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ニンジャスレイヤーTRPG「シナリオコン2023」結果発表!

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いつも(ダイスが一面体になってしまった時も)ニンジャスレイヤーTRPGを楽しくプレイしていただき、ありがとうございます! 大変長らくお待たせしました。これより「ニンジャスレイヤーTRPG シナリオコン2023」の結果発表と、投稿された全作品についてメインデザイナーであるフィリップ・N・モーゼズ=サンからのひとことコメンタリーを発表したいと思います。

TIPS:シナリオコン2023は物理書籍「ニンジャスレイヤーTRPG コア・ルールブック」発売前に募集が行われたダイハードテイルズ主催のイベントですが、ルールセットはKADOKAWA物理書籍のバージョンと一致していますので、多くのものは物理書籍版でもそのままプレイすることが可能です(一部のシナリオはnote版でのみ読めるプラグインルールも参照しています)。多くのシナリオやリプレイは、たとえルールセットの版が変わっても、ほとんど問題なく(あるいはルールをほんの少し読み替えたりアレンジするだけで)楽しむことができます。どれだけルールが変わっても、ゲームの楽しさの本質は変わりません。楽しさの本質は、どれだけ時間が経っても、少しも時代遅れになることはないのです。そしてそれが、われわれがTRPGというアナログなゲームを愛している理由の一つでもあります。




全応募作品の紹介とコメンタリー

ここではまず、応募受付順に全作品を紹介していきます。なお、今回のシナリオコンは「着想元や参照先となる原作エピソード名を1個以上設定」というレギュレーションが存在します。

TRPGに詳しくない人にも「エッ?あのエピソードをどうやってゲームにするんだ?」と興味を持ってもらいやすいように、参照先となるエピソード名を目次見出しとして使用しており、実際のシナリオ作品名はその直下にあるバナーリンクになります。

注意:この記事ではシナリオの細かな部分まで解説されている可能性があります。ニンジャスレイヤーTRPGのシナリオは基本的にアクションが主体となり、同じシナリオでもPCの個性やプレイヤーの決断、そしてダイス目によって全く異なるドラマを生み出せます。結末やギミックがわかっていても、何度でも遊べるのです。ですから、基本的にはネタバレを気にする必要はないのですが、中には引用や抜粋、コメンタリーなどを読まずに、単純にファンメイドシナリオ一覧を見たいという方もいると思います。その場合は、こちらにアクセスしてください!



【スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ】

ソウカイヤと繋がりの深いエージェント『笑い爺』が、いつものようにフリーランスのニンジャである君達にサイバーツジギリの依頼を出した。金の無い君達には当然ながら断る選択肢はないだろう。今回使用する武器は三種類、自由に選んでよい。ボーナス条件は武器ごとに指定される。死体からの略奪は自由。

対象:
ニュービーレベルのストリートのニンジャ※2~4名
難易度:
イージー〜ノーマル程度(場合によってはUH)、Wasshoi有
キャラロスト:あり。但し逃亡可能。
余暇:標準(4スロット)
参照エピソード
スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:【スワン・ソング〜】の再現を、「ニンジャの自宅」以前の時系列で楽しめるシナリオだ。「ニンジャの自宅」はヤモトを捕えようとするソウカイヤ視点のミッションだったけど、このシナリオではPCたちがシルバーカラスの立場になれるんだ。プレイヤーの判断次第で善でも邪悪でもプレイできるし、原作エピソードの中の印象的なシーンの数々をとてもうまく再現してくれていると思う。特にノビドメ・シェードと屋形船は、広い狙撃マップを見ているだけでワクワクしてくるし、コインランドリーのシーケンスもシンプルで、ロールプレイなどに集中できるから、すごく良いね。TRPGの楽しさの一つに、自分だったら絶対に経験し得ないようなシチュエーションにいきなり放り込まれることがあるけど、サイバーツジギリというのはその典型的な一例だ。ゲームのテーマや、PCたちの立場のデザインが、とても成功していると思う。多くの原作登場NPCたちが(バズキルやエレクトリックイールだけでなく、タダシイやモヒカンや老婆まで)収録されているのも嬉しかったね。



【バトル・ウィズアウト・オナー・アンド・スシ】

ニンジャ同士の情け容赦ないファイトを集めたスナック感覚で楽しめる読切短編集【デッドリー・ヴィジョンズ】を元ネタにしたスナック感覚の片手間で遊べるミニマムシナリオです。断じて手抜きではありません。

対象:ルールブックの「28ポイントスクラッチビルド」ルールで作られたばかり〜ある程度育ったPC一人を目安とする。
難易度:ハード
キャラロスト:あり
余暇:2スロット
備考:このシナリオによる名声上昇の上限値は名声10とする。
参照:デッドリー・ヴィジョンズ:バトル・ウィズアウト・オナー・アンド・スシ

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:すごく短いところが好きだな。「ニンジャがすぐ出てきてすぐ戦うだけ」というデッドリー・ヴィジョンズの気軽なアティチュードを、うまくゲームルールに翻訳してくれていると思う。ゲームデザインをやったことがある人はわかると思うけど、紙面の限界や制約が無いと、われわれゲーマーはどんどん文字数を増やしてしまいがちな生き物だ。書いているうちに楽しくなってきてしまって、あれもこれもとオプションや選択肢を欲望の赴くままに盛り込んだりして、それはそれで面白いものになるのだが……実際にそれを使うマスターやプレイヤーの立場からすると、ちょっととっつきの悪いものになる事がある(少なくとも僕はよくある)。だからいつも「シナリオやルールは、短く、端的で、シンプルであればあるほどよい」という心構えで臨んでいる。そのくらい、シナリオが短いってことは、「遊びたい!」と思う気持ちに火をつけてくれる。僕らはゲームに慣れているから、シナリオを読んだ時にいくらでもシーンを付け足したり、バランスを調整したり、NPCの能力を盛ったりすることができるから、短くてシンプルであることは何も問題では無いんだよね。むしろアイディアの根幹がギュッと詰まっていることになる。そこに改めて気づかせてくれたシナリオだ。ちなみに、これを読んでいて難易度について考えたんだけど、もしかすると、将来的に16ポイントスクラッチと28ポイントスクラッチの間に、22ポイントスクラッチのようなものがあってもいいのかもしれないね。


【バトル・オブ・ザ・ネスト】

PCは、とあるヤクザ・オヤブンの莫大な遺産の相続順位について話し合うため、場末のサルーン「アタマ・ハンザイ」に集まった犯罪者たちだ。一夜を通した談合が一応のまとまりを見たその瞬間、PCたちの部屋にニンジャスレイヤーが襲来する! 死神の標的は奇しくも相続順位筆頭と決まったPCだったが、赤黒の殺戮者はそれ以外の獲物も必ず殺すという強烈なキリングオーラを放っている。PCたちは無事にサルーンを脱出し、遺産を手にできるのか?

