灰都ロヅメイグの夜 3:斜陽の剣士達
【承前】
廃屋の二階、ロー・ロクムの鍛錬場は、少なく見積もっても五十人の剣士がその技を磨くだけでなく、炊事その他を賄うに十分な広さを有している。そして、かような夜更けにあってもなお、十人からの剣士が其処に在った。もっとも、そのうち高位に属する数名は、窓際のテーブルを囲んで、フォウス酒とポーカーを愉しんでいるのであるからして、剣技の鍛錬に励むは僅か四人となるのだが。
剣技の鍛錬を行う四人のうち二人は、未だ剣の道を歩みだして間もない少年であった。真剣を扱うさますらぎこちなく、時折寸止めもままならずに、見やる者をひやひやとさせた。それに比べ、その横で猛烈な鬩ぎ合いを行っているこの二人はどうだ? 剣先鋭く、空を劈く音鳴らせ、申し分のない太刀筋で互いの一撃一撃を捌き合っている。一人は三十がらみ、鋭い顎髭が印象的な男で、名をリュガと云った。いま一人は、キッド・ニールと呼ばれていた。まだ若く、一人前の男としてはどこかしらにあどけなさが残るが、一人前の剣士として十分な剣技を有していた。
リュガの繰り出した突きを、キッド・ニールは巻き取るようにして薙ぎ払い、返す刀でリュガの喉元近くを取った。勝敗決すると、そこまでの激しい動きが信じられぬ程、両者はまるで石像の如くにぴたりと止まった。やがてゆっくりと呼吸を整え、互いに剣を引き、収めると、満足げに目で相槌を打った。
「リュガ師」息切れも僅かに、キッド・ニールが口を開いた。かねてより訊きあぐねていた事柄を、今宵こそはと。「剣士として独り立ちするには、どれだけの剣技が必要でしょうか?」
「まだだ」ニールよりも僅かに息を切らせたリュガは、しかし直ぐに呼吸を整え、静かに低い声で云った。「少なくとも、お前はまだ足りぬ」
若き剣士、キッド・ニールは師の言葉に満足していなかった。彼の求めていた答えは、技術の正当な評価だった。一対一の剣術に於いては、既にリュガ師を凌ぐものを手にしたと、彼は考えていた。そしてそれは、このロー・ロクムの鍛錬場で最高の剣術使いであることをも意味していたからだった。 キッド・ニールはいつになく、リュガ師に食い下がったが、その首を縦に振らせることはかなわぬようだった。
一方、窓際のテーブルでは、三人の男の賭け勝負が、いよいよ盛り上がっていた。 もう二人は後ろから各の手札を眺め、酒の肴にしている。そしていま一人の車椅子の男は、静かに窓から外の景色を眺めていた。車椅子の男を除けば、全員三十を越えるかといった年齢で、腰には各業物の剣を帯び、酒と年波による僅かの弛みを問題の外とすれば、実に引き締まった体躯であった。彼らは皆、今は亡きタルカン・フォーサイズの徒弟であった者たちだ。
「この世界がどうやって生まれたか、聞いたこと在るかね?」くたびれた革製のサンポーガル式二段外套を羽織り、漆黒の羽差し帽子を脱ごうとしない伊達男ダーンクルドが、手札を配りながら云った。徒名は男爵だった。
「さあな」長い薄茶けた頭髪を、幾つもの細かな三つ編みに束ねた、豪壮な体格の男が云った。名はフォブズと云った。手札があまり好ましくなかったらしく、フォウスのグラスをストレートでさらにごくりとやった。
「神々がポーカーをしたという」ダーンクルドは口ひげを弄び、眉をひそめて、真面目腐った顔を作って云った。「割と、結構な額でな」
「どの神だ?」三本指を突き立てて交換すべきカードを請求しながら、頭の禿げ上がった逞しい男が訊ねた。丸々とした目の男で、名はパズと云った。
