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【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#9

🔰ニンジャスレイヤーとは?  ◇これまでのニンジャスレイヤー
S5第1話【ステップス・オン・ザ・グリッチ】

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「バカな」「早すぎる」「予兆なき攻撃だと!?」天守閣のニンジャ達が腰を浮かせた。「ウウッ……」パープルタコはうめき声をあげ、頭を押さえてうずくまった。ネクサスの投射映像が乱れた。「申し上げます。コトダマの帳が貫かれ、破壊されました」「アナヤ」パーガトリーが眉をしかめた。

「ネクサス=サン。パープルタコ=サン!」パーガトリーはまずは叱責の言葉を浴びせる。「コトダマとジツを織り合わせし防備はオヌシらの自慢のセキュリティであったろう。何故、かようブザマに破られしか?」「ンアアアッ……!」パープルタコは身悶えしていた。帳の破壊に伴う激しいニューロン・フィードバックだ。

「検証如何では、部門の許されざるケジメですな?」パーガトリーは扇子で口元を覆った。ダークニンジャが一瞥すると、彼はするりと立ち上がり、外舞台まで歩いた。そして空に浮かぶ三つの影を見た。鬼瓦ツェッペリン三機。「揚陸目的じゃな。あの武装は」ニーズヘグが並び立った。

「01001…あまりに手慣れた…010001……突入方法に……001001……感じられます」投射映像のネクサスが告げた。「01011……これまでの幾度かの強行偵察とは……0101001」「おもむきが違う」パーガトリーは言葉を引き継いだ。「鈍重なメガコーポの者共の浅知恵では、そう容易く修正は出来ぬ筈。陰で糸引く者やあらん」

「0100101」ネクサスの姿が消滅した。同時に、彼の声はニンジャ達のニューロンに鮮明に響くようになった。城の上空に複数のカイトが飛翔し、それらの捉えた映像が天守閣のタタミ上に浮かび上がる。「ゴウオオオン!」咆哮が空を揺らし、翼竜の影が横切った。迎撃部隊である!

 プテラノドンめいた翼竜の背に立ち、ナギナタを構えるのはファイアウィルム。さらに二匹、やや小ぶりな眷属が続く。それらの背にもニンジャがいる。ニムロッド、ヴィングイェルムだ。高速接近する翼竜に対し、鬼瓦編隊は砲塔を旋回させ、走査レーザーを放つ。

「イヤーッ!」翼竜が加速! DOOOM! DOOOM! DOOOM! 彼らをめがけ、割れるような音と共に電磁砲弾が発射された。ファイアウィルムは砲弾を回避しつつ、先頭の鬼瓦ツェッペリンに迫った。鬼瓦ツェッペリンは実際その巨大な合金鬼瓦によって艦橋への直接攻撃を防ぐとともに、敵兵を恐れさせ、士気を削いでみせる。江戸時代に取得されしオムラ社の特許であった。

「イヤーッ!」ファイアウィルムが切り込み、鬼瓦に斬りつけた。火花が散り、鬼瓦合金に裂け目が生じる。返答代わりの機銃掃射を避けながら、彼は恐れる翼竜を駆り、ヒット・アンド・アウェイ重点。そして後続のニムロッドは翼竜から勇ましく回転跳躍で飛び降りる!「イヤーッ!」

 ニムロッドが落下しながら構えたヤリの先端部は炎をまとって赤熱した。それを巨大なツェッペリンの背に突き刺した。「イイイイイヤアアアーッ!」装甲を裂きひろげながら走り出す! 上部ハッチが開き、黄色い装甲のロクハラ兵が阻止に殺到!「ヤメロヨロシク!」「ウケテミロヨロシク!」

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「アバババーッ!」だが、彼らがニムロッドのもとへ到達することはない。続けて着地したヴィングイェルムが、恐るべき二刀流戦斧にて彼らを次々に殺していったのだ! 砕ける装甲! 吹き飛ぶ四肢! サツバツ!

「イヤーッ!」既にファイアウィルムは後続のツェッペリンにマーキングじみて切り込み、鬼瓦頭部に攻撃を仕掛けていた。すると次なる迎撃部隊! 黒いカンオケめいた飛翔兵器シャドーバージの背にサーフィンめいて立った白兵ニンジャ達である!「ガンバルゾー!」「ヒカエ・オロ!」雄叫び!

 さながらそれは殺戮ハンマーヘッドシャークの群れが巨鯨を取り囲み責めさいなむが如し! ツェッペリンの電磁砲や機銃掃射では、精強なるザイバツニンジャの速度には対応できない!「ハーッハハハハ! 盛り上がってきたな!」ニムロッドはますます意気軒昂、赤熱ヤリで装甲を裂く速度を上げる!

