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【ニャンニャスレイニャー・マタタビ】前編

◇総合目次 ◇初めて購読した方へ ◇ニャンニャスレイニャー第1話



 ベッドタウンで有名なカスミガセキ駅! その駅前に存在するカスミガセキ公園は、駅前高級住宅トコシマ・ハイツに面した風光明媚な公園であり、日々、バーベキューや野外パーティーを行う地元民で賑わう。

 実際、その好環境はニャンニャ達の垂涎の的であった。

「イエーイ!」「カンパーイ!」

 花見を行う人々がほろ酔いでコップのビールを乾杯し、バーベキューでソーセージや牛肉を焼く。すると、ニャンニャ達がビニールシートの端にしめやかに近づいてきて、上目遣いで見つめるのであった。

「アッ、見て! かわいいね!」「かわいい!」「すごーい!」

 和やかな大学生の男女は人を恐れないニャンニャを歓迎し、頭をなでたり、首をなでたりした。

「ニャニャーン」

「かわいい! ほらほら!」

「ニャニャーン」

 なでられるうちにニャンニャは仰向けになり、蠱惑的に身体をくねらせた。だが、見るものが見ればわかる。そのニャンニャの細めた目には狩猟者の輝きが宿っていることを。

「なにか食べ物あげよう!」「ソーセージは?」「いいんじゃない?」

「ナオーン」

 花見客がソーセージを差し出すと、ニャンニャはそれを素早く噛み取り、猛ダッシュで駆け去った。

(……フン! 愚かな人間どもめ。ちょっと媚びてやれば幾らでも食糧を差し出す。貴様らは俺の食料庫よ……!)

 カスミガセキ公園、第6水飲み場の陰! そのニャンニャは獲得したソーセージを食べながら、満足げに心の中で呟いた。

 彼の名はアンコ。ネコサイタマ公園のニャンニャ達とのニャラテ(※ニャンニャのカラテ)抗争に破れた彼は、一駅隣のこのカスミガセキ公園に根城を移し、マタタビ・ハスリングを行う存在であった。

 木々の向こうにはトコシマ・ハイツが見える。最近できたばかりのマンションで、オートロック完備、しかもペットOKの物件だ。駐車場には警備員が常駐しており、犯罪者やセールスマンが近づくことは不可能。ましてやニャンニャをや。アンコは舌打ちした。その時だ。

「あ、兄貴ィ」「……」

 茂みを掻き分け、弟分のハチタが現れた。見るからに憔悴した様子だ。

「い、良いもの食ってますね……」

「アア?」

 アンコはハチタを睨んだ。

「ほしいのか? この俺の戦利品が?」

「ヘヘッ……俺、この前の野良猫狩りでアンタを庇って大勢を引き受けた……すげえ逃走劇をしたんです。見せてやりたかったですよ。腹ペコになっちまったのに、その時以来、ちゃんと食えてねえんですよ」

「……」

 それを言われると弱い。彼は前足で食べかけのソーセージをハチタにトスしてやった。

「食いな。ハチタ=ニャン」

「ありがてえ。さすが兄貴だ」ガツガツと食べ始める。「お、俺の忠誠心はずっと不変だぜ、兄貴。ヘヘッ……」

「ちッ」

 アンコは顔をしかめた。食べながらハチタは森の向こうのトコシマ・ハイツを見た。

「あそこにもニャンニャは住んでるんですかねえ、兄貴ィ」

「ああ。多分な。ペットOKだからな」

 アンコは頷いた。ハチタは溜息をついた。

「いいなあ。そこに行きゃあ、毎日、温かいペディグリー・ニャムとかが食えるんでしょう?」

「テメェ、ナメてんのか」「ニャイエッ!?」「ハイツに住んでるニャンニャなんてのはな……野生で生きる誇りを捨てて、部屋の決められた場所にあるペット用トイレでクソをひる飼い犬どもだ! 養豚場の豚と変わらねえ。いわば、ニャンニャの名折れよ。自由こそ真に価値あるものだぜ!」

「だけど兄貴ィ、いつもメシの心配をしなきゃいけない暮らしに俺は疲れてきちまってて……」

 その時だ! ピピーッ! ホイッスルが鳴り響いたと思うと、地域猫を引き連れたニャンニャが現れ、彼ら二匹を取り囲んだのである!

「な、なんだテメェら!」

「ドーモ。我々はニャマクダリ・セクト。我が名はタケゾウ」

 ニャンニャはアイサツした。

「ニャマクダリだと……?」

 アンコは小耳に挟んだ事があった。このカスミガセキ公園に奇妙な自警ニャンニャ組織が出現し、勢力を増しつつあるという噂を。では、この者たちがそうなのか。

「一体俺たちに何の用だ」

「このカスミガセキ公園の治安向上……それが我らの目的だ。貴様らのようなニャンニャは好きな場所で餌を食い散らかし、風紀を乱している。それが人間の野良猫狩りをこの公園に呼び込むのだ」

「食うためだ。ほっとけ」

「そうはいかん」タケゾウは厳しく言った。「この公園に住むニャンニャの食事時間は全て我々が管理する。そうすることで、無用の争いを避ける仕組みなのだ。我々を受け入れ、このニャマクダリ・ノミ取り首輪を装着しろ。これは恭順の印であり、一日二回の炊き出しの機会が与えられるぞ。飢えも不安もない平和な社会だ」

「エッ、炊き出しだって!?」

 ハチタが驚いた。だがアンコは進み出、タケゾウと睨み合った。爪が飛び出した。

「ふざけるな。俺の獲物は俺のものだ。俺は、やりたいようにやる」

「ほう……やる気か。愚かな」

「兄貴、ヤバいっすよ!」

「ナオーッ!」「フギャーッ!」「ナオーッ!」「フギャーッ!」

 ニャムサン! たちまち第6水飲み場はニャンニャのバトルグラウンドと化してしまった! 


🐾🐾🐾


「……うわぁ、さかってるなあ」

 打ち合わせ帰りのフミコは付近を小走りに通り抜けながら、そのさまを横目で見た。カスミガセキ公園では地域猫が愛されており、時折そうやって猫同士が争ったりもする。フミコは買い物エコバッグの中にサンマが入っている事を思い出し、やや緊張して家路を急いだ。

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