「さあ、細かいとこは忘れたが……」カードを交換しながら、男爵が云った。「兎に角、Dが付く何とかって神が、ツー・ペアを出した。で、他の神々を出し抜いて、この世界を手に入れたのさ」
「おいおい、たったのツー・ペアか!」パズは堪らず笑った。「で、お前はどうなんだよ」
「フル・ハウス」男爵は、カードを見せずに伏せながら云った。
「傑作だ!」フォブズも、テーブルを叩いて笑った。後ろから各の手札を見やる二人の男は、互いに顔を向け合い、にやにや笑いを作っていた。
だがここで、今夜最高潮の盛り上がりを遮るようにして、車椅子の男が云った。顔に麻痺が残っているようで、口があまり大きく開けぬらしく、その声はさほど大きくはなかったが、何かしらの昂揚を伝えるには十分に熱のこもった口調であった。
「残念ながら、そこまでだ。窓の外を見やれ。目と耳がまだまともに働いているならば、だが、俺には信じ難いものが見える」
男の名はロクム。四十に近いと思える。頭髪は存在せず、そこかしこに剣の傷痕が窺えた。現在のロー・ロクム鍛錬場を束ねる男だったが、そもそもにおいて、この男もまた、かつてはタルカンの弟子の一人であったのだ。
ロクムはジョークを飛ばす男ではない。むしろそれらを忘れ去ってしまった男だ、と男達は重々承知していたため、カードを其処に伏せ、急ぎ立ち上がると、窓際へ身を乗り出して街路を見下ろした。
間もなく、フォブズが大声でリュガとニールをも呼びやった。リュガもまた、タルカンの直系の弟子である。リュガはキッド・ニールの師に当たるが、此処にいる男達は、何かしらの盟約か友情によって結ばれた特別な存在であり、鍛錬場に於いて同等の地位を有しており、各が独自に弟子を持っていた。よって、ニールをはじめとした門下生達は、彼らを師兄弟と読んでいた。この男達の複雑な関係について訊ねることは、かつてのキッド・ニールには出来ないことだった。あまりに薄暗く、厄介な秘密が隠されているらしかったのだ。
「見たか? これぞ千載一遇の機!」フォブズのその声は、自身の心臓の拍動が速まるを隠し立てはしなかった。
「ああ、見た。見たぞ! よもやこの灰都で奴を再び見いだせようとは! 宿敵たる隻腕の剣士をな!」リュガが云った。
粗暴なフォブズ師は別として、リュガ師は、いつになく冷静さを失っているようであると、キッド・ニールには感じられた。今しがた雑踏と霧の中に消えていった隻腕隻眼の二人連れに、まったく見当は付かなかったが、それにつけても理由の見えぬ師等の狼狽振りは、彼にいささかの不安と、伝染する昂揚を喚起した。そしてそれは、徐々に大きくなっていった。
「間違いは無いな?」ロクムが声を震わせた。
「忘れるものかッ。奴の腰には、かの忌々しきラーグニタッド刀!」男爵は無意識のうちに剣の鞘に手を伸ばしていた。
「聞いたな?」ロクムは、片方だけになった耳を指さして云った。
「ああ、この耳がしかと聞いたぞ。グロウジ、グロンドルン、グロウバーン、いずれでもなく、……グリンザールと!」パズが云った。
「そして、死の淵にあると」男爵が続ける。
「病によってか?」リュガが訊ねた。
「ならん事だ」ロクムが云った。口元に残された傷痕から、ひゅうひゅうと空気の漏れる音がした。
「あのくそったれは、俺らの剣で死なにゃあならん」
「弱きもの、裏切りしもの、私生児の忌み子……グリンザールよ、死すべし……!」
「死すべし!」
「死すべし!」
「死すべし!」
「トゥヴェイクと血塗られたその徒弟、全て死すべし!」
