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S3第4話【ヨロシサン・エクスプレス】#5

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 緑の丘が連なり、遠くに見える湖は光り輝いている。ヨロシンカンセンは風光明媚なポイントで停止した。ヨロシサンのクローンレンジャーが遠巻きに車両を警備する中、車外にベンチやテーブル、パラソルが設置され、サンドイッチと紅茶を決め込む者達もいた。

 客室の者達も、実のある情報がどうやっても得られない事がわかると、自室に戻って映画を見たり、シアツ・サービスを呼んだり、思い思いに楽しみ始めた。カチグミ喧嘩せず。……しかし、そのような、ある意味のどかな風景の中で、S食堂車両は今、完全に緊迫したシチュエーションを迎えていた。

「実際に聴取したい方々にくわえ、列車内に居られるニンジャの方々はまず全員、この車両に集めさせていただきました」サガサマは食堂車をゆっくりと歩きながら言った。マスラダは憮然として腕を組み、テーブルについている。車掌は彼にあからさまな疑惑の視線を向ける。コトブキは胸に手を当て、今にも泣き出しそうだ。

「アニキ大丈夫かな」ザックがコトブキに囁いた。「信じましょう」コトブキは震え声で答える。「し……信じるしかありません。きっと、事情が」「それで、ヤモト=サンとやらは、どうして居らんのだね!」車掌が苛立った。「知るか」マスラダが答えた。車掌は凄い顔をし、サガサマが慌ててなだめる。

「オイ、何でもいいから、早く結論を出せ」キャスケットがテーブルをガタガタと揺らした。「待ってられねえ。何でZBRキメに行ったらいけねえんだ? ア?」「黙れキャスケット=サン。ククク……」サクリリージが注意し、ほくそ笑む。彼の眼差しは不穏だった。だがニンジャはたいてい不穏なのだ。

「不愉快だ!」キモノ姿の中年のニンジャが不平を述べた。彼の名はカナスーア。「ワシは確かに古物蒐集には一家言もつ極めて文化レベルの高いニンジャだ。ここに集められたような血生臭い連中とは違ってな。だが、ニンジャだというだけで疑うというなら訴訟を提起する準備あり!」

「オイオイ……オッサン、最初からやけにテンション高いじゃねえか」モヒカンのニンジャがジャックナイフを舌で舐め、威嚇的に見た。彼の名はアクセルジャック。「自分が犯人だっていう事を隠したいンじゃねえのかァー?」「なんだと!? 許さんぞ!」カナスーアが椅子を立った。「訴状を送ってやる!」

「訴状? ケケケ、俺は住所不定だぜ」「何でこんな奴がカチグミ列車に乗っているんだ! ヨロシサンのブランド崩壊だこれは!」「まあまあ、お二方……どうかこらえて」「俺は冷静だぜ! そこのオッサンが焦ってやがるんだ。罪がバレるのが怖くてな」「あ……焦るだと? 罪だと!? 名誉毀損で訴えてやる!」

「は、はじめますよ!」サガサマがファイル・バインダーをテーブルに打ち付け、注目させた。「事件のあらましをある程度ご存知の方もおられるかと思います。SS客室車両を使用していたヨロシサン・インターナショナルの社員ニ名が殺害され、室内が荒らされました。彼らは博物館から骨董品を運搬する最中でした」

 カナスーアの顔が青くなった。サガサマが続ける。「室内に特異な薬物反応等はありません。そして被害者の一人、ケリグマケラ=サンはニンジャであり、爆発四散なさっていました。つまりですね、ニンジャのカラテによって殺された事は間違いないのです」

 サガサマが手招きすると、それまで呆然としていたアシスタント役のコトブキは慌てて立ち上がり、横にやってきた。彼女はファイルのページをめくり、一同に、白蛇ナイフや赤いダイヤ、茶壺等の写真を示していった。「これら美術品はアタッシェケースに保管されていましたが、荒らされそうに……」「ワシじゃない!」

「オ、落ち着いてください。まだ貴方と決めたわけでは……」「まだ、だと!? 訴えるぞ!」「ケケケケ!」アクセルジャックが手を叩いて笑い、キャスケットはテーブルを殴りつけた。「オイ、いけすかねえ文化ニンジャ野郎! もうお前が犯人でいい! 終わりにしろ。自首しろ!」恫喝!

