
ニャンニャスレイニャー
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◇ニャンニャ ◇キョート ◇108ニャンパンチズ ◇マタタビ
日本首都の中心部たるネコサイタマ公園には野放図なサイバネティクスと資本主義がはびこり、花壇や噴水やベンチ等には所狭しとネオン看板が配置され、極彩色の蛍光色で夜空を染めていた。猫と人間のコミュニケーションなど、稚気じみた夢。公園を根城とする無数の猫たちは、空を横切るサンマツェッペリンを見上げては、夜な夜なネオン幻想の電脳世界に逃避する。
「ナオーッ!」「ナオーッ!」
しかし今、公園の南東部の藤棚付近では、無気力な猫たちとはまるで異なる獰猛な生気をもって、互いに争い合う猫たちがいた。かれらは、ニャンニャ……。平安時代から日本の猫社会をニャラテで支配してきた闇の野良猫たちであった。
「ナオーッ!」「ナオーッ!」「ナオーッ!」「ナオーッ!」
色付きの風めいた素早さで、縞々毛皮とブチ毛皮のニャンニャは幾度もぶつかり合い、爪と牙で傷つけた。非ニャンニャの猫たちは茂みの影やベンチの下から、びくびくとそのさまを見守るしかない。
「ナオーッ!」「フギャーッ!」
縞々のニャンニャの狙いすませた一撃が、ブチのニャンニャを捉えた。ブチのニャンニャは呻き声を上げて転がった。縞々のニャンニャは唾を吐き、勝ち誇った。
「負け犬め。ソウカイ・ニャンジケートに楯突いて、このネコサイタマ公園で生きられると思うなよ」
「ア……ア……」
見物の猫たちはガタガタと震え、失禁した。縞々のニャンニャはそのさまを眺め、鼻を鳴らした。
「非ニャンニャのクズめ。せいぜい公園の外の世界にまで、ソウカイニャの恐ろしさを伝えて回るがいい。貴様らの使い道など、それぐらいしかないのだ」「ニャイエエエエエ!」「ニャイエエエエエ!」猫たちは失禁しながら走り去った。ナムアミニャブツ!
「くやしいか? ブチ=ニャン。貴様の身体は今から生きながら八つ裂きにし、この藤棚に吊るして、ソウカイニャの敵の末路を知らしめるオブジェにしてくれよう」「……。……」ブチの口が動いた。縞々のニャンニャは眉根を寄せた。「何だ? ハイクでも詠みたいか」
「た……たとえ俺が死んでも……」ブチがかすれ声で言った。「ソウカイニャの悪行は……必ずインガオホーする……死神が……報いるだろう……お、俺は……ジゴクからそのさまを……お前らの組織の最期を見物してやる……」「死神だと? ブルシット!」縞々のニャンニャは吐き捨てた。「貴様らの迷信には付き合っておられぬ。我らがラオモト=ニャンに敵は無し。あのお方はネコサイタマの市長となり、すべての権力を手に入れる。人間すらもひれ伏すのだ」
縞々のニャンニャは爪を振り上げた。カイシャクだ!「サラバだ、ブチ=ニャン! ナオーッ!」「ナオーッ!」その時! 闇の中から赤黒の影が飛び出し、炎めいて撥ねると、縞々のニャンニャの残虐な攻撃をインターラプトした!
「何だと!?」「ナオーッ!」赤黒の影は空中でクルクルと回転し、藤棚の上に着地すると、ドクロめいた月を背後に、センコ花火めいた目で縞々のニャンニャを見下ろした。縞々のニャンニャの背中の毛が逆立った。「な……死神とは……まさか……?」
「ドーモ。ニャンニャスレイニャーです」赤黒のニャンニャはジゴクめいてオジギをした。その首にはマフラーめいた赤黒布が巻かれており、闇夜に恐るべき軌跡を残した。縞々のニャンニャは後ずさり、オジギを返した。「ドーモ。ニャンニャスレイニャー=ニャン。シマキチです」アイサツは神聖不可侵の礼儀作法。古事記にもある。
「貴様、何者だ。何の目的あって、ソウカイニャの邪魔をする。俺にナメた真似をすればこの公園のソウカイニャンニャすべてが牙を剥くことに……」「笑止!」ニャンニャスレイニャーはピシャリと言った。「オヌシは所詮、烏合の衆を笠に着てイキがるサンシタ・ニャンニャに過ぎぬ」ニャンニャスレイニャーの目が光った。「ニャンニャ、懲らしめるべし!」
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