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【プラグ・ザ・デモンズ・ハート】#2

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 昼下がりの荒野に三つの砂塵の筋あり。先頭を行くのは元オムラマンのコンノ。横を並走するのはヒュージシュリケン。そしてすぐ後ろにイグナイトだ。

 コンノの顔は蒼ざめ、怯えと無表情とをグラデーション的に行き来している。彼がまたがるモーターサイクルはスパイクや火炎放射バルブなどが無秩序に増設されたならず者の改造車輛であり、汚れたワイシャツの上から身に着けたバイカープロテクターや革ベルトが醸し出すアトモスフィアは、彼自身のその自信無さげなさまとはいかにも不似合いであった。

(好きなやつをブン獲りな)

 遭遇戦に勝利し、突撃してきた敵の首をダイシュリケンでまとめて刎ねたヒュージシュリケンは、怯えるコンノの肩を掴んで揺さぶり、そう言った。首なし死体と共にあたりに散乱する転倒バイクを指さしながら。

(これなんかどうだ? めちゃくちゃ鬼瓦じゃん)

(アイエエエ……ちょっとそれは……運転できるか自信が)

(なんでもいいよ。早く決めろよな)イグナイトは双眼鏡で周囲を確認しながら急かした。(とにかくアタシもヒュージも、お前を2ケツしてやるつもりはないからな?)

(わ……わかりました……じゃあ、これを……)

 "比較的" 無傷で無難なデザインのものをコンノが選ぶと、ヒュージシュリケンは全く無雑作に車輛のUNIX機構をチョップとケリで破壊し、電気系統を直結、スパナ片手の作業で、すぐに乗れるようにしてしまった。(アタシは機械に詳しいんだ)と言うヒュージシュリケンの眼差しにコンノは震えあがった。

 彼女らは自身が「スレイプニル」と名乗るモーターサイクル馬賊に属していると語った。土地を我が物顔で荒らす暗黒メガコーポに "一発喰らわせ" 、財物を収奪して、それを周辺のアルコロジーや村落に持ち入って気ままに分かち合う……それを彼女らは「経済活動」と称していた。

(それで? 名前は?)

(エッ!? コンノです)

(お前の名前はさっき聞いたよ。違う。愛馬の名前だ。決めないとテンション上がらないだろ。アタシのバイクは "マサシ"。イグナイトのは "ファイアウインド" ね)

(ええと……じゃあ、"ハヤサ" で……)

 オムラ的な命名である。職場放棄から数時間程度では、そう簡単にオムラのイズムが抜ける事などない。

(フ、フ、ノッて来たじゃないか)ヒュージシュリケンは笑った。(……あとお前、鏡で今の自分の格好確かめたか? 竜巻でフッ飛ばされた可哀想なサラリマンみたいだよ)

(似たようなものです……)

(死体から適当にブン獲って武装しろ。もう武者鎧はないんだぞ。元オムラ=サンよ)

 ……コンノは記憶を嘆きながら、サイズの合わない武装ヘルメットがズレてくるのを直した。

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