S3第4話【ヨロシサン・エクスプレス】#8
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サクリリージは惨殺体に身をかがめ、手をかざして、有用な部品を確かめた。犠牲となった二人のうち、今回の素材は体格のよい成人男性だ。肋骨の七番目の骨は左右とも良い形をしており、ジツが乗り易いと感じた。サクリリージは死体に手をうずめ、二本のダガーを引きずり出した。
「死者から助けを得る」。それがサクリリージに憑依融合したボトク・ニンジャが探求した「ボトク・ジツ」の真髄だ。サクリリージにとって、死者から助けを得るとは即ち、武器や爆弾を調達するための武器庫になってもらう、という事を意味していた。ニンジャは爆発四散するので、モータルがよい。
ボトク・ニンジャはシのクランのニンジャであり、高潔な精神でジツを制御し、戦乱の世界を旅して、ニンジャ・モータルを問わず供養行為を重ねた。サクリリージにはそんな記憶も人格もない。ボトク・ジツは便利なネクロマンシーに過ぎぬ。ボトクがアノヨにいれば「ヤンナルネ」と嘆いただろう。
「ンンー……よいバランスだ。よく生きた」サクリリージは惨殺体を称賛し、骨の刃に頬ずりした。そして接近しつつある敵を待ち構えた。ニンジャスレイヤーを。ニンジャスレイヤーはかつてアマクダリ・セクトの敵、つまりサクリリージの敵であったが、直接交戦した経験はない。しかも恐らく別人だ。
当時アマクダリと敵対したニンジャスレイヤーは、アガメムノン諸共にラオモト・チバの罠にかかり、月で爆発四散したとされる。その後なんらかの要因で生き延びた可能性もあるが……直接目にした瞬間に、彼のニンジャ第六感が、別人であると確信させた。はじめから、過去の情報は役に立たぬものとして、この敵に対処すべし。
ヒュンヒュンと刃を振り、構える。この素晴らしい武器から、秒単位で失われゆく切れ味に、微かな郷愁をおぼえる。ボトク・ウェポンの持続性はさほど長くはない。死にたての新鮮な死体をその都度用意する必要があり、それもまたサクリリージの愉しみでもあった。人生の小気味よい彩りというものだ。
サクリリージは特にモータルの生命には敬意を払っていないので、戦闘が長引けば長引いただけ、いくらでも殺す。それを知ってか知らずか、ニンジャスレイヤーは相当な速度で追跡してきている。妙な輪郭のニンジャソウルの接近を感じる。あと二呼吸。一呼吸……。「イヤーッ!」
サクリリージは客室の扉を内から蹴り開け、襲いかかった! 通路を進んできたニンジャスレイヤーに!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはかろうじて反応し、チョップで刀身を打ち逸らした。サクリリージの目が光った。もう一方のカタナで脇腹を裂きにいく!「イヤーッ!」
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