S4第6話【アシッド・シグナル・トランザクション】分割版 #4
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「ヨウナシ=サン。辛抱しろよ。俺に任せろ。絶対に助けるからな。少しだけ我慢してくれ」ザナドゥは背中で気を失うヨウナシに声をかけた。一瞬後、横からフェイスレスがタックルをかけてきた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ザナドゥは跳んだ! そしてシダ植物めいた巨大樹をトライアングル・リープ!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」高く飛び上がったザナドゥは、眼下の駐車場にフェイスレス達が走り出てくるさまを見下ろし、肝を冷やす。「だが遅いぜ。イヤーッ!」ザナドゥは「注射習慣」のネオン看板を蹴り、再度トライアングル・リープした。跳びながら、両手に持ったスプレーを噴射した。
SPLAAASH! 桃色の煙が尾を引き、やがてそれは天上界の雲めいて輝いた。ザナドゥは中央口の雨除けに着地し、さらに跳んだ。「イヤーッ!」螺旋を描くペイント、複層的に重なる色彩、それはさながら、3Dデジタル・インスタレーションを現世に移したが如し。「イヤーッ!?」セイケン市民が仰天した。
病院断面図じみた上層階でカラテしていた患者、付き添い、ナース達は、黃金の光を遮るザナドゥの色彩に目を瞬いた。「何……?」彼らは輝く雲の彩りと、そのずっと先に小さく浮かぶ赤黒のアブストラクト・オリガミの構図を目の当たりにした。「私、何故カラテを……アイエエエ!?」ナースが悲鳴を上げた。ザナドゥが眼前に着地したのだ。
「……な? だろ!」ザナドゥは破顔した。彼はタマリバーの方角を振り返り、両手の指で目の前にボックスを作った。「キマってンだろ。リアルタイムの……構図がよ。マジで……!」「アイエエエ!」我に返った骨折市民が悲鳴! ナースがあわててベッドに寝かせる!
「そうだよ。セイケン・ツキはTPOを選んでくれッて話だ」ザナドゥはナースに話しかけた。「こ、こ、ここは3階……!」「ああ、俺、ヒキャク・パルクールのプロだからよ。それから、ペインターな」もう一度、彼はオリガミの方角を見た。輝く雲を添えた。それだけでも。それだけでも意味はあった。
そして彼は我に返った。「み……見ての通り、重傷なんだ。コイツ。治療を受けさせてほしい。カネなら払う」「急患……急患ですね!?」「そうなんだ。マジで頼むよ……!」ザナドゥはぐったりしたヨウナシを降ろし、ベッド脇の車椅子に座らせた。「カネは? 幾らだ」「でも皆、カラテしていて……」
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