「イヤーッ!」ニムロッドの眼前の上部ハッチから黄色装甲のニンジャが回転跳躍で現れ、巨大なスタンジュッテでアンブッシュ殴打した。ZAAAAP!「グワーッ!」殴られ、怯むニムロッド!「イヤーッ!」「グワーッ!」回し蹴り! 吹き飛ばされ、バウンド! ヴィングイェルムが舌打ちし、入れ替わる!

「ドーモ。サンダーストライクです」巨大なスタンジュッテ二刀流を胸の前で交差させ、ロクハラのニンジャはアイサツした。「ドーモ。ヴィングイェルムです」ヴィングイェルムもまた、得物を胸の前で交差させてアイサツに応えた。「「イヤーッ!」」たちまち二者は激しい応酬を開始!

 KA-DOOM! 彼らの肩越し、ツェッペリンの一機がシャドーバージ部隊の執拗な攻撃に根を上げるかのように大きな爆発を生じた。機体が斜めに傾き、黒煙を吐きながら落下してゆく。「弱敵!」ヴィングイェルムが吠えた。「サラリマンの集まりめが! ケチな社葬で弔われる雑魚はヴァルハラにも入れぬぞ!」

「ほざけ、時代錯誤の烏合の衆! 貴様らは愛社すら知らぬ落伍者の集団だ!」サンダーストライクはスタンジュッテで斧を打ち返した。激しい雷光が散る。通常であれば得物を通して感電してしまうところだが、斧に込められたカラテ・エンハンスが通電を妨げている。「コシャクな真似を。だがインダストリの力は汚らしい魔法には負けん!」

 雷光が散り、激しい熱と光にヴィングイェルムが怯んだ。「インダストリ!」挟み込むような二刀流打撃! だが一瞬早かったのはヴィングイェルムだ。「イヤーッ!」サマーソルト斧旋回によって企業戦士は真っ二つになった!「サヨナラ!」爆発四散! 雪崩を打つ後続兵を制するのは、かろうじて転落をこらえ、復帰してきたニムロッド!

 彼らの肩越し、炎上する先頭のツェッペリンから、格納されていた強襲兵力が、蟻めいて落下してゆく。城下町の市民は避難を済ませている。地上では顔なき影のニンジャ達がヤリを持ち、12人ずつのユニットで待ち構えている。ネクサスやライゾーム、エコーなどのコトダマンサーが転移させたフェイスレス部隊である。殺戮が始まった。

「よいぞ。押し殺せ」外舞台から見渡すパーガトリーが戦局を評価した。「愚かな企業勢力めが。先だっての益体もなき強行偵察の失敗から学ぶものはなかったのか」彼は勝ち誇る自らの言葉に違和感をおぼえた。そして眉根を寄せる。「否……それはあるまい」「何じゃ」腕組みするニーズヘグが見た。

 パーガトリーは答えた。「ここまでの我らの兵の動きや良し。畢竟、これらツェッペリン編隊を放置に任せる事はできぬからな。……しかし、」DOOOM! 激烈な重低音が波を打ち、空が歪んだ。オゾンホールめいて破られた城のコトダマ障壁はすぐに修復措置が取られていたが、ツェッペリン編隊突入箇所はいまだ薄い。そこが破られた。

 KRAAASH……KA-DOOOOOM! 轟音! そして激しい震動! 先程のツェッペリン編隊とは打って変わり、流星めいた速度・角度で城壁を破壊し、城下町に斜めに突き刺さったのは、不気味なマグロ……否、むしろマグロ解体刀めいた船体だった。それだけでも甚大な被害だが、なにかそれに留まらぬ不穏なアトモスフィアを放つ!

 船体の上空にはホログラフィじみた雷神紋がノイズとともに投射された。「来たな!」ニーズヘグは己のニンジャ第六感で満足なイクサを察知、猛々しく笑い、天守閣外舞台から眼下の街へ躊躇なく身を躍らせた。パーガトリーは右将軍を嫌悪と共に見送ると、自らはカラテの力場を纏って上へ浮揚する。

『重点、重点、これはロクハラ・コーポレイションとヤルキ重工による共同調査活動であり、オムラ・エンパイアによる侵略行為ではない。オムラは地球市民の平和活動を推奨な』欺瞞めいた電子音声が響き渡った。ツェッペリンが燃えながら通過した地点では、既に降下した戦力がイクサを始めている。