「違うッ! ワシは強い顧問弁護士を持っている!キャスケットと言ったな? ここでの言動には気をつけろ。絶対に後悔することになるぞ……」「ウルサイゾ!」コトブキが怒声をかぶせた。「わたし今すごく考えてるンです! 心に余裕がありません! 喚かないでください! 気が散るんですよ!」「ア……」

「どうか、彼女にめんじて」サガサマが愛想笑いを振りまき、カナスーアは椅子に座り直した。アクセルジャックはコトブキに獰猛な笑みを向けた。サガサマは咳払いした。「そんなわけで、ニンジャの皆さんを集めさせていただいたワケでして……昨晩深夜に何をしてらしたか、教えて頂ければと……」

「瞑想だ」サクリリージが言った。「ああ、俺が保証するぜ。この変態野郎は毎日ザゼンする」キャスケットが請け合った。「同室の方の証言は採用しづらいですが、わかりました」「ア? 俺は食堂車で引っ掛けた女とその横でファックしてたぜ。証人に呼んでこいよ。名前は確かレイチェルだ」「おお……」

「俺のザゼンの質は高い。このクズが横で何をしようと、どうでもいい」「グフフ……」「オ、オホン。ひ、必要であれば、呼んで確かめますね」サガサマは困惑して咳払いした。次にカナスーア。「ワシは……寝ていた。本当だ」震えながら言う。全員の視線が集まった。「本当だ!」

「深夜に発生した事件です。まして列車内。普通のことですよ。その点では、ご安心を」サガサマが言った。「おれもだ。寝ていた」マスラダが付け加えた。車掌はマスラダを睨んだ。「私が見たところ、貴殿はかなり不審な行動をしていますぞ。同室のニンジャを逃したのですから!」「逃してはいない」

「食堂車の皆さんは昏睡状態に……」車掌は食い下がる。マスラダは首を振った。「おれから言う事はない。食堂車で気絶した奴が居れば、おれが深夜にSS客室のヨロシサンの奴を殺した証拠になるのか?」「エ……いや、それは……」「スミマセン、続けますね」サガサマがアクセルジャックを促した。

「俺のアリバイか? ……そんなものはありはしねェ……ナイフをよォ、研ぐんだよ。コレクションを全部並べて、一本、一本。お気に入りの拷問ポルノをBGVにしながら、丹念に、丹念にな……次に腹カッさばいてやる奴は誰なのか、どんな肉質なのか、想像してるとよ、勃ちが、止まらねェ……ア! ルームサービス間違えた奴が、慌てて逃げたな」

「コ、コイツを逮捕してくれ!」カナスーアが慌てた。「生きた凶器だ! どうしてこの列車に!」「決まってンだろ、カネモチのガキを誘拐して身代金をゲットしたんだ。贅沢最高だぜ。ま、ガキには危害加えなかったから安心しろや。ケケケ」「アナヤ!」「と、とにかくアリバイ有りと」サガサマは額の汗を拭った。

「すごいクソ野郎です」コトブキが仰天した。サガサマは説明した。「当事者同士テウチになって、被害届けも出ないケースがあります。そうなりますと、なかなかメガコーポで逮捕というわけには。賞金稼ぎのニンジャが依頼を受ける事もありますが……今はこの殺人事件に集中しましょう」「ウーン」

 サガサマは車両内を歩き回り、ニンジャ達を見渡した。サクリリージとキャスケットにはアリバイがある。アクセルジャックは極めて危険なニンジャである事が明白。サガサマはチカハのデータベースをコールし、アクセルジャックの推定前科を調べたが、多すぎて意味がなかった。それでも彼は無関係と見える。

