる。「お前の予感が当たったぞ、クロスファイア=サン」ナギナタを背負ったニンジャ、ディヴァイダーが言った。「予感ではない。確信だ」クロスファイアが答えた。「そして、やはりな。インターネットは近い」

 彼らの会話、ウインドチャイム、そして傍らのネザーメアが示す恐るべき事実。それは、彼らがかの悪名高きWi-Fi狩りの黒き斥候部隊、「テツバ・ドラグーン」のニンジャであるという事だった。揃いの黒いニンジャ装束に身を包み、特別な訓練を受け、ネザーメアを賜った精鋭集団……!

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