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S4第2話【ケイジ・オブ・モータリティ】分割版 #3

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「アイエエエエ!」天井のダクトカバーが脱落し、その後、そこから人間が床に落下した。「ハアーッ……ハアーッ……ハアーッ、ゲホッ、ハアーッ!」彼、サイダ3は、咳混じりの荒い息を吐き、這いずりながら、周囲の気配を探った。アドレナリンが改造ニューロンを刺激。網膜に「安心」の漢字。

「ハアーッ……クッソ……ハアーッ、チクショ……」サイダ3は罵りながらガスマスクを外し、深呼吸した。「スーハースーハー。い、生きてる空気ジャン……!」だが彼は用心深く再びガスマスクを装着。「もう少しだ……エット」彼は廊下を四つん這いで進み、壁の階数表記を確認した。七階。「フー」

 中腰姿勢になった彼は、そのまま廊下を吹き抜けに向かって進んだ。このポンポン・ビルディングは真上から見れば正八角形で、中央がやはり正八角形型の吹き抜けになっている。彼はまずその吹き抜けに向かっていった。壁には「アソビ」「喧嘩」「性器」などの激しい文字落書きがスプレーされている。

 呼吸を整えながら、壁に手を付き、進む。壁のペイントは極彩色。「星野」。「団結心」。「スラムダンク」……。やがて彼はバルコニー風に一応の落下防止が施された吹き抜け部に到達した。やや危険だ。彼はまず上を見上げてヤバイ奴に見られていないか確かめ、それから再度後ろを見、下を見た。

 ビルは88階建て。空は随分遠い。そして下。7階の高さから落ちれば命が無い。サイダ3の目的は当然、この狂った檻からの脱出だ。だがこのビルは現在、隔壁が降ろされ、出入りは困難。彼はモヒカンヘアを立て直した。「チックショ……こっから……」カゴーン! その時、隔壁に異変。跳ね上がったのだ。

「何……?」サイダ3は目を瞬き、光と、床に伸びた長い影と、跳ね上がった時とさほど変わらぬ速度で無慈悲に再び落下する隔壁に注目した。ブガー! ブガー! ブガー! 警報音が鳴った。何かマズイ! 侵入者!?「ヤバ……!」サイダ3はキョロキョロと見回し、落下防止柵越しに覗った。侵入者は二人入ってきた。

 警報音はすぐに止んだ。罵りとガチャガチャいう物音が下から聞こえた。低層階のザンキ・ギャング達が走り回っているのだ。このフロアは大丈夫か? サイダ3は唾を飲む。この辺の奴らが、上で起きた事など知る筈もないから、サイダ3の腕のバーコードや鬼のエンブレムを見せれば、身内と思ってくれるだろう。堂々としていればいい。

「ザッケンナッテンダヨ」「コマッテンゾ!」「オラッショ!」ギャング・スラングを口々にかわし、2階・3階の吹き抜け沿いにサイバネ者達が並んで、銃を構えた。入ってきた二人は立ち止まり、見渡した。サイダ3はサイバネアイを調節した。「何だ……誰……アイエッ!?」クロスカタナ紋、確認。

 網膜ディスプレイに「総会屋」の漢字が灯った。即ち、ソウカイヤ。ソウカイ・シンジケート構成員。更には「ニンジャです」のアラートが灯る。「マ!?」サイダ3は反射的に一度深くしゃがみこんだ。「ソウカイヤのニンジャ?」……「ナニヤッテンノ?」サイダ3の後ろからキッズがいきなり声をかけてきた。

 このビルにはキッズも住んでいる。ポンポン・ビルディングの下階はもともと、ショッピングモール。ボンボリ市街から流れ込んできた市民家族が、ザンキ・ギャングに税金を支払って、保護してもらい、部屋を充てがわれて暮らしているのだ。サイダ3はキッズにキツネサインを向け、下がらせた。面倒だ。

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