 アクセルジャックは、これみよがしに見せつけている通り、ジャックナイフが凶器だ。無数の刃物を持ち運び、切り裂いて殺すニンジャである。だがヨロシサンの非ニンジャの社員の死体の傷は刃物によるものではない。不完全だが、アリバイもある。シロだ。……では、カナスーアは。

「なんだね。なぜ、なぜ私を見る」カナスーアはサガサマを睨んだ。「まさか、骨董品が荒らされかかっていた事を理由に、この文化人たる私を疑うと……? そういう事なのか? 茶器があるから何だというのだ!」「確かに、貴方どうやら有名人でいらっしゃる。私、不勉強でしたが」サガサマはこめかみに触れた。

「それはそうだ! 私は講演会に引っ張りダコだぞ。私は古物商であり、美食家でもあるんだ。名店推薦レビューには多数の『良い』がつく! わ、ワシに逆らえん奴は沢山いるぞ!」「社の与信データベースの返してきた情報では、その……貴方の講演が行われた都市で、公演期間中に博物館荒らしが起こった事があったようですね」

「何?」「犯人が逮捕されていないようです。この件が、貴方のお名前に、関連付けられていますが……その……」「名誉毀損すぎる! 半日後には貴様のカイシャと貴様自身を訴えてやる! ワシがニッタ・カタツキを盗むために殺人したというのか!?」「さ、さすが……茶器の名前が写真一枚ですぐに?」

「ア……とにかくやっておらん!」カナスーアは否定した。「ニッタは有名な茶器だろうが! ナショナル・トレジャーだ! ワシのようなメイジンならば一瞬でわかる!」「ほれ見ろ! やはりそのオッサンだ! 時間の無駄だッ!」キャスケットが椅子を蹴り、ズカズカとカナスーアに近づく!「死刑にしろ!」

「なんだキミは! 暴力は……」慌てるカナスーア! 凄むキャスケット!「犯人だの、どうでもいい。俺には確かめてェ事があるンだよ!」「はははは、やめておけキャスケット=サン。力を温存しろ」サクリリージは笑いながら咎めるが、止めはしない。キャスケットは拳を振り上げる!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」割って入ったのは、サガサマだ! 左腕の肘先を盾めいてかざし、右掌を添えて、キャスケットの拳を受け止めた。バチッ、と音を立てて、サイバネティクスがノイズ火花を散らした。「どうか、文明的に……!」サガサマは強調した。キャスケットは鼻を鳴らし、拳を引いた。

「ワシは、やっていない! フザケルナ!」サガサマに守られたカナスーアが我に返り、激昂した。「ワシは……絶対にやっとらんぞ! 証拠を出せ! ワシはまだ……」「まだ?」意識を集中させていたコトブキが聞き咎めた。「今、なんと?」「う、うるさいぞ! ウキヨめが! イヤーッ!」チョップ攻撃!

「ハイヤーッ!」コトブキはカンフー・カラテでカナスーアのチョップを逸らし、顎に掌打を返した!「グワーッ!」カナスーアは怯み、身構える!「おやめなさい!」そのときサガサマが二人の手を掴んで止めた!「コトブキ=サン! 貴方も冷静に……冷静……ン?」彼女の足元に、何かが落ちた。

「……!」慌てて拾い上げようとしたコトブキに先んじて、サガサマはそれを取った。「……これは……オリガミ……」然り。ツルのオリガミ……縁が焼け焦げている。「ああッ……!」コトブキが悲鳴をあげた。マスラダは腕を組んだまま、俯き、その表情は窺い知れない。

「これは」「違うんです!」コトブキが奪おうとしたが、サガサマは躱した。「オリガミだ。何故あなたがこれを隠そうとしたのか……つまり……ええと、これは……」(マスラダ=サン)コトブキはマスラダを見た。(スミマセン……もう、庇いきれない……でも、本当に貴方なのですか……?)