対象:
アデプトレベルのニンジャ3〜4人
難易度:ノーマル~ハード程度
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)

参照エピソード:【バトル・オブ・ザ・ネスト】

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:単発プレイ用のシナリオで、「ニンジャマーダーミステリー」のように独立したミニゲームに近いテイストだ。以前、野球やマージョンを再現した特殊セッティングのミニゲームルールを見た事があるんだけど、僕はそういう改造を見るのがとても好きなんだよね。さて、このシナリオのほうのコメントに戻ると、原作と同様にPC同士のバトルがメインテーマとなっていて、だからこそマスターなしでもプレイできる、現代的な方式だね。ボードゲームっぽく遊ぶのにも向いてるだろう。血みどろの戦闘が始まる前に、一人一人の武勇伝語りパートがあり、その巧みさによって戦闘時にダイスボーナスを得られるという、ストーリーテリングゲーム的な工夫も面白いと思った。サルーン「アタマ・ハンザイ」の再現マップも良かった。原作に出てきた建物をマップにしてくれているだけでも、まず純粋に嬉しさがあるね! ちゃんとしたマップを作るのは本当に大変なんだよ。でもその甲斐あって、作り込まれたマップは、ひと目見ただけで「ここで遊びたい!」と思うものになる。このマップもそうだ。



【アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ】

ソウカイ・シックスゲイツが温泉旅行に出かけて比較的のんびりとした時間を過ごしている君たちに、2件のIRCメッセージが同時に届く。一つはインパルス、もう一つはバーグラーから。どちらでも内容はすべて支援要請であり、位置の座標情報が添付されている。

対象:
名声10以上のニンジャ4~5人
難易度:ハード
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)
参照エピソード:【アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ】、【ザ・リデンプション】:前編 / 後編

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:韓国のニンジャヘッズが作ってくれた、衝撃的なシナリオだ(韓国でも大勢の熱心なプレイヤーが育っていると聞いて、とても嬉しいよ!)。初版シナリオ「バーグラー殺人事件」をうまく2版向けに拡張してくれているね。ハッカードージョーのマップも、プレイしやすさを優先した、シンプルかつ効果的な作りとなっている。そして最も重要な注意点として、このシナリオでは……【ザ・リデンプション】が参照先エピソードとなっていることからもわかるように……ヤクザ天狗とヤマヒロに関する極めて衝撃的な結末とオプションルールが用意されている! その真実はぜひ君自身の目で確かめてみてほしい。そうした意味では、かなり原作を読み込んでくれている人向けのシナリオともいえるが、その背景部分をオミットしたとしても十分に楽しいし、ヤクザ天狗に関するエンディングオプションは実に魅力的なものとなるだろう!


【フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ】

対象:マスターレベルのソウカイニンジャ、傭兵PC3人
難易度:ハード程度
キャラロスト:任意
(爆発四散したくない場合、インターラプターが回収したとみなす)
余暇:標準(4スロット)
参照エピソード:
【フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ】

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:PCたちはウォーロックから命令を受け、行方知れずだった伝説のシックスゲイツ「インターラプター」の説得に向かうこととなる。全く信用ならない感じがわずか数行で明確に説明されていて、テンポがいい。原作の舞台設定をうまく活かしつつ、アトラクション的にそこにPCたちを放り込んでいく形で、説明を読んだだけでもワクワクしたよ。特に、下水を進む時の緊張感や、この先にあのインターラプターが待っているのだという期待感は、原作を読み込んでいても未体験でも同様に感じ取れるだろう。ベテランとニュービーどちらにも配慮された良い導入セクションだと思う。ザイバツの介入がPCたちにカルマを含めた決断を迫るところも巧い。【フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ】は無印コミカライズにもなっているから、イメージの共有もしやすいだろう。バジリスクやウォーロックについても【ストレンジャー・ストレンジャー・ザン・フィクション】を読んでおけばさらに解像度が上がるはずだ。地下水路のマップも神秘的だ。このようにミルマルなパーツだけで、とても想像力を刺激してくれる。移動困難な水場があるのも背景的に自然だし面白い。難易度調整もしやすそうなので、難易度を落として低レベル帯でも遊べそうだね。



【ザ・マン・フー・カムズ・トゥ・スラム・ザ・リジグネイション】

ミヤモト・マサシの秘宝『リング・オブ・ウィンド』の所在が明らかになった。限られた予算の中、首尾良く任務を完遂しろ

対象:
マスターレベルのザイバツ、傭兵ニンジャ3人
難易度:
ノーマル~ハード(PCの行動による)
キャラロスト:任意(選択肢によっては取り返しのつかない要素あり)
(爆発四散したくない場合、イグナイトが回収したとみなす)
余暇:標準(4スロット)
参照エピソード:
【ザ・マン・フー・カムズ・トゥ・スラム・ザ・リジグネイション】他

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:ミヤモト・マサシの伝説のマジックリングの1つを探し求めるシナリオだ。ソウカイヤ用シナリオにも簡単にコンバートできる親切な作りだ。収録NPC。さて、このシナリオには交渉余地がある「昼ルート」と、押し込み強盗めいた「夜ルート」、そして特殊な「ウシミツルート」があり、それぞれで全く敵や結末も異なってくる、というのが面白いね。特に「夜ルート」はソウカイヤとのバッティング可能性が発生し、普段は(ソウカイヤ所属シナリオであれば)頼もしい味方であるソウカイヤのニンジャと衝突することになり、ビッグネームを敵に回した時の恐ろしさを体験できるだろう。特に、探索のテーマ的にもダークニンジャと自然な形で追加戦闘に入れる可能性があるというのは面白く、普段はニンジャスレイヤーに対して抱くであろう緊張感や恐怖をダークニンジャ相手に追体験できるはずだ。なかなかお目にかかれないザイバツ向けのシナリオで、確かにこうしたレリック探索はザイバツにうってつけのミッションだね。皆もどんどんザイバツ向けのシナリオを書いてほしいな。マサシの指輪とその所持者の背景なども、とてもオリジナリティがあって面白いと思ったよ!