最早、その場にある全ての人間の顔が、険しい剣士のそれに変わっていた。或る者は殺気を剥き出しにし、或る者は静かに燃えるような炎を瞳に宿した。いずれにせよ、今のこの時が、先程までの時間と連続したものであることが、キッド・ニールには信じられぬ程であった。 此処にいる師兄弟全てから、ただならぬ事態を肌で感じ取っていた。そして、それは酒に煽られた勢いなどでは到底無い。各の奥底から沸き上がって来ているらしき、耐え難い感情によるものであると思えた。そして皆が、ロクムの一言を待っているかのようであった。
「追え」車椅子の男が云った。 「雑踏に紛れてな」
キッド・ニールは、ロクムの虚ろな視線が自らにも向けられた時、一瞬、心の臓を鷲掴みにされるような緊迫感に襲われたが、直ちに感覚を切り替えると、口を堅く閉ざして無言で頷き、はだけた長袖の留め具をかけ直した。そしてキッド・ニールを含め、ロクムに指示された五名の腕利きは各の剣を腰に吊り直すと、幾人かは壁に掛けられた外套を乱雑に羽織り、急ぎ階段を駆け下りた。霧の街に出で、方々に散り、雑踏に紛れ、隻腕剣士らの進んだ道を探った。キッド・ニールはリュガと二人組を作って、後に続いた。今宵は霧が深い。容易なことではない。
「グリンザールとは何者なんだ」ニールは、数度躊躇った後、先を歩くリュガ師に訊ねた。「或いは、タルカン師とやらについても、俺はこの五年間で僅かを聞かされたのみ。今こそ俺に教えるべきだ、リュガ師」
「云うようになったな、ニール」後ろにキッド・ニールを引き連れたまま、振り返らずに歩むリュガが云った。「お前にも話しておくべきだろう。いや、お前は知らねばならない」
「だが」三つ編みの男、剛腕のフォブズが、左手の霧の中から現れ、二人の会話に割り込むようにして云った。「弱きもの、裏切りしもの、のろわるるべき私生児の忌み子。および片腕のくそったれ。それだけが、あの野郎を指し示すに十分な言葉だ!」
鉄の踵が石畳を踏み鳴らす音と、腰に吊った剣が揺れる音を伴って、三者は雑踏を掻き分けながら霧の中に消えていった隻腕剣士の後を追っていた。
リュガは後ろに引き連れたキッド・ニールに向けて語り始めた。
「今は亡き我らの師、タルカンのヴェクタルム鍛錬場で起こった大殺戮は、そのほぼ全てが、奴、グリンザールの裏切りに由来する」 フォブズに相づちを入れて、リュガは続けた。「七年、いや八年前の事だ。褐色の肌、悪鬼の如くぎらぎらと輝く碧の瞳、そして無慈悲なる曲線、ラーグニタッド刀。エターナル・ダスクを彷徨う下劣な剣士、忌々しくも浅ましき、腐肉あさりの死に神、貫きトゥヴェイクがこの灰色の都に流れ着き、如何なる因縁からか最早知り得ないが、タルカン師の徒弟五人を血祭りに上げた」
「そして二日後、奴はただの一人で鍛錬場へと乗り込んで来た」フォブズが後を受け持った。 「そこからは地獄絵図だ。俺達は丁度、ロヅメイグを駆けずり回っていた所で、鍛錬場から離れていた。トゥヴェイクの野郎を探すためにな」
「我々が帰り着いた時には既に、貫きトゥヴェイが道場にあった全ての者をただの一人で皆殺しに屠り、忽然と姿を消した後だった。……そして、いずこかへ消えていたのはトゥヴェイクだけでは無かった」
「そう、裏切りのグリンザールと共にな」
「虫の息のパーゴが言い残した。あの夜……・奴が夕食か酒に痺れ薬を忍ばせたに相違無いのだと」
