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S3第9話【タイラント・オブ・マッポーカリプス:前編】分割版 #5

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 左右に築かれた段状観客席の百名強の観衆は、一様に、緊張に顔をこわばらせていた。感受性の強い者の中には、張り詰めた空気によって耳や鼻から出血する者もいた。やがて……ニ者はアイサツした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」「ドーモ。ネザーキョウ、タイクーン。アケチ・ニンジャです」

 ニンジャのイクサはアイサツと共に始まる。アイサツをされれば応えねばならぬ。アイサツの最中に攻撃を行うのはシツレイであり厳かに慎まねばならない。古事記に記されし神話的礼儀作法だ。だがその典範が無くとも、このそれぞれの決闘者は自然に、導かれるように、アイサツを行ったであろう。

 鍛え抜かれたタイクーンの身体は実際大きく、四本の腕も相まって、山のようである。それを見上げるニンジャスレイヤーのなんと小さい事であろうか。だが彼の眼光は鋭く、一切の恐れも抱かず、目の前の敵を射抜かんとするが如し。この場のネザーキョウの者の誰一人、その挑戦資格を疑いはしなかった。

 テン、テ、テン……テテン……。タイクーンの寵姫達はオコトや笙リードを演奏し、イクサのアトモスフィアを高めていた。第一寵姫のララは陣幕を背に、メジャードーモらと共に座り、タチアイニンとしてこの決闘を見届ける覚悟である。(我が殿。この者を完全抹殺し、天下布武の祝いになされませ!)

「アニキ……!」ザックは失禁をこらえた。フィルギアは互いに合掌したまま動かない二者を凝視した。タイクーンの得物はカタナであり、ニンジャスレイヤーはヌンチャクである。既に、互いの武器は事前にあらためられたものだ。だがどちらもそれを用いる気配はない。少なくとも、今はまだ。

 黒ずくめの審判が赤白の旗を掲げ……そして、振り下ろした。「ハジ……」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーとタイクーンは同時に動いた! KRAAASH! 放射状の衝撃波が吹き抜けた! フィルギアは全ニンジャ動体視力を動員して最初のタチアイを見極めんとす!「ニンジャスレイヤー=サン!」

 タイクーンの腕は四本あり、通常のニンジャの二倍ある。つまり真正面からオスモウに出れば、その腕力がもたらす優位性は百倍にも高まるであろう。手と手がぶつかり、組み合えば、残った二本の腕で自由に顔面を殴りつけることができるのだ!「まずい……否!」フィルギアはタイクーンの後ろを見た!

 既にニンジャスレイヤーは空中だ! 初手の衝突から間髪入れず、蹴りながら上に飛び、タイクーンの掴みを回避したのである!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは振り向きながらスリケン投擲!「イヤーッ!」タイクーンは腕のひとつで裏拳を繰り出し、スリケンを弾きながら方向転換!「イヤーッ!」

 方向転換しながら、タイクーンは右腕二本を同時に振りかぶり、強烈なフックを叩きつけにいった!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは肩で受けた! その衝突力によって彼の身体は黒砂の上、タタミ3枚の距離をノック・バックした。眉間に皺寄せ、強烈なカラテを堪える!「イヤーッ!」

 タイクーンは黒砂を蹴り、飛びかかった! 空中でタイクーンはキリモミ回転し、伸ばした四本の腕でラリアットしながら突進する!(これは! 多腕カラテ奥義、センプケン!)フィルギアは息を呑んだ。

 センプケンは腕が四本以上のニンジャでなければ満足に操れぬ特殊なヒサツ・ワザである! 四本の腕が生み出す質量によって推進力を生み出し、旋風の如く衝突するワザマエ! 恐らく太古の昔、チャドー奥義タツマキケンにも何らかのインスピレーションを与えたと思しき殺人技だ!(まともにあれを受ければ、ニンジャスレイヤー=サンは……!)「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーもまた黒砂を蹴った!

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはむしろ回転をめがけて飛んだ。(バカな!? いや……アレでいいのか?)フィルギアの困惑は感嘆と安堵にかわった。ニンジャスレイヤーはタイクーンの肩に蹴りを入れていた。回転半径の中心近くは回転速度が低く、打撃が通るのだ!「ヌウーッ!」二者が、着地!

 彼らは再び互いに向かい合った。どちらも目立った負傷は見られず! どよめきがひろがった。この数秒のタチアイを見極められたのはニンジャのセンシばかりであろう。だが、吹き抜ける砂塵がその凄まじさを雄弁に物語っていた!「これは、マジにヤバい」フィルギアが呟いた。ザックが怯えた。「アニキ」

「タイクーンの奴、本気で仕留めに行ってやがる」「アニキがバラバラになっちまう……」「ニンジャスレイヤー=サンは勝ちます」コトブキが言った。「だって、勝率は99.9%です。オイランドロイドの精密な計算結果です!」「希望的観測はともかく、実際、奴は対応してるぜ」フィルギアが頷いた。

「俺だったら初手でザック=サンが言うみたいにバラバラになってた。だけど……そうか、ニンジャスレイヤー=サンにはナラクが居る……あのバケモノが助言を与えていれば……!」「それって……」ザックはフィルギアにさらに質問しようとした。だが、更なるタチアイだ!「「イヤーッ!」」

 タイクーンは四本の腕を高く振り上げ、足元に力強く叩きつけた。SMAAASH! 局地地震めいた衝撃波がジグザグに地を這い、ニンジャスレイヤーに襲いかかる!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは側転で回避し、前傾姿勢で側面へ回り込むように走り出す!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」タイクーンは凄まじい足払いを繰り出す! だがニンジャスレイヤーは反撃を予期しており、地に手をついてからのフリップジャンプで蹴り足を飛び越えた!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは空中で身を捻った。そして左足で蹴る! 右足で蹴る! さらに、左足!「イイイイヤアアーッ!」

「ヌウウーッ!」これに対し、タイクーンは四本腕のクロスガード姿勢! ニンジャスレイヤーの目が赤黒く燃え、連続のストンピングめいた蹴りが加速する!「イイイイヤアアーッ!」蹴る! 蹴る! 蹴る! 蹴る!「アニキ!」

「これは……ダンス・マカブレだ」フィルギアが呻いた。「かつてベンケ・ニンジャと共に旅したブル・ヘイケは、渡り鳥が飛び踊るがごときエリアル・カラテで知られた。空中からの連続攻撃で地上の相手に反撃させずに殺す……」「お……押してるぜ!」「やるじゃねえか……どこであのワザを」フィルギアは思い当たる。これを得意とするニンジャ。ザンマ・ニンジャだ。

(奴とニンジャスレイヤー=サンのイクサを見ていないが……ワザを食らって、盗んだッてのか)フィルギアは舌を巻いた。しかし、タイクーンはこのまま押し切れる相手ではなかった。四本の腕によるクロスガードは完璧であり、鉄壁めいて嵐のような上からの攻撃を受けきっていた。「イイイイ……」

「イヤーッ!」「グワーッ!」タイクーンは四本腕を力強く開き、ニンジャスレイヤーを一撃で弾き飛ばす! 斜めに飛ばされながら、ニンジャスレイヤーはスリケンを連続投擲!「イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ!」タイクーンは構わず跳んだ。二本腕を突き出してスリケンを指先で挟み取り、振り捨て、ニンジャスレイヤーに迫る!

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