【プロメテウス・アレイ】

あらすじ:1980年代、この「立ち枯れの時代」において、前触れなく力を手に入れる"不自然"なニンジャたちが生まれつつある。この日もまた、CIA捜査官たちはニンジャ第六感と推理を駆使し、監視チームを殺害しニューヨーク・シティを逃亡する"アンナチュラル"を追跡する任に就くのであった。

プレイ人数:
2~3名
所要時間:4時間(オンライン/テキストセッション)
舞台:1980年代、アメリカ合衆国
難易度:ニュービー級、爆発四散可能性あり
    ▶
11ptの特殊スクラッチビルドによる新規作成キャラクター向け
参考エピソード:【プロメテウス・アレイ】

シナリオより抜粋
ダイナーマップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:これはすごいね、1980年代アメリカ再現シナリオを作っちゃったの!? キャラ作成用の特殊スクラッチルールもあり、手軽に【プロメテウス・アレイ】の時代を追体験できるのも面白いし、原作情報のゲーム的な取捨選択もうまいと思った。それから、この時代はニンジャたちが「ちょっと強いモータル」程度の存在になっているから、何もかもをニンジャの力で強引に解決することができなくなり、必然的に探索パートが重要になってくるんだけど、それを独自の探索ルールオプションでカバーしているところもうまいね。僕も今、探索をメインとした拡張プラグインセットの案を練っているところなんだけれど、実際色々と良い刺激になる部分があったよ。細部のパーツも手が混んでいて面白い。例えばこの、アメリカン・ダイナーのあの佇まいを色使いで見事に再現した戦闘マップも芸術度が高いね。力作だ! いつもと少し違った雰囲気のニンジャスレイヤーTRPGを楽しみたいなら(そして別時代のセッティングを自分でも作りたいと思っているなら)、ぜひ読んでみてほしいと思う野心的な内容だ。



【トレジャー・エヴリー・ミーティング】

INWを脱走したジェノサイドは追手として放ったマミーを撃破した。 このままではリー先生のニューロンにストレスでダメージが! しかしそこはできる豊満助手フブキくん。既に新たなズンビーニンジャを完成させていたのだ! そう!それはキミたちのことだ!!

対象:
下記の条件を満たすニンジャを3人。
・壁1を2枚超えた程度の継続ニンジャまたは新規28点スクラッチ作成。
・INWのズンビーニンジャであること。(設定だけでもOK)
・狂気ルールON!
難易度:ハード程度
キャラロスト:任意
 (爆発四散したくない場合、INWで回収されリー先生の手術や実験で復活する)
余暇:標準(4スロット)
参照エピソード:【トレジャー・エヴリー・ミーティング】
        【シとゼツメツ】

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:君はINWのゾンビーニンジャなんかになりたいと思うかい? 僕の答えは……もちろんYESだね! これは素晴らしいイントロだし、しかも別にゾンビーニンジャPC作成に関する追加ルールが書いていないんだよね。そこが最高にいいな。だって読んだ人はそのまま普通のルールで遊ぶこともできるし、ルールを作りたくなったら自分で作っちゃうからね。さっきの1980年代シナリオと真逆のことを言っているような気もするけど、このゲームにおいてはどっちも真実なんだ。とにかくパッションを伝えることも、シナリオの重要な役目の一つで、それを読んだ人がまた自分のシナリオを作りたくなったりするからね。構成でひとつアドバイスできるところがあるとしたら、妖刀ベッピンをヤモトに持たせるために用意されたイントロダクション部分と追加ルールを、丸ごとオプションとして本編と切り分けておいた方が、遊びやすくなりそうな気がする点かな。その方が、主役であるPCたちにスポットライトが当たりやすく、冒頭から順に読んで行った時にも「PCたちは何をすればいいのか」が頭に入りやすいと思った。でも一方で、このイントロダクションがあることで、このくらいの気軽さで遊べばいいんだなというのも伝わるから、これはこれで味があるんだよね。それにヤモトに妖刀ベッピンを持たせたいか持たせたくないかで言ったら、僕は持たせたいよ。そっちの方が楽しそうだからね!



【レイジ・アゲンスト・トーフ】

対象:3~4人のニュービーソウカイニンジャ向け
難易度:NORMAL
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)
備考:ニンジャスレイヤーとの交戦あり
参照エピソード:
【レイジ・アゲンスト・トーフ】

シナリオより抜粋
VIPルームマップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:原作の【レイジ・アゲンスト・トーフ】に自然な形で入り込めるシナリオで、ニュービーレベルでも十分に楽しめる内容となっている。マキモノが重要アイテムとなり、それを運搬できるかどうかが評価に関わるというのは、色々な自作シナリオでも応用できそうな良いアイディアだね。バンディットの爆発四散現場における探索から、ビホルダーとの談合、そしてトーフ工場での戦闘まで、テンポ良く進行できるように各シーンをピックアップして、繋ぎ合わせてくれていると思う。各シーンで活躍できる方向性が違うから、人数多めのニュービーで判定失敗しながら賑やかにプレイしても楽しそうだ。中でも僕が特に好きなのは、VIPルームのマップだね。必要最低限のパーツだけで、ワビサビに満ちた空間をミニマルに再現できていると思う。




【ラグナロク・オブ・ピザ・タキ】

*AoM(ニンジャスレイヤー第4部)時系列をテーマにしたシナリオ

対象:
ピザタキに集まった3~4人のニンジャ
(掲載NPCデータはニュービー級を想定しているが、参加キャラクターの
 レベルに応じて、NMで調整してほしい)
難易度:EASY(キャラロストなし)
キャラロスト:なし
余暇:標準(4スロット)
備考:コメディチックのシナリオ。ピザがたべたくなる
PC共同ハンドアウト:
あなたたちはピザ・タキの常連である
参照エピソード:【ラグナロク・オブ・ピザ・タキ】

シナリオより抜粋
ランダムピザ生成表の一部、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:AoM時系列を使用した野心的なシナリオだ。何と、このシナリオでは戦闘は発生しない。だってこれはあくまでピザ勝負だから、ピザ・スキのスタッフをサツバツで妨害したりピザに変えたらいけないよね。ただ、それだと各能力の活躍どころが無くて寂しいのでは……? と思っていたところに、なんとピザ作りや顧客対応が戦闘ルールになっているんだ。これはすごく面白いアイディアで、驚いたよ! ピザ・タキやピザ・スキだけでなく、他にも原作キャラクターが登場し、このシナリオのアトモスフィアに相応しい賑やかな内容となっている。こんなフレンドリーなシナリオが成立しうることに僕は驚いたし、良い刺激となった。ところで、これを読んでいて気になったんだけど、AoMの公式セッティングに関するニーズはどれくらいあるんだろう? もしある程度存在するのなら、簡単な公式セッティングをそのうち作ったほうがいいのかな、と思ったよ。楽しいシナリオを、ありがとう!



【シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー】

ザイバツに与する傭兵ニンジャにして、ハッカーカルト「ゴールデンドーン」の教祖、エンキドゥのアジトが割れた。直ちにカチコミをかけ、エンキドゥを抹殺せよ。

対象:
成長の壁を1~2個超えたソウカイ・ニンジャ、もしくはソウカイヤから依頼を受け得る立場にあるニンジャ3〜4人
難易度:ノーマル~ハード程度
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)

その他:
【DKK】獲得可。カルマロンダリング機会あり。ニンジャスレイヤー出現可能性あり。

参照エピソード:
【シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー】

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:ザイバツとの本格的な抗争シナリオの開始点としてもちょうど良い規模の、使いやすいカチコミ系シナリオだ。護衛を伴う純粋ハッカー系のニンジャは実は原作では結構珍しく、それもかなり高位のニンジャだったりするので、ゴールデンドーンのような立ち位置のニンジャは、まさにシナリオにうってつけだと気付かされたね。さまざまなハッキング能力でPCたちを翻弄してくるゴールデンドーンは、このレベル帯のPCたちにとっても程よい障害になるはずだし、「プラグイン:ハッカーニンジャ」のルール導入にも向いているはずだ。シナリオの最後は、ストリートニンジャ、アマクダリニンジャ、ザイバツニンジャなどにPCたちの立場を変更する場合のアイディアもまとめられていて、とにかくプレイしやすい作りとなっている。エンキドゥ以外の敵ニンジャを入れ替えることで、難易度の調整もしやすそうだね! エンキドゥやソニックブームの会話パターンも多く、楽しく読むことができたよ。そして繰り返しになるけど、とにかくこのシナリオはマスター視点で使いやすそうだし、読んですぐにプレイできそうなところが特に良かったね。



【ビガー・ケージズ、ロンガー・チェインズ】

あらすじ:反オムラ会合はヤナマンチ社の裏切りにより瓦解した!押し寄せるオムラ戦力を前に、オナタカミの企業戦士たちは強行突破を強いられる。増援の到着も見込めぬ中、彼らは重役たちを護衛しての決死の脱出劇に挑む。

これは「ニンジャスレイヤーTRPG第2版」のシステムに対応した、ワンナイト・シナリオ記事です。通常のプレイでは数を埋め込むことに苦労するサイバネに焦点を当て、全身をクロームで強化した企業ニンジャとして派手なイクサに身を投じることができる戦闘重点の内容となっています。

プレイ人数:3名
所要時間:6時間(オンライン/テキストセッション)
舞台:AoS、ネオサイタマ
難易度:マスター級、爆発四散可能性あり
    ▶
28ptの特殊スクラッチビルドによる新規作成キャラクター向け
参考エピソード:【ビガー・ケージズ、ロンガー・チェインズ】

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:紹介文の期待を裏切らない派手なシナリオ展開で、ヒロイックなレベルに相応しい市街マップもワクワクする。ネブカドネザルの登場演出も迫力があり、そのデータも圧巻だ。このように「プレイヤーのどのあたりの欲望に忠実に応えてくれるのか」が明確なシナリオは、僕としても非常に参考になるよ。中でも気に入ったのは「クリティカル・メーター」のオプションルールだ。2版のコアルールはダメージ軽減がかなり無慈悲なんだけど、専用のスキルやアイテムを用意していない限り、『サツバツ!』の運頼みになってしまうという側面がある。このようなオプションルールを使えば「せっかくいい目が出たのに相手に全くダメージが通らなかった(回避ダイスも削れなかった)」というフラストレーションを、スマートに改善できる気がするな。これまでも『弾幕発生』『一騎討ち』『乱戦』『不如帰』などのように、実際のプレイングやハウスルールから着想を得て作られた公式ルールも少なくはない。だからもしかすると、普段から使えるクリティカル・メーターのようなオプションルールが、将来的に搭載できるかもしれないね。そうしたシステム面の工夫も感じ取れる創造的なシナリオだったよ。



【サンセット・アンド・ヘヴィレイン】

輸送車両を襲撃し、積荷ごと埠頭に運搬せよ。殺しあり。

対象:モータルのアウトロー数名、あるいはニュービーニンジャ。
 誰か一人に生体LAN端子があるか、ハッキング系スキル持ちであること。
難易度:ノーマルからハード
キャラロスト:あり(モータルの場合はニンジャになる)
余暇:標準(4スロット)
所要時間:1-2時間(状況による)
その他:Wasshoi判定あり(なくても良い)
参照エピソード:サンセット・アンド・ヘヴィレイン

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:珍しいモータルPC向けの戦闘シナリオだ。楽しさの根幹となる部分をミニマルにまとめた仕上がりで、ゲームに慣れていればここから肉付けしやすく、気軽にプレイしやすい内容となっている。手慣れている多くのマスターは(僕も含めて)シナリオをその場で即興的にアレンジして回すだろうから、こうした軽量のシナリオもとてもありがたいものだ。モータルからニンジャソウル憑依者になるための導入シナリオとしても使えそうだね。シナリオデザインについてのアドバイスがひとつあるとしたら、成功報酬にストーリー的な報酬を含めるともっと魅力的なシナリオになるかな、と思ったよ。例えばこのシナリオでは事前調査に成功した場合、緊急回避ダイスを得られるけれども、具体的な情報は得られない。ここをほんの少しでもいいので何か設定してあげると、それを基点としてキャラを立てるきっかけにもなるし、よりドラマとして豊かな体験になるはずだよ。デザイン時に良いアイディアが思いつかない時のコツは、ダンゴウで普通に与えている基礎情報の一部を、こちらに繰上げてやることだ。例えば「アウトローの傭兵たちは、依頼主にとっては使い捨てのショーギの駒だ〜」の段落をそのまま繰り上げたりね。公式のシナリオだって、大体そんな感じに「慣れている読者からすれば当たり前すぎること」を高難易度の調査報酬に組み込んだりしているんだ。




【ゼロ・トレラント・サンスイ】

ソロシナリオでニンジャスレイヤーを追跡し、戦い、殺されるミニットマンの気分を味わうためのシナリオとなります。戦闘での爽快感より、1エピソード限りのニンジャの無常さをロールプレイして楽しむことを目的としたシナリオです。そのため、PCは死ぬことを前提にして作成して下さい。