「そうともよ! トゥヴェイクとやらの殺人剣が如何なるものかは知らんが、五十人からの剣士を、ただの一人で相手にするなど、人間業と思うか? そう、グリンザールだ。鍛錬場の中でも、際立って異様な存在だった。剣もまともに振れねえような奴は、死ねば良かったんだよ。あの陰気なカタワ野郎のせいで、俺達の運命は崩れた!」 フォブズは左手で剣の鞘を握りしめた。奥歯がばりばりと軋むほどに強く噛み合わされた。
「奴の手引き無ければ、我らの師が、流れの人斬り風情に後れをとったものか。なんたる無念!」 リュガは口惜しげに云った。「そして二年の後、西方の『王の街道』沿いを行くグリンザールと貫きトゥヴェイクが、同志によって見出された」 最後の部分をニールに訊ねた。 「どうなったと思う」
「そ奴が生きて此処にいるという事は」ニールは師兄弟のただならぬ殺気に気圧され、言葉を選びながら云った。
「そう」みなまで云わせず、リュガが遮った。「唯一逃げ延びた男を除いて、同志は皆殺しになった。油断するな、フォブズ、キッド・ニール。いかな死の淵にあるとて、き奴の剣は、無慈悲極まりない猛悪の殺人剣だ」
「だが、俺の知る限りのグリンザールは、陰気な腰抜け野郎だ。俺は未だに、あの野郎が剣客になっているなどとは、到底信じられんのだ。そして、俺はゆるせんのよ。あの野郎はのうのうと生き延び、しかし、かつてのタルカンの徒弟はこの七年、云われ無き侮蔑にまみれた、みじめな生を送らねばならなかったのだ」
「だが、今は奴も剣士、それも血に飢えた人斬りの端くれ。人斬りは皆、ただ死ぬことを嫌う。おのが身滅ぶとて、我らいずれかと相打つことを望むだろう」
「心配には及ばん、俺達は無敵だ」フォブズは吐き捨てるように云うと、瞳を殺気に満たし、雑踏を掻き分け、早足に先へと進んで行った。「あの時死んでおけば良かったと思わせてやる」
「リュガ師」隻腕剣士等の辿った道程を探し求めて、しばしの間、無言の探索の時間が続いた後、キッド・ニールは口を開いた。そして、我ながら何と場違いな事を口走ってしまったものかと、若き剣士は云い終わる前に後悔をした。「俺の独り立ちについての話ですが」
リュガはすぐさまに振り返り、ニールの顔面を拳で殴り飛ばした。キッド・ニールは軽い脳震盪を起こし、ぐらりと崩れて膝を曲げ、ゆっくりと座り込むようにして転倒した。掌が砂じみた石畳を擦り、間もなく冷気と、行き交う人々の靴音を伝えた。
「全ては、此度の仕事が片づいてから決められるべき事だ」リュガの声は、滅多に見られぬほどに殺気立っていたが、弟子に何事か言い聞かせるための、最低限の理性を失っては居なかった。「いいか、これは師と、仲間達の無念を晴らす、千載一遇の機なのだ。お前は確かに、タルカン師を知らぬだろう。俺の剣の兄弟達を知らぬだろう。かの虐殺が起こった七年前には、剣も知らぬ哀れな少年だったのだから。しかし、降り落ちる骸の歯を抜いて金を得ねばならなかったお前に、剣の道を示したのは誰か?」
「リュガ師、あなただ」ニールは無様にへたり込んだままで返した。さほど強烈な一撃だったという訳ではない。恐らくは、久方ぶりにリュガの拳を喰った、その事に驚いていたのだ。
「俺もそうだった。敢えては云わぬが、お前に近い境遇だった」そこまで云うと、前方を行く仲間達の位置を見失わぬように合図を送ってから、再び地に這う弟子に向かって、手をさしのべながら云った。「そして、俺に道を示して下さったのはタルカン師だ。師から子へ、師から子へと、道は連綿と続くのだ。目の前で俺が殺されたとするならば……お前はその仇に怒りを燃やすだろう」
「無論です」ニールは掌を目の前に差し出し、手助けを断る構えを見せると、きびきびとした動作で立ち上がった。