 だがマスラダは、じっと床を見つめていた。「違うんです、と来たか」キャスケットは興味をそそられた。そして一瞬の隙をつき、サガサマの手からオリガミをひったくった。「ホホォー。コイツは間違いないぜ」「やめろ。キャスケット=サン」サクリリージが言った。今度は有無を言わさぬ語調だった。

「索敵にノイズを混ぜるんじゃあない」「……フン」キャスケットは意外にも素直に従い、サガサマから離れた。サガサマとコトブキはきょとんとして、互いを見た。カナスーアは逃走のタイミングをはかり、ドアをちらちらと見ていた。マスラダはじっと床を見続ける。

 やがて、テーブルのひとつの陰から、小さな蝶のオリガミがひらひらと飛び出てきた。マスラダが目で追っているのは、そのオリガミだった。オリガミは桜色の光を帯び、なにかを探すように飛び続けていたが……やがて、床の一点に着地、静止した。「わかった」マスラダは頷き、不意に立ちあがった。

「え?」「マスラダ=サン?」サガサマとコトブキが目で追う中、彼はずかずかと車両を進んだ。そして蝶の着地点で片膝をつき、チョップを振り上げた!「……イヤーッ!」KRAAAASH! 彼の鋭利なチョップ突きは床を砕き、抉りぬいた!「グワーッ!?」床下から何者かの悲鳴!

「マスラダ=サン!?」コトブキは二度叫んだ。マスラダは床下からニンジャを引きずりあげた! 然り、ニンジャである!「グワーッ!」襟元を掴まれ、苦悶しているのは、腹部に吸盤じみた奇怪な機構を有するニンジャであった! その上腕にはアケチの印あり! ネザーキョウのニンジャだ!

「そんな! 犯人は!?」コトブキはネザーキョウに恐怖する暇も惜しみ、マスラダに問うた。「コイツだ。打ち合わせ通り、お前たちが時間を稼ぎ、おれが探し出す。そういう手筈だろ」「は……離せ!」ニンジャがマスラダに吊り上げられた状態で蹴りを放つ!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」KRAAASH! マスラダはニンジャを床に叩きつけた。「グワーッ!」ニンジャはウインドミル蹴りを繰り出して牽制、間合いを取り、起き上がりった。「き、貴様……何故わかった……!」呻き声をあげ、カラテを構え直す。……車両内のニンジャ達が、全員身構えた。

「どうでもいい」マスラダは無慈悲に言い放った。だが読者の皆さんには、彼の居場所をマスラダが見破った理由を説明すべきだろう。答えは蝶のオリガミにある。ヤモトはまだ、この列車を離れていない。

 ……彼女は昨晩、ニッタ・カタツキを強奪しようとした敵ニンジャのもとへ駆けつけた。ニンジャは狼藉を行った直後であり、アタッシェケースを物色しようとしていた。ヤモトに気づき、驚くほどの敏捷性で逃げ去ろうとしたニンジャを、ヤモトはオリガミ・ミサイルで攻撃。不覚にも仕留め損なった彼女であったが、オリガミ・ミサイルが与えた傷を追跡するという手段が残されていた。

 ニンジャは目的を果たせていない。ゆえに列車内に潜伏し続け、必ず戻ってくる。それがヤモトの見立てだった。だが、ヤモトは何故、この食堂車にとどまって、他の者が居る中で追跡行為を行わず、ただマスラダに「蝶を追え」とだけ伝えるに留めたのだろうか? 不確実さが増したというのに?

 それはお答えできない。今はまだその時ではない! ……今は見よ、マスラダのオジギを! オジギの瞬間、彼のフードはほどけてマフラーめいた赤黒の布となり、装束が形成された。彼は懐から取り出した「忍」「殺」のメンポを装着し、顔を上げた。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」

「ドーモ。デスリモーラです」ニンジャはオジギを返した。ニンジャスレイヤーの名を耳にした時、サクリリージは強い心の動きを押し殺した。それよりも今、為すべき事があった。彼とキャスケットの目的の第一が、まずは達成された。彼はフワリと浮いた桜色の蝶を見、それから天井を見上げた。

「そこか」サクリリージはニヤリと笑った。デスリモーラは威嚇的に周囲を見渡し、カラテを見せ、牽制した。そして……跳んだ! サガサマの横に積まれたアタッシェケースをめがけ!「モハヤコレマデ! イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがアンダースローでスリケン投擲!「グワーッ!」

「ケキャーッ!」次の瞬間、もっとも早く動いたのはアクセルジャックだった! 残虐なジャックナイフがデスリモーラの背中を貫き、引き裂いた!「グワーッ!」血飛沫があがる!「アイエエエエ!」車掌悲鳴!「ケキャキャーッ!」アクセルジャックがナイフを振り下ろす! デスリモーラは這って躱す!

