S3第1話【エンター・ザ・ランド・オブ・ニンジャ】#1
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エイジ・オブ・マッポーカリプス シーズン3
【エンター・ザ・ランド・オブ・ニンジャ】
せせらぎに魚が跳ね、木洩れ日に銀の鱗を輝かせた。穏やかな風に揺れる赤いモミジの下を歩いてくるのは、人間離れした美しさをもった女だ。ネオサイタマの人間が彼女を見れば、それが人間ではなく「オイランドロイド」であるとわかるだろう。しかも彼女は単なる機械ではない。自我を持つ、ウキヨと呼ばれる種族だ。
装いはアオザイ。明るいオレンジの髪を翡翠色の髪留めで留め、瞳の色もまた翡翠。瞳孔の奥には翼持つオイランドロイドの刻印があった。彼女の名はコトブキ。その手には歪んだバケツと手拭いがあった。彼女はせせらぎに身を屈め、手拭を洗い、バケツに水を汲んだ。
風が吹き抜けると、モミジは音を立てて揺れる。「とても美しい土地ですね」彼女は微笑み、呟いた。視線を川向こうに向けると……藪の間に立つ巨大な影と、目が合った。「GRRRR……」唸り声をあげ、涎を垂らすのは……アブナイ! クマだ! しかも瞳は赤く光っている! コトブキは息を呑み、後ずさった。
並のクマ、あるいはバイオパンダ程度の獣であれば、コトブキは持ち前のカンフーで退治する事ができるだろう。しかしそのクマはどこか異様なアトモスフィアを持っていた。理由はすぐにわかった。カラテの証……黒帯を締めているのだ! コワイ!
「ゴアアアオオオン!」次の瞬間、クマは回転ジャンプで川を飛び越え、コトブキに襲いかかった! 繰り出されるのは獣じみた踵落としである!「ハイヤーッ!」コトブキは間一髪のバック転で回避、カンフーを構えた。「これは一体……!」コトブキは訝しむ。確かに獣だ。だが……。
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