「それと同じ事だ。いいか、これはお前が一人前の剣士となるに相応しい試練と思え。考えろ、お前にとっては顔さえ知らぬ師父とて、道は途切れることなく、連綿と続いているのだ。そしてそれはさらにさらに遡る。偉大なる樹を思え、キッド・ニール」リュガは立ち上がった若き剣士の肩を二、三度叩くと、再び前方を歩く二人に向かって相づちを打ち、早足で歩み始めた。そして、ニールには見せなかったが、鬼気迫る形相を伴って、短く吐き捨てた。「そして、あの男は、我らの道を断ち切ろうとした」
キッド・ニールは思った。しかし、これまでの話しぶりから察するに、あのグリンザールとか云う死にかけの男に対して、夜襲を仕掛けるつもりなのは最早疑いようのない事実だった。それも、六対一の一方的な奇襲。寝台に眠る男に対して、次々に剣を突き立てる尋常ならざる様が想起され、嫌悪感をもたらした。やおもすれば、あの男の道連れらしき、奇妙な吟遊詩人をも巻き込みかねない。しかし、それすらも辞さぬといった殺気をリュガ師らは漂わせている。これでは、まるで夜盗か暗殺者の類では在るまいか? それは剣士の俺が求めるものだろうか? 違う、決してあり無い筈だ。
ロヅメイグの霧が再び、いつぞやの夜の如く、キッド・ニールの魂までを取り込むようにして飲み込んだ。石造りの街路をひた走った夜を思い起こすと、彼は何かしらが思考の隅に引っかかる感覚を覚えた。ならば、あの言いしれぬ不安の中で、俺の求めたものは何だっただろう。……これはやおもすれば、思いも掛けぬ所で、向こうから機が巡ってきたのではあるまいか。そうだ。相違無い。今宵、灰都で最後の鍛錬を終え、剣士として外の世界へと向かうための、機。……そして、ああ、今宵も会えるだろうか? 名前さえ知らぬ、銀色の髪の女。
さまざまの不確かな感情が入り交じり、腹の奥底で、なにやら熱いものが生まれた。若き剣士の中で、拍動と共に、思考が速度を上げていった。初めて人を斬った夜が思い起こされた。酒場の用心棒を請け負った時だった。だらしない小太りの、禿げ上がった博打打ち。殺すつもりは無かったが、奴は剣を持っていたし、それを抜いた。ほんの指一本も奪えば、片が付くだろうと思っていたが、そうはならなかった。びくつく死体の動きを止めようと、既にぼろ切れのようになったそれを、幾度も幾度も突き刺していた。死体は見慣れていた。しかし、過剰に殺すことは望んでいなかった。魂に傷を負ったような感覚だった。狼狽する俺を、リュガ師が支えてくれた。……タルカン師に思いを馳せることは、これまでに一度も無かった。しかし、そこから続く道がなければ、リュガ師から俺に続く道もまた、有り得なかった。巧くは名状しがたい何かが雷撃のように脳髄に到来し、忽ちのうちに全てのヴェールが剥がされ始めた。……記憶は、俺の知らぬ、其処へと帰りたがっていたのだ。師の道を逆に辿ることで、それは一つながりの輪となって、俺は満たされるに違いない……。俺を捕らえていた酩酊の牢獄は終わり、俺はこの灰都を後にする!
霧の中、行き交う人の群に紛れ、見えはせぬが、彼方に、そして此方に、雑踏を縫って進む師達の息づかいを確かに感じた。そして、自らもその中に在るのだと感じた。徐々に、隻腕剣士を追う隊列は速度を上げた。後に続き、剣の鞘を強く握りしめると、キッド・ニールも足を速めた。外套の胸元、真鍮瓶に残った果実酒が、僅か揺れた。
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