対象:ニュービー(初期作成)、またはアデプト(16ポイントスクラッチビルドルール)、もしくはマスター(28ポイントスクラッチビルドルール)で作成したニンジャ一人
難易度:
キャラロスト:前提
余暇・報酬:基本的には無し
参照エピソード:【ゼロ・トレラント・サンスイ】

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:概要に書かれた「難易度:死」で僕は大きな衝撃を受けた。つまりこれは、PCがニンジャスレイヤーと戦い、死んで爆発四散することを前提としたシナリオなんだ。確かにそう考えると、このシナリオはプレイヤーの欲望に忠実に、かつソリッドに作られているのがわかる。邪悪ニンジャになってニンジャスレイヤーに無謀な戦いを挑み、そして印象的な最期を迎えたいという欲求は、誰の心にもあるものなんだ。そしてほぼ爆発四散するわけだけれど、それまでに判定や意思決定の機会が複数存在し、その結果に応じた即興のロールプレイの機会ができたり、キャラの背景や性格についての考えを深めるきっかけを提供してくれる(判定結果の解説内容もプレイヤーへの示唆に富んでいる)。過程がちゃんと存在するんだ。そして、もうすぐ爆発四散してオタッシャするんだから、とても思考速度が早まる。そんな機会には実生活ではなかなか遭遇できないし、誰しも自分自身について内省を深めることだろう。それにもちろん、出目と運次第ではニンジャスレイヤーを倒してしまう可能性も(極めて小さいが)残っているし、その場合のフォローについても書かれている。どちらにせよランダムと即興の組み合わせでさまざまなロールプレイ機会を提供してくれるし、その速度やテンポはまるで第1部のようにスピーディだ。こうした限定シチュエーションを再現するための短いシナリオも今後需要が出てくると思うので、ぜひ多くの人にチャレンジしてほしいなと思ったよ!



【クライ・ハヴォック・ベンド・ジ・エンド】

オムラ・インダストリがザイバツ・シャドーギルドと取引し、超弩級ハンマーシリンダー「ベヒーモス」のリース契約を取り交わしたとの情報がもたらされた。ベヒーモスのユニット組み立て試験場を探し出し、破壊してザイバツの計画を止めろ。

対象:成長の壁を1個程度超えた、ナンシー・リーから依頼を受けられる、【カルマ:善】のストリートニンジャ3~4人
難易度:ノーマル程度
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)

参照エピソード:【クライ・ハヴォック・ベンド・ジ・エンド】

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:なんて無慈悲なマップなんだ……。スローガン、無人スシバー、カンオケホテルと、そのどれもが、PCたちにこの暴虐への怒りを喚起させるに相応しい存在だ。オムラとベヒーモスがいかに人間の尊厳を無視して稼働する邪悪な存在かを端的に表しているし、ミニマルな表現だからこそプレイヤーの頭の中に想像力で思い描かれるディストピアがそこにある。このシナリオのように「原作でキャラクターたちが晴らせなかった無念」をPCたちが代わりに晴らす(ことができるかもしれない)というのは、とても良いアイディアのひとつだ。プレイヤーのモチベーションも高めやすいし、成功時の物語的報酬や満足度も、数字で書かれている万札スペック以上に大きくなるものだからね。ナンシー=サンの使い方や、他のキャラクターの配置アレンジも上手い。ナンシー=サンはとにかくゲームの進行に便利だ。ストリートニンジャのゲームであれば、困ったらとにかくナンシー=サンを使っていって欲しいね。このシナリオはナンシー=サンとの初ビジネスになる場合も含めて、お手本のような使い方だと思う。



【マーメイド・フロム・ブラックウォーター】

君たちはトコロザワ・ピラーに集められた。曰く、機密情報を記録してしまったオイランドロイドが行方不明になっているという……

対象:
アデプトレベルのソウカイニンジャPC2〜4人。
難易度:ノーマル~ややハード/Wasshoi!判定あり
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)

参照エピソード:【マーメイド・フロム・ブラックウォーター】

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:原作では2部時系列だったエピソードを、ソウカイヤ健在のAoS時系列にうまく落とし込み、「機密情報とは何か」という、この先のシナリオに繋がるような広がりも生み出してくれているね。カルマ善のストリートニンジャでプレイするためのオプションも記載されているし、ジャンクヤードやガレージ内の詳細マップなど、PCを活躍させるための楽しいデータもたくさん付属している。アレンジもやりやすそうな、使い勝手の良いシナリオだ。デスナイトも「程よい強敵」といった感じで、良いバランスだと思うよ。特に『ヒサツ・ワザ:ダブル・ポン・パンチ』が奥ゆかしい性能で好きだね。シナリオ末尾にカキオとエトコのユウジョウ判定データがそれぞれ付属しているのも、原作エピソードからのさらなる世界の広がりを感じ取れて、嬉しい存在だ。実際のところ、このシナリオをさまざまなキャンペイグンの起点とすることもできるだろう!


【キルゾーン・スモトリ】

対象:3~4人のニュービーソウカイニンジャ向け
難易度:NORMAL
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)
備考:DKK獲得可能性高(回避可能)
参照エピソード:キルゾーン・スモトリ

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:【キルゾーン・スモトリ】でのビズを、PCたちがアイアンヴァイス=サンの代わりに務めるという筋書きだね。バイオスモトリはもちろん、ケンドー型装甲服を着たナガム=サンやサトウ=サン、そして恐るべきマザースモトリ(コワイ!)までもがデータ化されていて、にぎやかかつ使い勝手の良いシナリオといえるだろう。デザイン面でひとつ気になったのは、【DKK】獲得の回避条件がちょっと回りくどい上に、直接手を下してはいないけれど結局邪悪な行為を行っているのでは? という印象をプレイヤーが抱くかもしれないということだ。予備調査もいらないシンプルで短いシナリオなので、時間的な余裕も生まれるだろうから、彼らを特に【カルマ:善】にはせず、最後にニンジャスレイヤーが確定登場することにしてもシンプルかもしれないよ(この場合【DKK】は過剰残虐行為をした時のみボーナス獲得できるようにすればいいはずだ)。それから、評価を含めたマザースモトリのルールはとても面白いと思ったので、いつかデータ化する時には参考にさせてもらうかもしれない!




