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【プラグ・ザ・デモンズ・ハート】#6

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 ブンブンブブーン。ブンブンブブーン。アンティークもののジュークボックスがピカピカと蛍光UNIXライトを発し、スピーカーからはオールディーズ・ディスコが流れている。

 洞窟を木板やレンガで補強して作り替えたアジトの応接室には安楽椅子や機械の玩具が置かれ、アベ一休のポスターは額縁に入れて飾られ、水着を着た美女のケモビール・ピンナップや、白いシャツのボタンを四つ開けてウインクする美男の香水ピンナップ、NNK-128のブロマイドなどが貼られている。キッチンでは、自家製のジンジャーエールを振る舞ったアンクル・ソノがワカモレを作っていた。ジャッキーは壁にかかったギターの弦にジャラジャラと触れて悪戯していた。心地よい程度に適度に乱雑な空間は、複数の住人の手で、それなりの年月をかけて「しっくりくる」形に整えられていったものだ。ある者は卓につき、ある者はペルシャ絨毯の上に座って、この奇妙なミーティングの出席者となった。

 ようやくフルフェイス・ヘルメットや革手袋を外したブルーブラッドは人間離れした妖しい外見の持ち主であったが、さらに異彩を放っているのはアバンギャルドUNIXアート彫像じみたクエスター・ナルであった。リー先生は目当てのヒュージシュリケンだけでなく彼にも興味を示したが、ナルは尊大にその注目を退けた。ナルはむしろキッチンカウンター越しにソノのワカモレ調理を観察していた。手伝う事もしない。コンノは所在なさげに正座し、両手でジンジャーエールの銅マグを持っている。タイラシンは我が家のように図々しく寛ぎ、耳を掻きながら銃火器カタログと壁掛けTVモニタの野球中継を流し見ていた。

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