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【ジ・インターナショナル・ハンザイ・コンスピラシー】#10

🔰ニンジャスレイヤーとは?  ◇これまでのニンジャスレイヤー

S5第1話【ステップス・オン・ザ・グリッチ】

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 ナムサン! ブギーマンの背中が爆ぜ、激しい光を伴う飛沫が迸った。黒炎を帯びたツヨイ・スリケンは回転しながら天高く飛翔し、割れた月の方角へ消えた。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。スリケン投擲後の姿勢から流れるように、右腕に凄まじき力を込め、再び振り抜いた。燃える鈎縄が飛び出す!

「イヤーッ!」投じられたフックロープは、空虚に笑うブギーマンの、ずたずたに裂けた肉体を絡め取った。然り。超自然の邪悪は、デス・ライユーのVPNカラテで胸を割られたうえ、更に胴体に風穴を開けられている。その傷は今や燃える亀裂となって全身に広がっていた。だが……「HAHAHAHA……」笑いは止まなかった。

 ザルニーツァは息を飲んだ。ニンジャスレイヤーは実際、ブギーマンを打ち破り、反撃の兆しをも封じている。完全勝利か。本当に?「一筋縄では……いかんぞ」ビル・モーヤマが言葉を絞り出した。一瞬後、何が起こるのか。このまま爆発四散せしめるか。ブギーマンが信じられぬヒサツ・ワザで応ずるか。あるいは?

「HAHA……HAHAHA……!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはフックロープを力強く引き寄せた。引き寄せようとした。その上体に、縄めいた筋肉が浮き上がった。ブギーマンは、しかし、応じなかった。宙に留まる彼の肉体が惨たらしく引き裂かれ、異色の光が夜に漏れ出た……「サヨ……ナラ!」

 ブギーマンは爆発四散した。閃光弾めいた光が、太陽めいて空を染めた。「HAHAHAHA……」笑いはしかし、消えなかった。残響か。あるいは。ザルニーツァの脳裏に黒いトリイと荒野のビジョンが掠め、激しい頭痛が引き起こされる。そして彼女は見た。爆発の中から、無数の煌めきが撒き散らされるのを。

「いかんぞ……!」ビルが呻いた。ザルニーツァはビルの身体を支えた。「ハイエージェント……! これは!」彼女のニンジャ動体視力は確かに捉えた。撒き散らされる光。その、ひとつひとつは。おお、ナムサン……それらは、ブギーマンが盗み出してきたレリック達ではないか!?

 スローモーションじみた非現実的なゆっくりした速度で、煌めきは夜空を舞いはじめる。そのベクトルの向かう先は、ブリッジ・オブ・デジマの向こう、不夜城ネオサイタマ……!「機密フロッピーを……回収……」震え声で呟くビルの身体から力が失われる。ザルニーツァは動こうとした。光が加速した!

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは動いていた! 跳躍した彼は、撒き散らされる光の粒をひとつ、かろうじて掴み取った。ザルニーツァにはその一瞬がなかった。絶望、無力感、驚嘆……幾重にもかさなりあった感情を覚えながら、彼女は見ていた。流星めいて、光の帯を描いて飛翔する、至宝の数々を。



 ロゼッタストーン。ドードー剥製。リング・オブ・ウィンド。マグナカルタ。黄金の茶釜。水晶ドクロ。ブラシ・オブ・コウボウ。琥珀ニンジャ像。ブラックブレード・オブ・クサナギ。メンポ・オブ・デス。ハチマキ・オブ・ムテキ。死者の書。トマホーク・オブ・スプリング。魔銃ザ・ビースト。エトセトラ。エトセトラ。無数のレリック。数え切れぬ。

(HAHAHAHA……!)空虚で不敵な、そして挑戦的な笑いが、夜に散り消えた。『うう、奴が滅びた筈がありませんよ……!』脳のジョンが息も絶え絶えに言った。ザルニーツァは答えようとしたが、不穏な爆発や銃撃音の嵐が、それを掻き消した。

『我々はロクハラ! 責任あるオムラ・エンパイアの系列企業です! 警護サブスクリプション契約者の皆様の安全が第一! 武力も辞さず、あらゆる手段を講じて守ります! 邪悪なるカタナ・オブ・リバプールの株価は下落しなさい!』デジマに突入したロクハラの部隊がけたたましくプロパガンダ音声を流す!

 カタナ・モニュメントの背に着地したニンジャスレイヤーと、ザルニーツァの視線が衝突した。一瞬後、しかし、ザルニーツァは身を翻さねばならなかった。上空を接近してきたロクハラの鬼瓦ツェッペリンから無差別的に発射されたオムラ電磁砲弾を、ビルを抱えて回避せねばならなかったのだ。

 KA-DOOOOM! ザルニーツァが跳んだ直後、電磁砲弾はカタナ・モニュメントの背に着弾。巨大な質量は中途で無惨に折れ、ドーム屋根の骨組みを壊しながら落下。二階部分の崩落によって既に無惨なありさまとなっていた博覧会場に、カイシャクじみた悲惨な一撃を加えた。ナムサン……ナムアミダブツ!


◆◆◆


 ……イイイイン……キイイイイン……キイイイイン。金属的な響きが頭蓋骨に反響している。耳鳴りだ。ペイルシーガルは認識する。そうだ。耳鳴りだ、サンズ・リバー渡し守のフルートの音色でない事は確かだ。それから聴いたのは不規則なドラミング。自分の心臓の鼓動音だ。……命が……ある。

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