 フェイスレス部隊はヤリやサスマタを用いた戦術でロクハラ・ヤルキの兵卒を雪隠詰めしてゆくが、降下戦力の中には手練れた企業ニンジャが混じっていた。アイアンストームと名乗ったニンジャはオムラニウム装甲と四基のヘヴィガトリング砲を用いる危険なニンジャで、無貌の雑兵では相手にならぬ。

「私はロクハラへの出向社員だが、出向元は明かす必要無し! コンプライアンスだ!」アイアンストームは強襲艇と同様、上空にホロ雷神紋を投射し、四基のガトリングで凄まじい破壊を生み出していた。「サヨナラ!」コズミックバロンは弾丸の嵐に圧殺されて爆発四散、ネオネイトは顔面を掴まれた。

「グワーッ!」もがくネオネイトを右腕一本の力で固定したアイアンストームは、四基のガトリングの角度を変えて射線を集中。2秒で屑肉に変えた。「アバババーッ! サヨナラ!」ナムアミダブツ!「ご注意を。真打ちが来ますぞ」傍らで、ヤルキのニンジャ、ネンダイキが囁いた。

「イヤーッ!」「イヤーッ!」崩壊した家屋をトライアングルリープしながら、駆けつけるのはザイバツニンジャのスパルトイとディミヌエンドだ。「なんとまあ年収矮小な……」アイアンストームは残酷な笑みを浮かべ、両肩と両脇腹のデバイスが支えるガトリング砲を再び荒ぶらせる……!

 総指揮たるダークニンジャは玉座にて全ての情報を精査。このイクサの推移を見守っている。その傍らではコショウのルミナントが身体を発光させて最適な光源となりながら、無数に開かれるコトダマモニタと手元のマキモノを付き合わせ、情報があるじのニューロン速度を滞らせぬよう努めている。

 パープルタコはザゼンを深め、トランス状態となって、城の超自然の護りを再設定するとともに、迫りくる敵影の有無を感知する意識の網をさらに遠くまで張り巡らす。予断は許されぬ。城内では兵士の降下地点と突撃艇の突入地点、二箇所に戦力を割かねばならぬ。しかも更なる敵の援軍も充分有り得る。

 今やキョート城は完全なる戦場と化した。その只中で、我らがニンジャスレイヤー、マスラダ・カイは如何に!? ……彼は依然、外舞台に佇み、イクサに与する事はないのだった。険しい表情で立つ彼の横にはフローライトの姿があった。イクサの混乱に乗じて利敵行動を取らぬよう監視する役目である。

「わかっていますか? 私は逸る気持ちを抑え、胡乱な貴方を見守っていなければならない!」フローライトは責めた。「カラテの足らぬ者では抑止はできぬ。ゆえに私が任じられました。本来ならば今すぐにでもパーガトリー=サンの御期待通りの働きをしてみせたであろうものを……貴方のせいで私は動けず、マスターニンジャ一人の戦力が削がれています。この……傍観者風情めが……!」

「どうでもいい」ニンジャスレイヤーは言った。「おれは貴様らの客だが、傭兵でも何でもない」「言葉には気をつけなさい。イクサの緊急時において、グランドロードの身に余る御目溢しがいつまで有効やら。貴方が何を考えているか知らぬが……」「今おれが考えているのは、帰りが面倒だという事だ」

 フローライトは静かな怒りの息を吐いた。彼女のアームレットはコソク・ジツの発動を待つように、生き物めいて光っている。「……」ニンジャスレイヤーが視線を定めた。遠く、城下町の一点だ。フローライトは彼が見つめる先を目で追った。それは強襲艇の「着弾」地点にほど近い場所だった。

 腰の引けた動きで周囲を見回しながら、恐る恐るといった様子で街路をゆくのは、明らかにザイバツのセンシでも企業軍でもない者達だ。エンジニアらしき男と、イタマエらしき女性。職人風の老いた男である。「何? あれは」フローライトの口を衝いて、非難の言葉が出た。「まさか家の様子を見に?」

 フローライトは苛々と溜息をついた。「この緊急時に……あまりにも愚かな。非ニンジャの屑は軽々と我らの最悪の想定を超えてきますね」「ここの連中か」「恥ずかしながら、そのようです。非戦闘員は全員ホンマルの中に避難し、バリケードの建設に従事している。敢えてこのとき市街に出てゆくとは。度し難い違反行為です」

 フローライトは不快感に眉根を震わせたが、やがて微笑みを浮かべた。「愚昧な者にはふさわしき報いが待つ。顧みられる事なき死を……」「イヤーッ!」カラテシャウトを残し、ニンジャスレイヤーは外舞台から下へ跳んでいた。フローライトは息を呑んだ。呪いの言葉を吐きながら、彼女は後を追った。

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