【ドライヴ・フォー・ショウ】

対象:ニュービー~アデプトレベルのニンジャPC2~4人
難易度:ノーマル
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)
参照エピソード:デッドリー・ヴィジョンズ:【ドライヴ・フォー・ショウ】
その他:推理パート比重高め

シナリオより抜粋
ゴルフ場マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:全応募作の中で、最もシティアドベンチャーというか推理モノのアトモスフィアが漂う野心的なシナリオで、かなりのボリュームがある。ビルの屋上にゴルフ場がある意味深なヘッダー画像、そして参照エピソードとして明記されている【ドライヴ・フォー・ショウ】……もし君が熟練のニンジャ探偵プレイヤーならば、これだけで即座に犯人とその殺人手法を割り出すことができるだろう。しかしながらTRPGにおいて、プレイヤーとキャラクターは別物だ。いくら君が答えを知っていても、君のPCがそれに気づくかどうかはまた別の問題なのだ。君のPCは明らかにゴルフボールで頭を破壊された遺体を前に真顔で調査を行い、何の手がかりも得られずに首を横に振るかもしれない。シリアスな探偵モノの導入に対して、このような判定成功や失敗のリアクション例がシナリオ内に明記されているために、とてもスラップスティックなギャップが生まれ、楽しい調査パートとなっている。こうした探偵モノはマスターの情報把握の負担も多くなりがちだが、証拠品などの処理もわかりやすくまとめられており、ビールを飲みながらでも問題なくプレイできるだろう。僕のようなマスターに優しい作りとなっている。クライマックスの戦闘も原作エピソードに納得のいく一捻りを加えてあり、読んでいるだけでもとても楽しむことができた。初動の推理から最後の脱出シーケンスに至るまで、PCたちが活躍できる見せ場がたくさんあり、そのための小道具がいくつも散りばめられている感じだ。力作だね!



【ビガー・ケージズ、ロンガー・チェインズ】

アマクダリ関連、もしくはフリーランスニンジャとして反オムラ会合に参加した企業の役員を護りながら屋上に向かい、脱出を目指します。
オナタカミが既にオムラから離反して、アマクダリ傘下(スターゲイザーが実質TOP)の場合は、会合にオナタカミは参加せず、オムラの弱体化政策として会合参加企業の支援を目的+イッキウチコワシとのパイプ作りとして介入したとしてください。


対象:アデプト(16ポイントスクラッチビルドルール)で作成したニンジャ3~4人、もしくはマスター(28ポイントスクラッチビルドルール)で作成したニンジャ2~3人
難易度:ノーマル~ハード
キャラロスト:あり、ただしNMが自由に決めてよい
余暇・報酬:標準(4スロット)、一人当たり30万程度
参照エピソード:ビガー・ケージズ、ロンガー・チェインズ

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:まだ公式ではあまりカバーされておらず、敵役NPC勢力として使われることが多いアマクダリ・セクト所属PC用のシナリオだ。こうした未開拓の分野にチャレンジしてくれるのは、それだけでもすごく嬉しいな。もちろんフリーランスニンジャとしてもプレイできるので、幅広い楽しみ方ができるだろう。マップも興味深く、特に「コケシ17F」の巨大で無機質なインダストリアルな雰囲気は、このシナリオの持つ無慈悲なアトモスフィアにうってつけだろう。登場するニンジャたちも豪華だ(インフェルノ=サンが忘れられていなかったのが嬉しかったね)。そしてもちろん、誰もが期待しているネブカドネザルとの戦闘も発生しうる。僕はこれまでいくつかのファンメイドシナリオでネブカドネザルの自作NPCデータを見てきたけど、どれも独創的で素晴らしいものだ。そして各シナリオの解像度やレベル帯に合わせて、実にさまざまなネブカドネザルが存在する。このシナリオのネブカドネザルは、良い意味でPCたちを怖がらせるのにうってつけで、火力の加減もできるし、データもそこそこコンパクトに収まっていて奥ゆかしい。あくまでもこのシナリオの要素の一つなので、PCたちの活躍に合わせて色々な動かし方ができるだろう。オプション要素も豪華で、特にメンタリストのデータがいいね。ちょうど今コミカライズに出ているので、僕もメンタリストをデザインしているんだけど、似たようなギミックを持つことになりそうだ。



【ニチョーム・ウォー……ビギニング】

 ネオサイタマで勢力を拡大しつつあるアマクダリ・セクトが、ネオカブキチョに群雄割拠するヤクザクランの一つ、「デッドフェニックス・ヤクザクラン」と繋がりを強めているとの情報が入った。
 両組織の関係を破綻させてアマクダリとネオサイタマ裏社会を分断するための大規模工作活動に加わり、作戦に貢献を果たせ。

対象:
作成されて間もないソウカイ・ニンジャ、もしくはソウカイヤから依頼を受け得る立場にあるニンジャ3〜4人
難易度:ノーマル程度
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)

その他:工作活動パートの比重が多め。工作用ミッションを、提示された一覧から選んで判定に挑戦する形式を想定しているため、ミッション一覧表が必要。

参照エピソード:
【ニチョーム・ウォー……ビギニング】

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:ゲイトキーパーから命令を受けて工作活動を行うシナリオだ。3部時系列の原作エピソード【ニチョーム・ウォー……ビギニング】をソウカイヤ健在のAoS時系列と組み合わせて、広がりも出ている。こういった高度な諜報活動的ミッションはアマクダリの専門分野と思われがちだが、ゲイトキーパーを指示役NPCに据えればすんなりとヤクザミッションとして馴染むのも僕にとって良い発見だった。収録されている「工作活動ミッション一覧表」は「扇動」「交渉」「隠密」と3種類に分かれ、それぞれが10種類も収録されており、かなりのボリュームだ! この一覧表を読むだけでもシナリオのアイディアがすぐに思いつくし、サイバーパンク的なシティアドベンチャーのアトモスフィアとニンジャスレイヤーの世界観をうまくミックスした力作といえるね。皆も是非読んでみてほしい。そして最後は、ヤクザアトモスフィア溢れるデッドフェニックス・ヤクザクランの賭場付き邸宅マップが舞台となる。縁側と庭園があるマップはシンプルながらワビサビに溢れており、時代劇めいたダイナミックな戦闘が期待できる。低レベル帯のPCチームでも挑戦できるし、ニンジャの構成を変えれば簡単に高レベル対応もできるから、使い勝手のいいシナリオといえるだろう!



【フー・キルド・ニンジャスレイヤー?】

マップ、シナリオより抜粋

ニンジャスレイヤーの消息が途絶えて数日、巷では再び赤黒の装束を纏い、ニンジャを殺して回る謎めいたニンジャの目撃情報が流れている。君達にはこのニンジャについての調査をして貰いたい。

対象:ニチョーム自治会/ナンシー・リーからの依頼を受けられる、成長の壁(1)を2つまで越えたストリート、または傭兵ニンジャ。
新規作成の場合は28スクラッチ。
 PC3~4人程度でのプレイを想定。
難易度:★★(ノーマル、難易度調整措置有り)
キャラロスト:有り
余暇:標準(4スロット)

参照エピソード:フー・キルド・ニンジャスレイヤー?

