【デッド! デダー・ザン・デッド!】#4
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配電ワイヤーの上を走りながら、二人のニンジャは手短な会話を交わした。
「まず、今は2040年」
ヤモトは言った。
「いつから寝ていたの?」
「ああ。そもそもそれを知らねえ」
ジェノサイドは答えた。
「確か昔は、アマクダリがどうとか……」
「わかった。じゃあ2年ぐらい寝てたのかも」
「そうか。もうすこし話を聞く必要がありそうだな。だが……」
彼らは巨大なフクスケを屋上に戴くビルに着地し、追手を振り返った。追跡して来ている敵がいる事はわかっていた。迎え撃つ必要があった。
「奴をブチのめしてからだ」
ヤモトとジェノサイドは身構えた。その者はビル群よりも高く飛びあがり、空中で身を捻ると、頭を前に、足を後ろにして、足裏からジェットを噴射した。まるでスケルトン選手めいた姿勢で、追手は一瞬にして彼らのビルに至った。
KRAAASH! 追手は巨大フクスケを貫通粉砕し、天空を旋回すると、そのまま空中でホバリングした。穴だらけのマントが風にはためく。その者はゾンビーと言うにはもはや腐肉すら無く、骨格そのもの、関節部をシリコン補強された骨そのものであった。ニンジャ頭巾とメンポが、おそらく髑髏そのものであろう頭部を隠し、緑色の凶悪な眼を光らせていた。膝下はスティール製のジェットエンジンに改造されていた。そのジェット噴射で浮いているのだ。何たる悪夢的光景か!
「ドーモ。ジェットペインです」
「ドーモ。ジェノサイドです」「ヤモト・コキです」
DDOOOOOM……破砕したフクスケがビルから下へ落下し、路上のペケロッパ・カルトを下敷きにした。「ペケロッパー!」
「何か用か」
ジェノサイドが敢えて訊いた。ジェットペインは指さした。
「知れた事よ! 貴公の逸脱を許しはせぬ。我らは "センセイ" の管理下なのだ!」
「逸脱? 何がだ……」
ジェノサイドが緑の目を険しく光らせた。
「管理がなんだか知らねえが、そんなものを受け入れた覚えはねえ。契約書あるなら見せてみろ。ここで破り捨ててやる」
「ならば死すべし!」ジェットペインは叫んだ。「貴公は……」
KBAM!
ジェットペインが爆発に呑まれた。ヤモトとジェノサイドは高速飛翔してきた弾丸を見た。ナムサン……不運な対空砲火である。スタンピード・ストリートの屋上を移動するのは危険で、上空となれば更にその二倍危険だ。周辺地域の豪族企業はこの治安俗悪地帯から隙あらば流出しようとする凶悪ケモ犯罪者に常に手を焼いており、あのように長時間滞空しておれば容易に標的となる。見よ、数区画離れた「栽培マクネ」ネオン看板の横に据え付けられた対空砲がゆっくりと砲身を動かしているのが見えるはずだ!
「アバーッ!」
ジェットペインは煙を吐きながらクルクルと回転したが、対空砲は強靭なゾンビーニンジャを殺すに至らず。
「無礼者ーッ!」
ドウ! 脚部ジェット噴射を行ったジェットペインはヤモト達の頭上で弧を描き、対空砲めがけ一直線に飛ぶと、頭突きで破壊!更に勢い余って「栽培マクネ」ネオン看板も破壊し、8の字に暴れ飛んだ。
「下へ!」
ヤモトはジェノサイドを促した。二者はビルから真下のストリートへ飛び降りた。彼らが店舗テントを突き破って着地すると、
「アイエエエエ!?」
サバカレー鍋を混ぜていた店主が目を丸くして悲鳴を上げた。
DDDOOOOOM……!
「来た」
ヤモトが通りの奥を睨んだ。垂直降下して来るジェットペインだった。
「なかなか骨のある奴じゃねェか」
ジェノサイドが呟いた。
「アイエエエエ!」「アイエエエエエ!」
ストリート市民が悲鳴を上げて逃げ惑う。
「おい。追って来るぞ。なに待ってる」
ジェノサイドが尋ねた。ヤモトはいきなりラストリゾートの生首をジェノサイドに放った。 ジェノサイドは唸り、それを受け止めた。そしてヤモトの邪魔にならぬよう、やや離れた。
ヤモトは「ナンバン」「カロウシ」に手をかけ、その場でイアイを構えた。
「しつこいから、ここで倒す」
彼女は陽炎の中でカラテをみなぎらせるジェットペインを見据えた。その眼に桜色の光が再び熾った。
「屋上は撃たれるから下を行かないといけないけど……街中をあのジェットで飛び回られたら、皆迷惑する」
「違いねェ」
ジェノサイドは荒れ果てたスタンピードのジャンク街並みを見渡し、肩をすくめる。
「俺には糞溜めにしか見えねえが、まあ、街は街だ」
BOOOOOM! ジェットペインが態勢を変え、スケルトン選手めいて低空を頭から突進してきた! ジェットペインの身体はキリモミ回転し、路上のゴミが渦を巻いて舞い上がり、飛び散った!
「イヤーッ!」
ヤモトは二刀を鞘走らせる!
「イヤーッ!」
BOOOOOOOM! ヤモトのすぐ横をジェットペインが通過した。
「アバーッ!」
二人の後ろでジェットペインは絶叫しながら真上に方向転換! 廃ビルの壁や「愛しTELイナゴ味」の看板に衝突しながら、再び灰色の空へ飛びあがった。その身体が四つに分解した。今の離合で、二刀斬撃によって十字に切り裂かれていたのである。ナムアミダブツ!
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