「イヤーッ!」「グワーッ!」逆さ蹴りがアクセルジャックの胸を打ち、吹き飛ばす! 手負いだがそのカラテは確かだ。しかもデスリモーラの手には神秘的な茶壺が一瞬にして掴まれていた!「茶器が!」カナスーアが叫んだ。「イ……」「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーがデスリモーラにツカツカと近づき、顔を蹴る!

 だがデスリモーラは茶器を手放さない!「偉大なるタイクーンよ! 絶対に……」「イヤーッ!」「グワーッ!」サガサマがチョップを振り下ろし、デスリモーラの肩を割る! デスリモーラは床に叩きつけられ、そのまま這って逃げる!「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーが背中を踏みつけた!

「ザ、ザマア見ろ! ペッ! ペッ!」カナスーアは、もがくデスリモーラに唾を吐きかけた。「全くもって一切合切コイツが悪い! ワシ……私は清廉潔白なニンジャ文化人だぞ! 疑った貴様らの事は、適切に対処してやるからな! こんな所にいられるか!」ドアに走る!

「ま、待ってください」サガサマがドアの前に立ち、遮った。「私は、その、問題解決を請け負った以上、積み荷の安全確保の為に、確かめなければなりません」「何がだ!」「貴方が茶器を盗み出す計画を立てていたのではないかという疑いを、私は持ってしまいまして……」手を掴む! カナスーアのこめかみを汗の粒が流れた。「やめ……」

 その時であった。ニンジャスレイヤーに抑え込まれたデスリモーラの身に異変が訪れた。激しく痙攣し、血を吐き始めたのだ!「アバーッ!」インタビューの危険を冒さぬ為に、彼は奥歯の劇毒を割り、飲み下したのだ!「サヨナラ!」爆発四散!「ヌウッ……!」ニンジャスレイヤーは咄嗟に防御姿勢を取った。

「アバババーッ!?」予想だにせぬ方向から、別の悲鳴があがった。車掌の胸にチョップが突き込まれ、心臓がえぐり出されていた。やったのはサクリリージだった。「アババババーッ!?」なぜ殺されるのかすらわかぬまま、車掌は血を吐き、絶命した。

 再び、車内のほとんどの者が状況を捉えられなくなった。「いいぜ! やれ!」キャスケットが拳を打ち合わせ、サクリリージに叫んだ。「それはこっちの台詞だ、キャスケット=サン」サクリリージは掴み出した車掌の心臓に力を込めた。「イヤーッ!」心臓が不穏な光をはなち始めた。「イヤーッ!」天井に投擲!

「……!」ニンジャスレイヤーはニンジャ第六感で察知! なにかまずい! 彼はザックに飛びかかり、覆いかぶさった。「アイエエエ!」ザック悲鳴! そしてコンマ01秒後! KA-BOOOOM! 心臓が、爆発した!「ヘァーハハハハ!」粉塵のなかで笑い声をあげたのは、キャスケット! 手をかざす!「イヤーッ!」

「ンアーッ!?」爆発によって天井が吹き飛び、亀裂の外で聴こえたのはヤモトの叫び!「ヘァーハハハ……捕まえたッてンだよ! イヤーッ!」キャスケットは両手を振り下ろす!「ンアーッ!」凄まじい勢いで落下し、床に叩きつけられたのは、ヤモト・コキ!

「さあて! やるか! やるか! やるかァ!」サクリリージは、笑い出した!

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