モーゼズ=サンからのコメント:ナンシー・リーから依頼を受けて、謎の赤黒のニンジャを調査するシナリオだ。原作エピソードを読んだことがない人でもスムーズに状況を理解して楽しめるよう、丁寧に情報が配置されている。普段は読者の視点で安全圏から眺めている状況でも、このように調査を行う当事者になると緊張感が出るものだし、じわじわと核心に迫っていく感覚を追体験できるのはTRPGならではの楽しみだね。イベント戦闘的な2段構えのボス戦も面白いアイディアだ。演出的にももちろんだし、1回目の戦闘でPCたちの強さをある程度測れるから、2回目の最終戦でのボス能力値を調整しやすくなるはずだ。これは実にクレバーなアイディアだと思う。しかも、調整で強くしすぎた場合や、単純にPC側の出目などが振るわなかった場合も、ニンジャスレイヤーの乱入という演出上の切り札が控えているから、流れとしても自然かつ戦闘出目事故を防ぎやすいかなりテクニカルな構成になっている。そこそこ長めのシナリオを組もうと考えている人は、この2段構え演出がかなり参考になると思ったよ。また、僕が特に気に入ったのは、地下駐車場の戦闘マップだ。地下駐車場独特のアトモスフィアと、戦闘の盛り上げに使えるオブジェクトを実にうまく配置していて、ワクワクするね! プレイごとに色々なドラマが生まれそうなシナリオだと思う。



【ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ】

アマクダリ・セクトの重鎮ソルスティスは、己の立場にふさわしからぬ趣味、ヨタモノ狩りに今日も耽ろうとしていた。しかしその日、ソルスティスが無力なモータルめかした振る舞いで釣り出したのは単なるヨタモノではなく、猟奇殺人鬼ニンジャであるプロセッサーであった!
ソルスティスに襲いかかったプロセッサーは思わぬ反撃を食らいながらも、それをしのいで逃走に成功する。プライドを傷つけられたソルスティスはプロセッサーを獲物と定め、狩りを続行する。立場が逆転したことを悟ったプロセッサーは、ニンジャ同士の戦闘が禁じられた聖域アジール、ニチョームに逃げ込むのだった。
PCたちは様々な立場から、この禁じられた暗闘に介入することとなる。

対象:アデプトレベルのニンジャ2〜6人程度
難易度:ノーマル~ハード程度
キャラロスト:あり
余暇:標準(4スロット)
参照エピソード:【ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ】【ゼア・イズ・ア・ライト】【トゥー・レイト・フォー・インガオホー】

◆キャラメイク
このシナリオは、PCたちの所属によって、それぞれ導入と目的が異なってきます。PCたちの所属を統一させればスタンダードなシナリオとして遊びやすくなりますし、統一させずにPvPスタイルのシナリオとして遊ぶことも可能です。選択できる所属は「ソウカイヤ」「ザイバツ」「アマクダリ」「ニチョーム自治会」「サイバーツジギリネットワーク」の5つです。参加PCが複数の所属に分かれる場合、所属が同じPCたちを「チーム」と呼称します(例:「このイベントはチーム全員に効果を及ぼす」など)。

PCたちの所属をどうするかは、PC自身が自由に決めても構いませんし、NMが予め指定してもよいでしょう(「今日のセッションはPC全員ソウカイヤ所属で行う」と告げるなど)。PCたちの所属が決まったら、ルールブックの「16ポイントスクラッチビルド」ルールでPCのデータを作成させてください。

シナリオより抜粋
マップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:まずその参照エピソードの組み合わせに僕は度肝を抜かれた。このニチョーム・エピソードにソルスティスが一体どのように絡んでいくのか? それだけでも物凄く想像力を刺激されるよね。AoSのニチョームと組み合わせ、PCたちとの交流を持たせることで、ソルスティスというキャラクターにも広がりが出るし、もしこのシナリオのプレイレポートがあればぜひその風景を見てみたいと思うようなアイディアだった。シンプルなAoSセッティングのニチョーム系ストリートニンジャシナリオとしても良いものだし、ここからまた別の事件につなげられるような余地がたくさんある。あるいはオプションとして用意されている「多数の組織による争奪戦」としてミニゲームのように楽しむこともできる。どのチームの導入も工夫されていて面白いと思ったよ。複数の戦闘マップももちろんだけど、このシナリオで僕が特に興味深いと思ったのは、「追跡チャート」のシステムだ。手がかりを求めて調査を進めている間はマップを使わず、達成値を貯めていくことで、様々なイベントが双六めいてランダムに発生する。君はヤクの売人やバイオスモトリ、あるいはケモ動物などに遭遇して様々な判定や判断を強いられ、それらは追跡のドタバタを賑やかに盛り上げてくれるだろう。そして達成値がゴール基準に達すると、ついに追跡していた相手にたどり着ける……というわけだ。どのランダムイベントも面白く、工夫が凝らされていて、とても良かったね!


【ケイジ・オブ・モータリティ】

ネオサイタマで増加の一途をたどる、謎めいた殺人事件。ソウカイヤ、そしてアマクダリはその犯人である"蝿のニンジャ"がボンボリ・ディストリクトに潜むことを突き止めた。ニ大組織の追求は、果たしてタイガー・クエスト・ダンジョンとなるのか。

プレイ人数:2名
所要時間:8時間(オンライン/テキストセッション)
舞台:AoS、ネオサイタマ
難易度:グランドマスター級、爆発四散可能性あり
    ▶32pt
の特殊スクラッチビルドによる新規作成キャラクター向け
参考エピソード:【ケイジ・オブ・モータリティ】


このシナリオはプレイヤー1人につき2人のPCを操作する、特殊な、そしてミニマルな群像劇タイプの構成となっている。ソウカイ・シックスゲイツのニンジャアマクダリ・アクシスのニンジャ、プレイヤーは、この2人のPCを交互に操作する形で、一連のストーリーを体験することになる。

別のアイデアとして、プレイヤー人数を2倍に増やしてソウカイヤ側・アマクダリ側にそれぞれ2人ずつ振り分けることもできる。この場合、各シーンではPCを操作していないプレイヤーがNPCを操作する=マスターレスなシナリオとして遊ぶこともできるだろう。

シナリオより抜粋
ポンポン・ビルディング59階のマップ、シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:原作の時系列で言うと10年以上後の出来事となる【ケイジ・オブ・モータリティ】をAoS時系列に組み込んだ野心的なシナリオだ。こうした時系列の強引な溶接は僕は大好きなので、どんどんやってほしいと思っていたから、AoSの強力なニンジャたちがデータ化されてシナリオになっているというだけでもまず大いに嬉しいね。キャラ作成方法も32ポイントの特殊スクラッチで、マスターレスシナリオとしても楽しめる、かなりチャレンジングな作りだ。この規定通りに2x2のニンジャを操って進めてもいいけど、かなりプレイングの経験を求められると思ったので、通常の形式でプレイしても問題なく楽しめそうな要素がたくさん散りばめられていたから、せっかくだしオプションとして標準形式でのプレイ方法とアドバイスも書いてあるともっと良かったかもしれない! 中身を見ていくと、各戦闘マップごとの原作アトモスフィア再現演出が特に面白いね。59階ではパニックホラーじみた要素がうまくTRPGのシステムとして再現されているし、ニンジャPCたちでも十分にベルゼブブの恐ろしさを味わうことができるだろう。ニューロンを刺激する屋上マップの奥ゆかしいカラーリングにも感動した。ベルゼブブの能力値もリッチで、これまでに発表されているプラグインパーツをうまく使ってくれている。そして二勢力合同だからこその派手な増援演出もこの最終戦の見どころだね。一本の映画のような、かなり満足度の高いリッチなシナリオだといえるだろう。


【グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド】

「スナリマヤ女学院」に向かい、有力ヤクザクランオヤブンの娘が行方不明になっている事件を調査せよ。ほかにも複数名の女生徒がいなくなっている。生徒、教師、馬丁となって潜入する。
なお、教職員や生徒にニンジャであることがバレてはならない。


対象:
ニュービーレベルのソウカイニンジャPC3〜4人(読み替えでフリーランスシナリオにも転換可能)
難易度:ノーマル~ハード程度
キャラロスト:なし
余暇:標準(4スロット)
その他:知識・交渉判定複数。ニンジャ戦闘あり

参照エピソード:
【グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド】

シナリオより抜粋

モーゼズ=サンからのコメント:ヤクザの依頼によってPCたちは怪しい女学院に潜入することとなる。そして様々な聞き込みなどを行い、この学園内で起こっている事件を解決するのだ。なお潜入調査の方法については、転校女子高生に偽装するか職員に偽装するかをPCごとに選べるようなので、僕は少しほっとした。学園内の推理モノとしてコンパクトかつ効果的に調査パートが組んであり、女学院という特殊な環境も相まって、普段とは全く違うロールプレイの機会を楽しめるだろう。潜入調査をしているわけだから、ニンジャの力を気安く使えないからね。こうした簡単なロールプレイ上の縛りだけでも、キャラの動かし方に幅が出て、ゲームの新しい魅力を発見できるものだ。事件の全容についても、ニュービーレベルのPCたちで十分対処できる規模、かつ十分にスリリングな内容となっていると思う。これは「ニンジャの力を隠している」という設定だからこそともいえるので、うまいセッティングだと思う。そして、原作を読んだことがある人ならばご存知の通り、この女学院にはアズール(キカ・ヤナエ)もいる。詳しくはシナリオを読んでほしいのだが、マスターがオプションとしてアズールを動かし、また彼女をPCたちからのスカウト対象にもできる点が実によかった。自らのニンジャ性に悩みを持つアズールが、PCたちにスカウトされてソウカイヤに入ることになったら、どのような事が起こるだろう? どのようにして彼女は徐々に身の上を明かし、ユウジョウとともに打ち解けてゆくだろう(もしくは別れに繋がるだろう)? そしてそれはプレイグループごとに変わるだろう。それらを考えるだけでも、とても大きな世界観の広がりを感じられて、嬉しかったよ(だからぜひユウジョウ表も追加しておいてね)。





💪受賞作品発表💪

モーゼズ=サンからのコメント:今年の審査は前回よりもさらに難しいものだった! そして僕にはとても1作品を選ぶことはできない。また最近では黄金ヌンチャクの原料高騰や資源枯渇も社会的問題となっている。そこで僕は今回、シテンノ賞を創設し、以下の4本に賞を贈ることとしたい(もちろんイベントの名前は残しつつね)。今回はシナリオとしての遊びやすさ、読みやすさ、完成度、ニュービーの人への優しみ等だけでなく、システム全体への拡張可能性の示唆……つまり僕が個人的にインスピレーションを強く刺激されたかどうかも大きな選出ポイントとさせてもらった。そしてもちろん、受賞しなかったものも含めて、全てのシナリオが読んでいて楽しかった。こんなにたくさんのシナリオが日々生み出されてプレイされていることは、本当に原作者冥利、デザイナー冥利に尽きるといえる。その素直な気持ちをコメンタリーに込めたつもりだよ。いつも遊んでくれてありがとう!


◆シテンノ賞:受賞作品◆
【フー・キルド・ニンジャスレイヤー?】 まいせるふ=サン
【オイル・ステンド・カーネイジ】 ネヤ=サン
【レイド・オン・ザ・ゴールデンドーン】 B.D.モー/バタリングラム=サン
【潜入・スナリマヤ女学院】 ウナ=サン


以上の4名の方には、後日ダイハードテイルズ・ゲームズより記念品を贈呈させていただこうと思います。受賞おめでとうございます!



🎲未来へ🎲==

以上で今回の結果発表を終わります。たくさんの応募&投票ありがとうございました! また全作品をチェックしてくれたモーゼズ=サンも、お疲れ様でした! 皆さんもぜひ、シナリオやリプレイ記事などが完成したら、noteやTwitter上でシェアしてみてください。

物理書籍からプレイを開始し、スターター・キャンペイグンをクリアした人は、その次のシナリオを探している頃かもしれません。ここで紹介されたシナリオ以外にも、noteのニンジャスレイヤーTRPGタグには、たくさんのファンメイドシナリオやファンメイドプラグインが公開されていますので、ぜひ探索してみてください。そして、どれがマスタリング難易度が易しいかなど、何か迷う事があれば、ぜひDiscordのコミュニティにアクセスして、経験豊富なプレイヤーの皆さんに質問してみてください。

初版の発表から現在まで、このシステムは実に大勢の熱心なプレイヤーの手で支え続けられてきました。あらためて、多くの方の熱意に感謝を申し上げます!


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